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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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73.おかえりパルパル

 活気溢れる会場。


「なんであいつら堂々としているんですか。なんで国の忍は捕まえないんですか。一番のチャンスでしょ。」


 小声で話しかけるアナココに、プルリューが答える。


「取引をしたみたいですね。大会では見逃すことを秘宝と引替えにして交渉したようです。」


 アルカナギルドは壊れて消えたケルビムを除く三人が閉会の儀に積極的に参加していた。

 アナココは疲れた目つきで彼らを睨んでいた。



「以上を持ちまして、第十三回『三大ギルド対抗覇戦』を閉幕する。そしてここで国王様より一言頂きます。」



 人々の視線が国王の方へと集まった。



「兼ねてより世界に置かれし十一の秘宝。太古、勇者の時代には秘宝使い最強を決める戦いが催されていたそうな。じゃが、勇者が没し、聖剣が封印されて依頼、全てが世に出回ることもなかった。しかし、今、この時を持って、全ての秘宝が人の手に渡った。そこで我から『最強秘宝決定戦』の開催を宣言する!」



 盛り上がりがオーバーヒート。

 異様な熱気に体力を取られてしまいそうだ。



「開催は二ヶ月後。秘宝使いには追って連絡をする。」



 この覇戦は、この盛り上がりのまま終わりを迎えた。





 リボンにある持ち主を示す名前。それを黒で塗り潰されていたが、ゴシゴシ洗ってようやく取ることができた。


「ほんとだ。このペット、本当にジュリネさんのだったのか。」


 ヴァリアントギルドはトロフィーとパルパルが授与された。そして、パルパルについては事情を説明した後、私のペットだったという証拠を見せることで、確実に私の元へと戻ってきた。


「寂しい思いさせたね。痛いことされなかった?」


「パル。パル。」


 平穏無事なその姿に安堵を覚えた。


 ぎゅっ。


 抱きしめると懐かしいような温かさを感じる。



 静かなひとときで、感動の再開を果た――



「せーら、せーら、よっ。おっ。せーらっ。」



 ……。



 うるせぇ……。



「やめて~、壁、壁に当たるから。」


 向こうでは大会MVPのプルリューをギルドメンバーの大半で胴上げしていた。まぁ、私達が真ん中にいる間にせっせと他のクリスタルを破壊して回ったことで、ヴァリアントギルドは圧勝した。彼には感謝してもしきれない。



 だけどね――



 私とパルパルの感動的な再開が台無し。


「ひょー。ひょー。」



 返してくれ、この時間!



「へぇ。ペットのパルパルねぇ。初めてみた。可愛いじゃん。」


 マユダは興味津々(しんしん)でパルパルを()でていった。


 少しすると他のギルドの人達がパルパルに興味を持ち始めた。


「こんな低級魔族……どこに行けば会えるんだよ?」


 笑いながら言う男に、イグニスという男が、

「魔族が強すぎて人の行けない秘境の一つにパルパルの住処がある」と伝える。


 彼は秘境探検家としてギルドに所属していて、パルパルに対する知識が多少あった。

 他の人は全員、パルパルについて初見にかかる人だらけだった。



「俺は、興味ねぇ。」



 イメージ通りの言動をするリュウジャス。

 じゃあ、わざわざ「なんでここに来たの?」



「てめぇに用があんだよ。」


「私に……?」


 パルパルがリュウジャスの裾口を引っ張って笑顔を浮かべる。

 嫌そうな顔をしながら、あらぬ方向を向いている。


「良かったじゃん。気に入られて。」


「どうでもいい。早よ、取り行くぞ。秘宝。」



 ぶっきらぼうな言い方で、彼は以前一度だけ通った秘密の抜け道を進んだ。


「選ばれたのはてめぇだ。貰っとけ。」

 

