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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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72.三大ギルド対抗覇戦

 三つの顔を持つケルベロスのそれぞれの顔を、ヴァリアントギルドのギルマス――リュウジャス、カリッジギルドのギルマス――アテナ、そして仲間であるはずのアルカナギルドのギルマス――ジェノムが破壊した。


 耐えきれなくなったケルビムはロボットの姿に戻る。

 そこに、ジェノムが技を発動して、ケルビムは不思議なオーラに包まれた。



 挙動不審な動きをし始めるケルビム。周りにいる誰もが身構える。



 バギャッ。


 そして、破裂した。



「壊れてしまったようですね。」


 穏やかにそんな結論が出されていた。



「さて、リュウジャス様。」眼鏡をクイっと上げている。


「あ? なんだぁ?」


「あなたの組織下のジュリネ氏が秘宝――栄光の回転鉄具(ブーメラン)に選ばれたと聞こえましたが、事実でしょうか。」


「そうだよ。なんか文句あんのか?」


「やはり、そうでしたか。」


 頭を抱えて、空を仰ぎながら高笑いするジェノム。何がおかしいのだろうか。



「ジュリネ氏。あなたがこの覇戦に出場し、この場で秘宝に選ばれたことが明らかになった今、国王ソフィス十三世の悲願である『最強秘宝決定戦』の開幕が可能となりましたね。」


 何の……話?

 コソっと比較的近くにいるアナココを呼んで聞いてみた。


「世界に十一しかない秘宝の中でどの秘宝が強いのかを、秘宝使いだけのトーナメントで決定する大会ですね。」


「そんな大会があったんだ……。」


「まぁ、今まで開催されませんでしたからね。」

「どうして?」

「秘宝――"勇者の剣"が誰も手にすることができませんでしたからね。最近になって"ハロミト"さんが手にしましたけど。」


 そして、私がヴァリアントギルドの秘宝に選ばれたことで、秘宝使いが十一人(そろ)ったって……こと?



「うーん。最強秘宝決定戦は無理やない? よー、考えてみ、最後の秘宝――魔法の勾玉(まがたま)アンチ(・・・)ギルド(・・・)に奪われたんやよ。」


「それは問題ないのです。」



 ここにもう一人のプレイヤーがやって来た。アルカナギルドのユーヒメだ。



 可愛らしい笑顔を見せながら、ペンダントを取り出した。


 カチャッ。留め具が外され、ペンダントの中から勾玉が現れた。


「これが秘宝――魔法の勾玉だよっ♡ 人間には効果はないけど、人間以外のヘイトを集める力を持つの。"(タンク)役"にとっては(のど)から手が出る程に欲しい品だよねっ♡」


 可愛らしい声が響いた。

 しかし、なぜ彼女がアンチギルドの勾玉なんて持っているのだろうか。


「これを国王様に献上しようと思うのっ♡」


(うそ)やろ。ほんとに最強秘宝決定戦が開けるやんか。」



 この中で比較的余裕があるのが私とユーヒメだけ。他は満身創痍(そうい)。私達さえ動かなければ、多分戦いにはならず話し合いが続いていきそうだ。



「ジュリネ氏がギルドに参加し『三大ギルド対抗覇戦』に出場すること。それが『最強秘宝決定戦』に繋がると星の教えがあったのです。やはり、占いは信じるべきですね。」


 私が三大ギルド対抗覇戦に出たことは全て掌の上だったってことね。


「そのための工作は大変でしたよ。ベルル氏はいい働きをしてくれました。出場の固いダイセナ氏を離脱させつつ、我々の用意した魔族はジュリネ氏に討たせる。役目を果たすという、いい死に方をしたものです。ベルル氏は死んで良かった――と。」


 何を言ってるんだ……この人は。

 悪意のみが支配する椅子のイッスーみたいな雰囲気がする。


「俺さ。ずっと一緒に仕事してきたんだ。ダイセナはさぁ、独りよがりで厳しくて嫌だったけど。けど! 大切な仲間だったんだ! それがもう二度と戦えなくなって辛い目にあったんだ。俺も悲しくなったさ。それを画策して、そして笑うなんて、俺には到底許せねぇ。」



 アナココが立ち上がった。力強く前へと踏みしめていく。



「それだけじゃないさ。ベルルは引っ込みがちな俺にとって、いつも引っ張ってくれる大切な仲間だったんだ。裏切った時は、とても心苦しかった。だけどさぁ、例え裏切っても仲間には変わりねぇんだ。俺は仲間を笑うあんたらを到底許さねぇんだ。一発、殴らせろよ――。」



