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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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74.使いこなせ、ブーメラン

 ブーメランを投げた。


 戻ってくるソレを(つか)んだ。


 パシッ……。


 ……。


「い、……っ()ー。」



 掴んだはいいものの、掴んだ手も切り裂かれて痛みが襲ってくる。


 何度も投げれないせいで、全然、練習にならない。


 大会まで時間は限られている。早く使いこなさないと。まだ、未知なる能力を隠してるっていうのに、それを使いこなす以前の問題だ。


「ねぇ、うち、いい人知ってるかも。」


 フェルナがそんなことを伝えてきた。

 私は耳を傾けた。


「じゃあ、お願いしようかな。」


 私達はブーメランを使えそうな人に教えを()うことにした。



不死鳥(ふしちょう)!】



 フェルナは巨大な炎の鳥に変身した。私とハロミト、パルパル、マユダでその上に乗せて貰った。熱くない炎に包まれながら、青空を進んでいく。


「楽しいねー。」


「うん。こんなにも空を飛ぶのって楽しいんだね。」とびっきりの風を浴びていく。




 

 都から北に相当進むとある町。

 永久の町――。





「お姉ちゃんっ。楽しかった。また、みんなと一緒に飛びたいなっ!」


「余裕があったらね。」


 その会話を聴きながら、ひと頭に過ぎることが一つ。お母さんと呼ばれる私よりもお姉ちゃんと呼ばれるフェルナの方が年上なんだけどな……。それってもしかして見た目が――。

 考えるのを止めた。



 私達は町の外れにある小山についた。本当に小さなカルデラには水が張っている。その真ん中には大きくて丸い水の塊の中にイケメンの男が閉じ込められている。

 彼はカゲトと言うハロミトの一つ前の執事だ。今は見ての通り、水の中に封印されてしまっている。


 その近くでビーチチェアに座りながら、新聞紙を読んでいる棒人間がいた。


「ルイランさんに用事があって来たんですけど」と言うと、棒人間は「多分だけど、ルイランは公園で火遊びしてるでござる」と教えてくれた。


 日常的に、この棒人間の彼とルイランという彼女の二人で、目の前の水の牢獄を見守ってくれている。


 そして、私達はルイランに用事があった。


 私達は棒人間に手を振ってその場を離れた。



 ――――――。



 公園で(たむろ)してるヤンキーっぽいグレた服装の三人の女。


 虫除けスプレーを噴射させ、そこに先が長めのライターを近づける。そうそれは火炎放射だ。


 何をしているだか……。


「ん? あたいらになんかようか?」


「実はね、カナリンをアンチギルドの連中に奪われちゃって。取り戻すには『最強秘宝決定戦』に出て優勝するしかないみたいで。けど、その秘宝を使いこなせなくて、ルイランちゃんなら上手く教えてくれるかもって思って。」


 ふっ――。彼女は少しだけ目を(つむ)ってから、目を開けた。


「カナリンを奪われって? 最高じゃんか。あんな奴、そのまま奪われとけばいい。」


 期待していた反応と真逆の反応だ。もっとすんなりと協力してくれるかと思ってた。


 そこに取り巻きの一人が耳元まできてこそこそと説明してくれる。


「姉貴、前にカナリンさんと一緒に戦った時に、負けちゃったんですよ。それが原因で、全滅の危機になったし、挙句(あげく)カゲトさんを封印されてしまうし、ある意味、戦犯として責任を感じてたんす。」


 責任感の強い彼女なら、そうなるのも頷ける。


「そんな姉貴に対して、カナリンさんは負けた原因は自分じゃなくて姉貴だと断言して……。それを聞いて、カチンときた姉貴はそれからカナリンのことを凄く嫌ってまして……。」


 馬が合わなかったのか……。

 しかし、このまま何の成果もなしに帰るのも忍びないな……。


「カナリンさんが絡んでなければ、認めてくれるとは思うんですけどねぇ。」


 頭を悩ませている三下。

 その言葉で、違うアプローチをしかけることにした。


「私、『最強秘宝決定戦』に出るの。カナリンのためとか、そういうのじゃなくて、どうしても優勝したくて。力を貸してくれない?」


「はっ。仕方ねぇ。ちょっとだけだぞ。手伝うの。」


 チョロい。


 私はルイランに教えを乞うことになった。



 ――――――。



「これ、プレゼント。痛みもなくなるはずだ。」



 手渡してくれた新品の手袋。指先だけは空いていた。


「あたしの武器は棘ヨーヨーで、たまに棘が開いたまんま出戻ってくるんだ。」


 彼女はヨーヨーを取り出して長く下に下ろした。


 "ロング・スリーパー"


