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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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66.ヴァリアント代表

 響く敗北の合図――。


 絶望感よりも動揺が勝る。どうして? 意味が分からない。


 全員倒して勝利のはずなのに……。

 私はナギサを、ハロミトはイッスーを、マユダとフェルナはリュウジャスをそれぞれ倒した。どれも私の目で確かに見た。


 後、プルリューも初期の方にマユダが斧で撃ち落として倒した。


 あっ――。


「拠点破壊により、フライングフォースの勝利となります」という無情なアナウンス。



 彼が倒れた所は目視していない。

 ただでさえ、私とナギサが重力負荷つきで落下したのに無事だった。まぁ、ナギサの回復効果のお陰もあったけれども、少なくとも一撃死しなかった。


 つまり、彼はやられてなどおらず、そのまま戦線からフェードアウトして、私達の拠点へ。そして、拠点を破壊した。


 

「まんまとやられた――。」



 どれも勝負では勝てていた。けど、全て引っ(くる)めて試合で負けた。これは完全に戦略ミス。つまり――

「私のミスだ。ごめん――」


 心が痛い。後悔ばかりが広がっていく。


「お嬢様。一人でミスを抱えるのはよくないっすよ。俺らのミスでもあるんすから。」


 そうだよね。私だけのミスじゃないよね。その(なぐさ)めは空の心を(うるお)してくれた。

 けど……

 やっぱり、思い返せば思い返す程に"中堅"の私のミスだと気づく。その潤いは満たされる程の水量はなかった。



 まだまだ半人前なんだ。私は――


 今だけ仲間の顔を見れなかった。





 ヴァリアントギルド――。


 みんなの視線はギルマスへと向いている。



「元祖ギルドであるヴァリアントギルドは、勝手に離脱した本家を名乗る(クソ)ギルドと真打名乗るイケすかねぇ野郎をぶっ潰すため、『三大ギルド対抗覇戦』で圧勝する!」



 盛り上がりが激しい。



「そして、覇戦出場の代表として四人を発表する。最終的に一位を取ったのは『フライングフォース』だ。もちろん、リーダーは俺様リュウジャスだ。お前ら、よ、ろ、し、く! 」


 マイクの音がツーンと響いた。


「だが、『フライングフォース』には欠場者がいる。欠場理由と代理人の発表してくぜ。」


 マイクがイッスーへと渡された、というより置かれた。イッスーが話していく。


「『三大ギルド対抗覇戦』では、このヴァリアントギルドの見張り当直を二つのパーティーにだけお願いしていた。しかし、前回の覇戦では!」


 何やら騒がしくなってきた。

 カタン。マイクと椅子のぶつかる音。それによって静けさに変わった。



「僕達が覇戦に出場している間に、スプ〇トゥーン合戦と称して、このギルドをインク塗れにした馬鹿がいる! その汚れを取るのにどれぐらい大変だったか、覚えてるのか!」


 ちょっとキレ気味の言葉。内容があまりにも馬鹿げていて、油断すると笑ってしまいそう。


「今回、僕は覇戦を欠場し、当直の一人となる。今回は馬鹿な真似はさせないので、よ、ろ、し、く、ねぇ!」


 苦笑いを浮かべた。


「僕の代理として、プルリューが参加する。日々のサポート、代理人としてのバトル参加における活躍度。どれもとっても不足はなく、文句はないはずだよね?」


 みんなが頷いている。


「そこで、プルリューを代理人とする! プルリューさん、前へ。」



 プルリューがみんなの前へと照れくさそうにしながら向かった。ギルマスの横に立つ。


 続いて、ナギサがマイクを持った。


「直近の二つの試合にてジュリネさん率いるパーティーと戦い、わたくしナギサはどちらとも散々な結果しか出せなかった次第です。そこで私は代表から辞退し、ジュリネさんに代理をお願いします。ジュリネさん、前へ。」


 優しく微笑んでいた。

 近くに行くと「カナリンさんのこと頼みますね」と耳元で(ささや)いてきた。他愛のない返しをした。


 彼女のくれたチャンス。

 本当ならなかった希望を彼女がくれたんだ。次はもうミスはできない。



 最後にダイセナがマイクを持った。ベルルにやられた毒のせいか、体を動かしづらそうだ。


「ダイセナはもう戦えねぇ。ちっ。仕方ねぇから、代理を立てる。」


 そう言えば、彼女は十日ぐらいハロミトの師匠をやってくれた。これはハロミトも一緒に覇戦に出られるのでは――。期待が溢れていく。


「最後の一人は、アナココ。お前だ。」


「ひぇっ。」


 みんなの視線がアナココに向いていく。


「いやいやいや、俺じゃ荷が重いですって。それに多くの人に俺の不甲斐(ふがい)ない姿が見られると思うと死ぬぅ。ってか、大勢に見られるって考える時点でもう無理っす。なんで俺なんすか。」


