67.開式の言葉
「ソフィア王女よ。前へ。」
見るからにあからさまな王女が盾を高く掲げた。
「秘宝――"幻の盾"の効果である電脳世界の創造。そこは自由に創造されし空間に死なぬ世界。その恩寵を受け、代々に行われた『覇戦』は今や三つの巨大ギルドで争う『三大ギルド対抗覇戦』と名を変え体を変えた。これは古より伝わる伝統行事。その重みを胸に、勝利に向かい努力せよ!」
国王の言葉が響き渡った。
王女が席に戻る。
今度は「リーダーよ、前に出よ」と言われる。
リュウジャス、明るそうな女性、眼鏡をした怪しい男性が前へと出た。それぞれが旗を高く掲げている。
「宣誓!」
その言葉が響いた。
最初に声を上げたのはリュウジャスだった。元祖と書かれていて、ブーメランの絵柄が背景の赤旗を大きく掲げた。
「我々、ギルド一同は、世のため人のため、悪しき魔族から皆を守るため、全身全霊で"力"を奮うことを誓います!」
今度は女性が前に出た。本家と書かれていて、斧が背景の黄色の旗を掲げる。
「我々、ギルド一同は、世のため人のため、人々が笑顔で過ごせる生活のため、"勇気"を持って進むことを誓います!」
最後に眼鏡の男が前に出る。旗は青色で塔の絵柄の上に真打と書かれた文字だ。
「我々、ギルド一同は、世のため人のため、社会の発展のために未知と神秘を求める"知恵"を存分に発揮することを誓います!」
そして、その旗の先を床に向かって下ろす。
三つの旗が重なった。
「第十三回『三大ギルド対抗覇戦』ヴァリアントギルド代表――リュウジャス。」「カリッジギルド代表――アテナ。」「アルカナギルド代表――ジェノム。」「以上を誓いの言葉とする!」
凛々しい姿を見せて、定位置に戻った。
国王の側近にいる忍がマイクを手に取った。
「続きまして、各ギルド及び代表選手の紹介。」
次は私達が呼名される番だ。
スタジアムの周りには多くの人が視線を向けている。隣のアナココはもう既に魂が抜けている。
「力を求め、秘宝――栄光の回転鉄具をおさめるヴァリアントギルド。代々より伝わる元祖ギルドに相応しき活躍を見せよ。」
私達は胸を張る。
……こんなにも観られているなんてすごく緊張する。
「ギルドマスター――リュウジャス!」
リュウジャスは前に出て握った手を肩に当てた。
「サブギルドマスター代理――プルリュー!」
プルリューが前に出て、同じポーズを取る。
「人事代理――ジュリネ!」
私も同じように前に出て、心臓を捧げた。
「エース代理――アナココ!」
「死ぬ……。こんなに大勢の人の前で恥を晒すんだ。はぁ、それもエースの肩書きじゃん。これから大笑いものになるんだ。死にたい……。」
「はぁ……。ちゃんとやらないと大笑いものになるよ。」
アナココはふにゃふにゃしながらも前に出た。見てるこちらが恥ずかしい。
「勇気を大切にし、秘宝――宝玉光の斧をおさめるカリッジギルド。ギルドの本来の在り方を解く本家を名乗るものとして恥ずかしくない活躍を見せよ。」
四人に注目が集まる。
「ギルドマスター兼人事――アテナ!」
朗らかな見た目をした包容力のありそうな女性が前に出た。
「サブギルドマスター――ヌユ!」
とても優しそうな青髪の少年が前に出た。一度だけどこかで見かけたことがあるような気がした。
「エース――ムトー!」
まるでボディビルダーみたいな体を作ってる人だ。白い歯が反射してとても輝いている。
「プレイヤー――ズーモス!」
おじいちゃんだ。私は酔っ払った状態のこの人にあったことがある。そのせいか、あんまり強そうなイメージも、役に立てそうなイメージも持てない。
「知恵を求め、秘宝――毘沙門の塔をおさめるアルカナギルド。新たなギルドの在り方を示す真打としての立場、その活躍に期待している。」
続く四人に視線が集まる。
「ギルドマスター――ジェノム!」
怪しそうな男性だ。この人からは嫌な予感が漂っている気がする。
「サブギルドマスター兼人事――ウメノ!」
占い師だ! 占い師のおばさんってアルカナギルドのサブマスだったの!?
