75.運営からの助言
「なんでお前がいるんだよ。何の用だ?」
私達の元へルイランが来た。
「ルイレンに用事があってだな……。いや、事務的作業は――」
「何やかんやあたしがやってんよ。主忍の仕事だろ? 要件は?」
ルイレンはルイランの兄だ。しかし、基本的な仕事は妹がほとんどやってるらしい。
「普通の引き継ぎだ。砦から永久の町までの警護担当になったからな。」
頭にはてなを浮かべる彼女。
「わっかんねぇなぁ。何の引き継ぎだぁ? 国から主忍の仕事は下りてきてねぇぞぉ?」
「主忍の仕事ではないけど、ルイレンは必ず出なきゃならないだろ? 『最強秘宝決定戦』の参加者だろ?」
「なっ。主忍の仕事じゃねぇから頭が回らなかった。ってか、あの馬鹿兄貴。何も言ってねぇぞ。」
怒りを孕んだ独り言が放たれていた。
「おい。ドラヴァス。引き継ぎは明日する。いいか?」
「俺は構わんぞ。」
彼女は「クソ兄貴めっ!」と呟きながら、力強く踏みしめて進んでいった。
――――――。
民宿から出ると朝の爽やかな風が吹いてきていた。
ビリビリビリ。
ふと空間が裂ける音。
「何っすか?」
ハロミト達が気になって近づいてくる。
不思議な電子ボードが目の前に現れた。
『詩忍にくちなしの運営よりこのメッセージを配信しております。アクセスが非常に難しく、漸くアクセスできた次第です。僭越ながら、メッセージを送らせて頂きます。』
バグ世界に囚われてしまった私に対する、私の元いた世界にいる人達からの助け舟だ。
『魔王討伐の旅に行かれる場合、注意事項がありますので、お伝えします。魔王は"支配"の力にて人智を超えた能力の護りがございます。それ故に魔王討伐には、護りを無効化する"秘宝――神の矢"が必須となります旨、お伝え致します。』
つまり、魔王を倒すためには秘宝――神の矢が必要ということね。
『アクセスが不安定のため、これ以上のメッセ』
そこでメッセージは消えた。
私が元の世界へと戻るには魔王を倒すしかない。その魔王を倒すためには神の矢が必要とのこと。
それがどういう代物なのか、誰が所持してるのかよく分からないが、一ヶ月後には『最強秘宝決定戦』が行なわれるので、確認するにはちょうどいい機会だ。
そこにドラヴァスとルイランがやってきた。
「残り一ヶ月間は、俺の元で修行な。勇者殿も一緒に鍛えてやる。」
ルイランからは「けど、勝つのは馬鹿兄貴だから」とライバル心剥き出しで言い放った。
【ドラゴン!】
ドラヴァスは巨大なドラゴンに変身した。
リュウジャスが蛇みたいな龍とするならば、このドラゴンは羽の生えた蜥蜴みたいな竜だ。
私達は彼の上に乗った。
私、ハロミト、マユダ、フェルナ、パルパルが全員、竜の上へ。
パサッ。
羽が広げられる。
空を力強く進んでいく。
「一言いいか。フェルナ、貴様、なぜ自分で飛ばん! 貴様も自力で飛べるだろ!」
「いや……みんなが乗ってるから。一応……。」
「あのなぁ……。」
竜は何やかんやいいつつ私達を彼の住む村へと連れていってくれた。
――――――。
砦。及び城下村。
灰色の岩盤でできた筒状の城。シンプルな外観で、下手な装飾もなく、ただの筒状となっている。
砦の中に入る。
岩でできた建物だ。一階は受付などの物が置かれてある。あまりにもミニマムな内装で、余分なものが置かれていない。
二階はまるで闘技場みたく、真っ平らな階層。灰色の岩でできた床や壁。これ以上の感想は抱けない。
三階は光の指さない薄暗い場所だった。砲台が三つ程度置かれているのが真っ先に目に映った。武器庫のような階層だ。真ん中には凛々しく立った石像が置かれていた。
屋上(四階)に辿り着いた。
真っ平らな変哲のないただの床。屋上を囲う壁。
壁と壁の間には窪んだ隙間があり、そこから外の景色が一望できた。
辺りは砂漠に包まれている。
砂漠に構える砦の付近には村落が発達していた。小さな村落だ。この砦のように余計なものはなさそうな、部族みたいな村だった。
「改めてようこそ、我が城へ。ここは砦。強きを求める大地の城なり。」
ドラヴァスはドシンとその場で座り、「早速だが投げてみろ」と言う。
言葉通りにブーメランを投げた。しかし、途中で風が吹いたせいでブーメランは軌道を変えて落下した。
シュッ。
そこに現れるちょっと中性っぽい、女性らしい見た目のある男の人がブーメランを手に取った。もちろん、ブーメランが光ることはない。
それを私の元へと手渡ししてくれた。
「こいつは国の忍。今回の大会の間、お手伝いしてくれることになっとる。ブーメランを落としても、こいつが拾ってくれるから、何回でも投げろ。」
国の忍は優しく微笑みを浮かべ、
「国の忍の"ムイヘ"です。短い間ですが、よろしくお願いします」と挨拶をしてきた。
とても優しそうな人だった。
◆
ムイヘが和かにアドバイスをする。
それを受けて実践してみる。
ブーメランを投げる時に――
【時間!】
止めて精々数秒程度。
けど、投げる流れで勢いよくブーメランの上へ。
【重力!】
さらに自分の重さを限りなくゼロにすることで……。
ブーメランの上に乗ることができた。
アババババババ。
私も回転する。すごく目が回る。前が見えない。
ガン。壁に衝突した。
痛い――。
「軸があれば回らずに済むと思うのですが……。」
ムイヘの言葉で何か思いつきそうだ。
そこに、二階にてハロミトの稽古をしていたドラヴァスが私のいる屋上にやってきた。
「どうだ? 調子は!」
「もうそろそろ何かつかめそうです。」
「そうか。だが、明日には古都に行くぞ。今日が、修行のラストだ。さぁ、仕上げをしようか!」
ドラヴァスとムイヘのお陰で何とかさまになってきた。
後は、それが本番で通用するかどうか――。
◆
ついにこの日がやってきた。
舞台はそう――バトルコロッセオ。
最強秘宝決定戦――。
そこに秘宝使いが十一人集まった。