 早い――。


 急に飛び出した。あまりの緩急に、対応しきれないジェノム。彼の元へ思いっきり振りかぶった拳が炸裂(さくれつ)した。



「ペラペラペラペラと……地雷を踏み(にじ)ってくれたな。やっぱ一発じゃ物足りねぇわ!」



 真剣な眼差しが向かれている。

 もう能力も使えないほどに疲弊してるはずの、彼は何故か戦えるようにさえ見えた。


【重火器――。】私もサポートしなきゃね。



「ジュリネっ。砲弾はやめろ。この女、跳ね返す技を持ってんぞ。」



 私の狙いは制止されてしまった。


 もう一発殴りにいくアナココ。


【変形――。】


「くそっ。」アナココは悔し紛れの言葉を呟いた。

 

 無情にもユーヒメが繰り出した刀に斬られてリタイア――消えてしまったのだ。



 

 ユーヒメが手にしている流動的に波を打つ蛇行剣。


 ああ、そうか。今気づいた。

 ユーヒメって、ローマ字で表すと『U-hime』で、アナグラムを解読すると『Heimu』――つまり、


「あんた、ヘイムでしょ。」


「正解。」



 ()がれていく化けの皮。

 そこにいたのは紛れもなくヘイムだった。



()しくもこの世界を代表する四つのギルドのリーダー達が集まったんだ。四大ギルド談話でもしない?」



 リュウジャス、アテナ、間を挟んでジェノム、ヘイムが対面している。それを私が少し離れた位置で見ている。


「断るに決ま――」そうリュウジャスが言おうとした所に、アテナが止めた。



「ちょうどいい機会やろ。せっかくやし、あんたがなぜアンチギルドに肩入れするんか聞かせて欲しいんやわ。」



 その言葉を受けて、ジェノムに視線が集まる。


「私はアルカナギルドのために心血注いで働いてきました。その一番の目的は人類の叡智(えいち)を手に入れ、人類の発展に繋げることです。言わば、『神の知恵』に辿り着くことだったのです。」


「分からねぇなぁ。アンチギルドは人類を発展どころかマイナスにしちまうんだぞ。」


 なぜか悲壮感的な表情を浮かべていくジェノム。


「調べていくうちに『神の知恵』の力には所有者がいることが分かりました。では、リュウジャス様、我々が追い求めた『神の知恵』の所有者を誰かご存知でしょうか?」


「知らねぇな。聞いたこともねぇ。」


(かな)しいかな。ある時、辿り着いてしまったのです。その所有者が"魔王"なのだと。そう、我々の研究はいずれ魔王に辿り着くことが目的だったのです。」


 つまり――


「アルカナギルドを背負っている私の使命。それが魔王の肯定ならば、私は引き受けるまでです。」



 彼は哀しい顔を浮かべるマスクを付けた。さらに、紺色のローブを身にまとった。



「今ではアンチギルドの幹部――蒼天(そうてん)哀面(あいめん)としても活動していますので、ご理解ください。」



 異質な雰囲気が体を硬直させた。


「分かりやすくて助かるぜ。ようは最初(はな)から力で制圧すりゃ、いいんだろ? あ?」


 リュウジャスはもうやる気モードだ。


「とりあえず、アナココが殴れなかった分は殴らせて貰うぜ!」


 能力は使えない。それでも走っていく。

 現れる塔を避けて、彼の懐へ。そして、強いアッパーを加えていった。



【銃――】

 動きを見せるヘイム。そこに近づいて、私は銃を向けた。聞きたいことがあった。


「ヘイム。」


「どうしたのかい?」


「大切な仲間を返して。」


 私にはアンチギルドに奪われたパルパルとカナリンがいる。


「パルパルはこの覇戦に勝てたら取り戻せるよ。カナリンはまだ手放したくはないな。今は彼女の力が必要なんだ。と言っても、納得はいかないよね。」


「当たり前でしょ。納得いくわけないじゃん。」



「じゃあ、こうしようか。近々行われる『最強秘宝決定戦』で優勝したら、カナリンは返してあげる。これでどうかな?」


「今すぐ返して。」


「それは無理さ。」


 

【変速】



 パァン!



 引き金を引いた。しかし、銃弾を避けられた。

 今度は常に変形する刀が私の元へと伸びてきた。



 ――。強烈な音が響く。



 試合終了を報せる音だった。



「勝者はヴァリアントギルド!」



 その言葉が響いた。



「ボクは約束は守るよ。まずはパルパル。お次は『最強秘宝決定戦』の結果次第かな。」



 彼はアルカナの控え室へと消えてしまった。

 私もヴァリアントの控え室へと瞬間移動させられていった。

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