71.《ケルビム戦》弐
俺はリュウジャス様だ。貴様は誰だ。よくぶっ潰してきた傍らの雑草だな。顔が三つだからって調子乗ってんじゃねぇぞ。
すぐに力の差ってもんを見せつけてやるよ。
――ケルベロス!
【龍】【リズム】【リスン】
◆◆
サイド――リュウジャス、アテナ。
対――魔族四天王
◆◆
吹雪が吹き荒れる。氷が苦手な龍の鱗に当たれば致命傷。まず確実に避ける。
雷が飛び交う。ピリピリして痒い。ダメージそんなにないから無視。
炎が吐かれる。全く効かないな。
青色の犬が力を溜めている。
「じっとしてろや地獄の番犬。SHIT ASS、命令聞かねぇんなら案件。無理なら力づく【リキッド】に沈める。言葉の暴力で表現フリースタイル。」
大量の水を生み出してぶつける。圧倒的な質量。相当なダメージとなるはず。
が、その水は凍らされて、そこに放たれた雷の一撃で粉砕した。
「てめぇ、逃げるんじゃなかったんか?」
氷を蹴り飛ばしながら、空中を駆けていく一人の姿。空中で振りかぶる斧。
【当たれ!】
突然、斧の攻撃が直接当たってもいないにも関わらず斧のダメージを受けるケルベロス。
「本当はそうしようと思ったんやけどね。せやけど、仲間が三人もやられちゃったから、もう倒すしかなくなっちゃったんよ。」
アテナに向けて放たれる炎。それを斧でガードする。
「まぁ、なんでもいいけどよぉ。足を引っ張るんじゃねぇぞ。」
「うちは秘宝持ちやで。あんた、まだ秘宝に選ばれてないんやろ。そっちこぞ足引っ張らんようにしてや。」
「うるせぇ!」
秘宝――宝玉光の斧。
効果は【蓄積】。ダメージを受けるために光が溜まって眩しくなっていく。任意で溜めた光を放つことができる。そのルクス(明るさの度合い)が高い程、その威力の倍率が上昇する。
その斧を振り回すアテナ。
気に食わないけど、その強さを認めざるを得ない。
【当たるな!】
黒い旋風が横にずれるも半身は当たりそうだ。ギルギリで当たる所を斧で何とか防いでいた。
「今から観客、全員呆然。凄絶展開見せる、当然。真心込めた"破壊光線"。終わりだ、番犬。命、消滅せん。」
口から放つまるで大砲攻撃――キャノン。しかし、互角どころか弱まった旋風が襲う。
「くそっ。」
「全然、近寄れへんな。」
こうなったら……。
「おい、アテナ。俺の上に乗れ。協力すんぞ。」
「今日、雪の予報やないで。珍しいな。あんたが協力なんて言うなんて。丸くなって、可愛いなったやないか。」
「うるせぇ。勝つためには仕方ねぇから、言ってんだ。やっぱり失せろ!」
「素直やないなー。ほんとはうちと一緒に戦いたいんやろ。」
「あぁ? 馬鹿なこと言ってんと、脳天ぶちまけるぞ、おら?」
「まっ、協力するに越したことはないからな。乗らせて貰うぜ。」
「勝手に乗るな!」
「いやいや、記憶力、足りなさすぎひん?」
俺の上にアテナが乗る。
プライドが許さねぇが、負ける方がもっと許せねぇ。天秤にかけたせいで認めざるを得ない。
「どういう風の吹き回しなん。好きな子できたんか?」
「違ぇよ。強くなるために技と体だけじゃなくて心の強さも必要だと気づいただけだ。馬ー鹿っ。」
馬が合わない。
うざったい!
