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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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77.時間 対 スピード

 ハロミトの金色に光る剣。ジェノムの金ピカの手持ちようの塔。それぞれが敵へと向けられる。


「お嬢様に変わって、あんたは俺が倒すっす。」


「勝つのは私ですよ。」


 試合のゴングが鳴った。



◆◆


 第二試合。


 〇ハロミト

 ……秘宝――勇者の剣【あべこべ】

 〇ジェノム

 ……秘宝――毘沙門の塔【召喚】



◆◆



【発火――!】


 燃え盛る剣。その剣を持ちながら真っ直ぐ進む。


 地面から斜めに勢いよく飛び出してくるとても細長い塔。まるで棘みたいだ。


『秘宝――毘沙門の塔の能力"召喚"にて、地面も壁も自由自在に塔を出せる! その塔がハロミトを襲っていくぅ! どうする!? ハロミトぉ!』


 横に半歩移動して避ける。

 さらに襲いくる塔を避ける。


 今度は直撃する!


 

 ザンッ――。



 走りながら振られる一筋。塔は一瞬にして瓦解(がかい)する。


『ハロミト。後もう少しまで近づいたぁ! って、そこで剣を振っても意味はないぞぉ!』


 ジェノムまで剣先は届かない距離。剣先が二倍あれば届くのだが――。


 "能力解除"


『剣先が伸びた、伸びたぞ! 何が起きたんだぁ!』


 元々剣自体、長すぎて邪魔なので、ハロミトは"半分"の能力で、剣の長さを半分にしていた。それを元の長さに戻しただけ。


 炎の剣が横に振られ、その先にジェノムがいる。


【時間――!】


『何が起きたっ!? 当たったはずの攻撃だと思いきや、当たってすらなかったぁ!』



 なるほどね。私も同じ能力を使えるから見れば分かる。彼は"時間"を発動して、五秒、ハロミトの動きを遅らせたんだ。

 五秒もあれば避けるのは簡単。敵が使えば相当厄介だなぁ……。


 隙のできたハロミトに対して、地面から斜めに現れて突撃する細い塔。左肩を穿(うが)ち、そのまま後ろへと吹き飛ばす。


「残念ですが、これで終わりにしましょう。」


 まるで巨大棘の召喚。

 現れる細長い塔がハロミト目掛けて伸びていく。


 それを持ち前の身体能力で避けていく。


「避けられてちゃ、ざまないっすね。」


戯言(たわごと)を今のうちですよ。」


 沢山の塔を避けていくうちに、壁側へと押し込まれている。


 壁から現れる塔。


 ぶつかる――!



『これは直撃かぁ!?』



【発射!】足から放たれる衝撃波。瞬間的な超ダッシュで塔を避けた。



 襲う塔。それを避けながら壁を伝いながら走っていくハロミト。超スピードだからこそ、できる(すべ)


『壁を走るハロミト。ジェノムはどうする!?』



【発射――!】



 壁を蹴り飛ばして、斬りにいく。


【時間!】


 またもや時間を遅れさせられ、攻撃は空振り。

 さらに、ジェノムはハロミトの下に潜り込んでいる。


【磁力!】


 ハロミトは空高く打ち上げられてしまった。



『空中に飛んでしまった。身動きが取れない! 今が攻撃のチャーンス!』



 巨大な塔が地面から召喚された。それが空中のハロミトを貫こうと上へ上へと進んでいく。


 ズズズズ――。


 塔は二階、三階と地面から現れていく。

 屋上、屋根の上でジェノムが上空の敵を捉えている。


「これで終わりですね。」


「いや、まだまだ終わらせないっすよ!」



 落ちながら、剣を構える。


 落下しながら剣を振るう。

 塔はハロミト目掛けて高くなっていく。尖った先端がギラリと光る。


 そこにあるのは五重塔。それとハロミトが直撃する。

 


【破壊!】



 塔の鋭い先端に剣が当たる。

 亀裂が入り、五重塔は破壊され消えていく。



『おーっと、ハロミト! 塔を破壊したぁ! なぜだ。そんな力を隠していたのかぁ!?』


 そうか……。ハロミトの"破壊"は壊せるものを壊す能力。普通は壊せない。けど、秘宝の"あべこべ"の効果で、威力が逆さまになった状態なら、壊せないが壊せるに変わる。


 思わず私は、すごいじゃん、って呟いた。


 壊された塔の上にいたジェノムは地面に落下した。それなりのダメージだが、倒しきれてはいないみたいだ。

 ハロミトもまだ地面に立っている。


「一気に決めるっすよ。」


 突然、ハロミトは壁に向かって走り出した。



 なぜ――?



【発射!】



 壁を思いっきり蹴り飛ばして、斜めに飛んでいく。さらに、真っ直ぐ飛んだ位置にある壁に向かって【発射!】をして、軌道を変えて勢いよく進む。


 剣の燃える炎が軌道上に現れる。


 五つの壁の足場。そこに向かって【発射】を塗り重ねて使っていく。


 空から見れば、赤い星の形が象られている。



『何をするつもりなんだぁ!』



 ついに、ハロミトは星型のダッシュを終えて、真っ直ぐジェノムを狙う。もはや目では追えない程に速い。



 速さは――力へ!



『そうだっ! 能力で壁を蹴りまくったことで、めちゃくちゃ速くなったハロミト! 速さは力に変わる! 最大威力の攻撃がジェノムを襲うっ!』



【時間!】



「終わりっす。」


「いいえ、まだ終わりにはしませんよ。」



 伸ばした手のひらがハロミトの顔へ。

 剣がもう少しでジェノムに当たりそう……というのに。



【磁力!】



 強烈な磁力が襲う。


 ハロミトとジェノムは同時に背後に向かって飛ばされ、壁に衝突した。



『凄まじい衝突だぁ!』



 お互い壁から体を乗り出す。


 せっかく、その瞬間まで足掻(あが)いて、ただ、脳絞って、今、見えるとこまで、この瞬間を飲み干して――超SPEED(スピード)を出したというのに、倒しきれていない。

『もう決まる。そう、運命はナ、最後(トリ)を既に決めている。さぁ、決着は如何(いか)に!』


 立つ二人。

 近づく二人。



 ザンッ!


 その時、ハロミトの背後から突き出た塔。


 貫かれたハロミトは消えてしまった。


 そう。決着だ――。



『勝者は、ジェノムだぁ!!』



 勝利の女神は、ジェノムに微笑んだみたいだ。



 ――――――。



「ごめんなさい。負けてしまったっす。」


 控え室でのハロミト。


「気にしないで。いい戦いだった。ハロミトはよく頑張ったよ。」


(なぐさ)めはいらないっす。」


「そんなつもりじゃなくて……。」


 よく見ると、目がとても潤っている。


「いいんす。俺、すごく悔しいんす。だから、強くなって、今度は慰めの言葉じゃなくて、お疲れの言葉を貰うっす。」


 その思いが強く伝わってくる。

 私まで涙が出そうになる。


「楽しみにしてるね。」


「はいっす。楽しみにしてて下さいっす。」



 次は第三試合。



「私の出番だ――。行ってくるね。」

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