「エース――ケルビム!」
大きなローブで身を隠している。そのせいでその姿がよく分からない。
「プレイヤー――ユーヒメ!」
ピンクの着物を着た可愛らしい少女だ。戦えそうには見えないけど、能力バトルだから油断はできない。
「以上、十二名!」
私達は人の列で三角形を作った。
ドキドキが止まらない。
「では、これよりルールについて説明する。」
私は耳を澄ました。
――――――。
三大ギルド対抗覇戦――。
バトルコロッセオ内で行われる三つ巴の対決。フィールドは森の中。上から見ると大きな三角上になった形になっている。
三角の隅が各スタートエリアとなる。
フィールドには十個のクリスタルが設置されていて、それを破壊すると色が光る。ヴァリアントなら赤色、カリッジなら黄色、アルカナなら青色という具合だ。
光っているクリスタルも破壊可能。破壊した時は、そのギルドの色に変わる。
開始から二時間後、最も多くの色を所持していたギルドの勝利となる。
つまり、ただクリスタルを壊すだけではなく、壊したクリスタルを守る必要があるのだ。
ここからは少し複雑となるルール――。
クリスタルの位置は各スタート位置に一つ、計三つ。二つのスタート位置を結ぶ線の真ん中に一つ、計三つ。中央の一つ。中央と各ギルドのスタート位置を結ぶ線の真ん中に一つ、計三つ。合計すると十個となる。
プレイヤーは死んだら復活できない。
プレイヤーの防御力は百パーセント上昇した状態となる。つまり、倒すことが難しくなる。
自らのクリスタル(破壊し、自らの色がついたもの)の数分、攻撃力が三十パーセント上昇する。つまり、四つ獲得していると敵の防御力を上回ることができるし、さらに獲得すればするほど倒しやすくなる。もし敵を倒したいなら自らのクリスタルの数が重要となる。
自らのクリスタルは半径数十メートルにオーラを巡らせる。そのオーラの中に敵がいる場合、その敵を認識することができる。
つまるところ、陣地の近くに来た敵が分かる。
以上がルールとなる。
最後に景品について。
優勝ギルドにはトロフィーが授与される。さらに、超がつくほど珍しいペット――パルパルを与えられる。
カナリンは見当たらない。
パルパルだけでも取り戻さないと。
この試合――絶対に負けられない!
私達はその後、少しの休憩を挟むことになった。そのため、ヴァリアントギルドの控え室へと向かった。
――――――。
「実は俺、元々、カリッジギルドだったんです。まぁ、ダイセナさんにスカウトされて、お金がより稼げるって思ってウハウハで移籍して痛い目見てるんですけどね。」
「じゃあ、アナココさんはカリッジギルドの四人について知ってるってこと?」
「はい。まぁ、特徴は全員で固まって息を合わせて戦うって感じです。アテナさん、ヌユさん、ムトーさんはみんな近接を得意としてます。」
近接しかいないから楽だとはなりそうにないなぁ。話によると固まって来られるから、生半可な攻撃じゃ意味をなさないと感じる。
話を聞くに、パッとしないけど、地味に強い……そんな印象を受けた。
「ちなみに、ズーモスさんが戦う所は俺、知りませんから、あの人、いつも酔っ払ってるか、ギルドのみんなに小袋のお菓子を配ってるかしか見た事ないんですよ。」
そこにプルリューが「年齢が高い人ってよく小袋のお菓子を持ってきて、みんなに分け与えたりしがちだよね」と笑っていた。
「お菓子の他に、重い食べ物持ってきた時もあるけどね。」
二人で笑っていた。
ひとまず分かったのは機動力は遅め。安定した感じで攻めてくる――パッとしないけど、地味に強いタイプ。
アルカナは未知数。
この覇戦、絶対に"中堅"として活躍してみせる。もう悔しい思いなんかしない――!
「ねぇ――作戦があるんだけど。」
リュウジャスは面倒くさそうに背もたれて、他二人は近づいてきてくれた。
私の技を存分に使った大作戦――。
その名も、
「フライング大作戦――!」