「ヨーヨーヨー。いっぱい、攻撃。すっぱ――」
「下手は黙れ。そして、くたばれ。馬鹿の上手な言霊は、稀。」
「つれないなー。」
吹雪、雷、火炎、強烈な黒い旋風。避けて避けて避けまくる。当たりそうなものはアテナが撃ち落としてくれる。
「"火炎"の榴弾。放つ大胆。これは脅威の拡散弾。全て当たれば散々だ。しかし、当たる全砲弾。」
「うちのお陰やな。おっと、二人でするか? 縁談。」
「一旦、突っ込み入れてもいいか? どさくさに紛れて何言ってやがる、アンポンタン。」
炎の玉を沢山繰り出して、適当に放っていく。
【集まれ!】【与える!】
それらがアテナの技によって集められ、そしてケルベロスに向かって進んでいく。
直撃したが……全くダメージを与えられていない。
「効かねぇのか。生半可じゃ駄目なら、一か八か、やってみるしかねぇよなぁ。トドメ技だ。おら。」
「もしかして、あれか? いつもうちらが戦う時に最後に使って、勝負を決める……本気の技。」
「それ以外にないだろ。」
空を駆けていく。
ケルベロスから遠ざかる。ある程度したら、弧を描くように進んで、再びケルベロスの方へ。
飛距離は充分――。
「最強の片鱗、ここに降臨。喰らいな、"逆鱗"。貰うぜ、勝利! これが龍の怒り!」
【暴れる!】
加速していくスピード。ただでさえトドメとして扱ってきた程の威力を生む突撃攻撃に、アテナの能力でさらにスピードと威力がかさ増ししている。
これで終わらせる――。
黒い旋風。
――掻き消す。
ケルベロスは凄まじい黒いオーラを放ってきた。それごと、吹き飛ばしてやる!
衝突――。
煙が辺りを支配した。
人間の体に戻ってしまった。
これ以上は龍に変身できそうにもない。
煙が消えた。アテナも疲れてきているみたいだ。ただ、光り輝く斧だけが恐ろしい。
これから、こいつと戦わなきゃならねぇの――
グギュルルグギャルグァッ!
ケルベロスは倒れていなかった。
「ざけんじゃねぇぞ。くそ野郎が。Damn it!」
まだまだ技を放てる様子のケルベロス。
よくよく見ると、赤や青、黄色の色を纏った状態では無くなっていた。だからと言って、やられた訳じゃない。……倒すしかない。
くそ……倒す方法が思いつかない!
「これ以上は、キツイと思うから来た。戦う? 逃げる?」そこに追加の声。
「逃げる訳ねぇだろ。この野郎。」
ジュリネが来た。最強の助っ人だ。木の裏にアナココもいる。これ程にない最高のタイミングでの登場だ。
「おい、アテナぁ。」
「どうしたん?」
「あの左の奴は俺が倒す。右の奴は、お前がやれ。どうせ残ってんだろ。最後の一撃。」
「残したかったんやけどな。そっちも使うんやろ。」
「当たり前ぇだ。」
俺はジュリネの方を見た。
「てめぇが真ん中の奴にトドメをさせ。」
「私が?」少し驚いてる。
「本気の攻撃なら倒せんだろ。なにせ、てめぇは、ヴァリアントの秘宝に選ばれた女なんだからなぁ! 悔しいが、認めるしかねぇよなぁ!」
「弟に取られた次は、後輩のおん――」
「うるせぇ。アテナの野郎、黙ることを覚えろや。さっさとやるぞ。」
「はいはい。」
俺は右拳に力を入れた。
これが最後の一撃――。
「振り絞れや勇気。最後の一撃。今から見せる最高の本気。筋肉の【隆起】。勝ち取る勝機。くらえ、とっておき!」
右腕だけ肥大化する筋肉。もはや化け物の腕だ。
「全身使えば、うちのムトーみたいに見た目もよくなるんやろうな。」
「仕方ねぇだろ。俺は《言霊系》じゃねぇからな!」
右腕だけ異変的な巨大化を遂げた拳で与える強烈な一撃。左側にいたケルベロスの頭をあっという間に潰した。
「"解放"やね――。」
アテナは斧の光を解放させた。その光の放出と共に威力が増す斧で、最大威力の攻撃を右側のケルベロスの頭を切り落とした。
残るは一つ。
ジュリネが重火器を構えた。
ザンッ!
突如、最後の一匹の真下から現れる塔。それが頭を貫いた。確かこの技はジェノムの攻撃だ。
ケルベロスの姿は消えて、ロボットの姿に戻ったケルビムがそこにいる。その横にはジェノムがいた。
「下手に回収しても修理費がかかりますし、最悪、機械が盗まれ技術が盗用されるかも知れないですからね。ですから、勝つか壊れるかしか残されていないのです。勝つためのドーピング……どうなるでしょうかねぇ。」
【実験――!】
ケルビムが不思議なオーラに包まれていく。
ガタガタガタガタ。
ケルビムが揺れていく。
その不可思議な音だけがこの無音の中に響いていった。