「お前だから、お前だ。理由はいらねぇだろ?」


「人違いじゃない……かなぁ。」


「はっきり言う。『三大ギルド対抗覇戦』の最後の一人はアナココだ。もう一度言う。ア、ナ、コ、コだ。有無は言わさねぇぞ。」


 魂の抜けているような男が、死に体のまま私の横に並んだ。



「以上、四名。てめぇらの代表として暴れ回ってくるぜ。当日は死ぬ気で応援しろよ! よ、ろ、し、くっ!」



 覇戦に出るのは、ギルマスのリュウジャスの他に、私とプルリューとアナココとなった。

 

 こうして発表の幕は下りた。



 ――――――。

 

 

 そして、代表に選ばれた私達は立ち入り禁止の地下室へとギルマスによって導かれた。普段は封鎖されている道。その特別感に少し高揚しそうだ。



 段々と進んでいく事に空気の違いに気付いていく。何か崇高な力が眠っているような、ただの地下ではない気がしていく。



「着いたぜ。ここがヴァリアントギルドの秘宝――栄光の回転鉄具(ブーメラン)だ。これに手を触れて『我、汝の組合員代表となりてバムの組織、ネヌの組織を倒す所存なり。所以(ゆえん)、代表の我に"悪魔の力"を貸したまえ』と言うんだぜ。分かったか? あ?」


 一々圧が強い。


「この世にゃ、伝説の三つの力があって、それぞれ知恵の神、勇気の天使、力の悪魔があるんだとよ。神は自らの技を全て使える知恵を与え、天使は行動力を与え自らの設定を消し去る、悪魔はパワーを上昇させる力を(まと)わせる。技なんて努力次第で何とかなりそうだし、勇気は意味分かんねぇし、良かったなぁ、お前ら力のヴァリアントギルドで。力こそシンプルイズベストだからな。」


 彼はそう言い終えると「俺が伝えるべきことは伝え終えた。さっさとやってずらかるぞ。早よ、手を触れて言えや」と壁に背を持たれていった。


 プルリューやアナココが触れて詠唱する。


 私もブーメランに触れて――



 我、汝の組合員代表となりてバムの組織、ネヌの組織を倒す所存なり。所以、代表の我に"悪魔の力"を貸したまえ。



 ブーメランが赤色に光り出した。


 不思議な力が溢れ出す。


 

「何……これ。」



 手を放すと、不思議な現象は消えた。


「なんで……なんで、てめぇが悪魔に選ばれてんだ? そのために努力を重ねたっちゅうのに、結局選ばれるのは他人で、俺様じゃねぇのかよ。俺を選んではくれねぇのかよ!」


 強く壁が叩かれた。

 あまりに唐突な展開と音でびっくりしてしまった。



「すまねぇ、気が狂ってたわ。何でもねぇ。気にすんな。それよか、用が終わったらさっさと行くぞ。」


 ギルマスはさっきの熱っぽい口調は消え、冷たいような口調へと変わっていた。


 私達はその場を後にした。



 しかし、一体何だったのだろうか。



 あの時、私の奥底で眠る不思議な力とあのブーメランが一時的にリンクしたような感じがした。


 ……気のせいか。





 三大ギルド対抗覇戦――。


 都市は祭りモード一色になっていた。

 賑わい方が半端ない。


 都市で今一番熱気が激しい場所がバトルコロッセオだった。そこに私達が立つ。


 闘技場――真っ平らなスタジアムの上に立った。私とリュウジャス、プルリュー、死にかけのアナココがそこに立つ。

 そして、カリッジギルドの四人とアルカナギルドの四人もそこに立った。



 観客席の一角にはガラス張りの広々とした特別な席が用意されていた。そこにいかにもな見た目の王様が座る。



 カ、カンッ!



 王様の持った杖が床に強く打ち付けられた。

 それが静寂となる合図となった。



「これより『三大ギルド対抗覇戦』の開幕を宣言する。」

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