 置かれた栄光の回転鉄具(ブーメラン)。私はそれに触れた。


 前と同様に赤く光るそれを取り外す。すると光は止まった。



 (さび)色の鉄でできたブーメラン。真ん中にはダイヤルみたいなものがついている。


「なんだろう? これ。」


「俺の弟……ドラヴァスって言うんだが、アイツはそれを使ったことがある。俺はよく知らねぇが、そのダイヤルを回すとオクれるらしいぜ。」


「オクれる? どういうこと?」


「俺にゃ、さっぱりだ。使うのはお前だ。決定戦までに使いこなせ。」



 ダイヤルを回してみた。しかし、何も起こらなかった。



 大広間へと戻った。何故か、そこはとっても暗くて前が見えなかった。


「どうなってんの! これ!?」


 真っ暗闇のギルド。一体全体、何があったのだろうか。



「ちっ。コイツら『呪釘(じゅくぎ)の修行』で遊び初めやがった。」


 初めて聞くワード。「何それ呪釘の修行って!」



 近くからピューリの声が聞こえる。真っ暗闇のせいで近くにいるのだけは分かるが、どこにいるかは分からない。


「俺が教えるぜ。昔、とある忍軍団が秘宝――呪釘四連を使用して暗殺をしていたんだとさ。簡単にいやぁ、地面に打ち込む深さによってフィールドを月夜から光も通さない新月の深夜まで自由に設定する武器なんだが、それを使うには使い手が夜中に自由に動かなきゃならねぇだろ?」



 パシンッ!



 どこからか何かで叩く音がする。



「んで、その忍らは修行と題して、真っ暗闇の中でお互いを攻撃し合ったんだ。今じゃ、暗闇の中で新聞紙の丸棒で叩かれた回数が少ない方が勝つゲームになってる。ちなみに申告制で嘘はご法度だぜ。」


 パシンッ! 痛っ!


 頭を強く打たれた。



「ごめん。説明はいいからさ、ここからリタイアする方法教えて。」


「ないな。制限時間が終わったら勝手にライトを照らすから、それまで頑張って耐えてくれ。」


「嘘でしょ。」


 ヒュンッ。


 危ない。何となく、気配で避けれた。



「マジさ!」


「マジかっ! 最悪。」



 悪意を感じる。


「とやっ!」


 何とかしゃがんで攻撃を避ける。

 まさか戦場に放り投げられるとは最悪だ。

 それに、今ブーメラン持ってるから、誰かを傷つける可能性がある。なんでこんな時に……。


「パルパルゥ!」


 パルパルの声がする。こんな危険な暗闇の中、放置されてるなんて信じられない。ひとまず助けに行かないと……。


 痛っ。


 私にぶつかる体。さらに、反対側からも衝突された。手に持ったブーメランを落としそうになる。


「パルぅ!」


 パルパルはベールを作り出すことができる。そのベールは弾力性があって、跳ね返る。

 私はそのベールに突撃し、跳ね返って後ろに飛んだ。


 その時、ブーメランが飛んでいってしまった。



 もうブーメランがどこにあるのか分からない。そもそも状況を把握しきれない。



 バキバキバキバキ……。


 なんか木が(きし)む嫌な音がする。


 バキッ!


「今度は何っ!?」


 暗闇に光が射し込んできた。

 そして、屋根が落ちてきた。



 ヤバイ! ヤバイ! 潰される。


 なんでこんなことになってるの?

 混沌(カオス)すぎるでしょ!?



「パルぅ!」



 パルパルの繰り出した不思議なベールが落ちてくる屋根を幾つも支えた。


 私達はパルパルによって助かったのだ。



 ――――――。


 

 屋根が半壊している開放的なギルド。


 オーーーン三きょうだいが中心となって、他の人達が周りに固まっている。

 オゲンが呑気に叩かれた回数を聞いていく。


「おい、てめぇら、何、呑気に遊びの続きをしてんだ? あ? ギルド、ぶっ潰すとはどういう了見だ、あぁん?」


 そこに現れる龍。それが集まっていた人達を正座させた。



 何をやってるんだか……。



「この屋根の落下を防いでくれたのはこのパルパル様だ!」



 馬鹿達は、今度はパルパルを囲み出した。


「パ……ル?」


 そして、なぜか胴上げし始めた。


「屋根の落下から我々を救ってくれた救世主だ。万歳(ばんざい)っ!」



 何をしてるんだか……。



 龍となったリュウジャスのピキピキが増えているのが見えた。



「んなことしてる場合じゃねぇぞ。早く屋根を修理しやがれ!」



 龍のお怒りがこだましていた。

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