 下で回っている間、本体からはトゲが顕になっていた。

 手元に戻ると棘は引っ込んだ。



「この手袋は棘が貫かねぇ。安心して手元に戻せるはずだ。予備もたんまりある。これは餞別(せんべつ)だ。貰っとけよ。」


「ありがとう。」



 ブーメランを投げた。出戻ってくるソレを掴む。痛みはなかった。

 これで次のステップに進める。


「お次は、ブーメランを操る方法か……。ジュリネ。投げてみろよ。あたいがサポートしてやんよ。」


 ブーメランを投げる。


【ルート!】


 ブーメランがルイランの決めたルート通って動いていく。それが、私の手元へと戻ってきた。


 どのルートで通るか一本の矢印が浮かんでいて、ブーメランの着地点が分かるようになっている。

 

「あたいの能力"ルート"は①自由に動きの道筋を決めれる。②その道筋を可視化する。って効果だ。今から②だけを発動する。言ってること分かるか? ブーメランが元々飛んでいく道筋が目で見えるようになってるから、どのように投げたらどのように飛ぶのか、しっかりと身につけろ。」


 シュッ。


 示されるルートのお陰で理解がしやすい。


 それなりに投げるとある程度、コントロールして投げれるようになってきた。


「明日は移動しながらのキャッチ行くぞ。時間ないんだろ?」



 ――――――。



【ルート!】


 能力でズラされる道筋。それは走りながらでないと届かない位置。


 ダッシュして掴みに行く。


 が、上手く掴めない。


「そう、簡単には行かないか……。」



 ――――――。

  

 時間を三日費やして、ようやく動きながら投げたり掴んだりすることができるようになった。


 今日は一人で自主練だ。


【磁力!】



 投げたブーメランが軌道を変えて、こちらへと飛んできた。それをキャッチする。


 思った通りだ。


 私の能力と組み合わせることができる。


 "磁力"で軌道を変えたり、"時間"で数秒の時間差を生み出したりできる。少しずつ慣れてきた。



「おいおい。そりゃあ、栄光の回転鉄具(ブーメラン)じゃないか。それの持ち主が現れたんだな。」



 そこにいたのは国を代表する五人が一人、主忍のドラヴァスだった。


「初めましてだな。俺は砦の主忍ドラヴァスだ。さっきから少しだけ観てたんだが、【遅延(ちえん)】の能力を使いこなせてねぇみたいだな。」


「遅延の……能力?」


「ああ。少し貸してくれ。」



 彼はそれを持った。ブーメランが赤く光った。


「いいか。ダイヤルを回すと回した分だけ攻撃が遅れる。ダイヤルのタイマーがゼロになると、遅れた攻撃が一斉に表に出るって使用だ。まぁ、見てろよ。」


 彼はペットボトルを幾つか置いた。

 それに向かってブーメランを投げる。


 しかし、どうしてかペットボトルをすり抜けた。


 他のペットボトルに向かって投げた。それもまたすり抜ける。


 結局、全部のペットボトルはすり抜けてしまって、無傷。



 ……と思いきや。



 パシャンッ!



 全てのペットボトルが同時(・・)に真っ二つに破壊された。



「これが栄光の回転鉄具(ブーメラン)の特徴。遅延攻撃だ。」



 すごい、としか思えなかった。

 返されるブーメラン。

 思わず「ドラヴァスさんが持ってた方が使いこなせない私よりも断然いいと思うんですけど」と呟いてしまった。


 彼は笑って、

「俺が持ってると、兄貴が辛くなるからな。俺は持ちたくねぇんだ」と返した。



 そうだ。

 彼――ドラヴァスはリュウジャスの弟で、栄光の回転鉄具(ブーメラン)に認められた人だった。


 

「俺がそれの使い方を少しでも教えてやろうか?」



 その言葉を聞いて、体が勝手に「お願いします」と頭を下げていた。

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