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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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63.パーティー最後のピース

「遠慮しとく。俺が入っても活躍できる訳ないだろ……。せいぜい恥(さら)すだけだから。」


「断られちまったなぁ。まっ、俺もパスだぜ。お前さんと役割が被っちまってる。御役(おやく)御免(ごめん)だ。」



 四人目の仲間をどうするか。

 埋めた方が確実にいい。ただ、下手に埋めてパーティーの連携が崩れたら元も子もない。ならば、知ってる人がいい。



「三人一組。これだけは譲れねぇんだ。」「そーだー。そーだー。」「まっ、こればかりは諦めなさい。」



 オーーーン三きょうだいにも断られてしまった。


「僕は別のパーティーの助っ人として呼ばれているので、ごめんなさい。」


 プテラノドンになって、私達を運んでくれる彼もまた断る。


 ギルド内にはもう誘える人はいない。

 ため息が出る。


「それなら外でスカウトしたらどうでしょう?」


 ギルド嬢ナギサの提案。まさに敵に塩を送る提案だ。


 私達は外へと出た。


 その日、成果は上がらなかった。


 

 ――――――。



「【リズム】っ! 【リスン】ッ。さぁ、祭りの番がやってきたぜ。今日は盛り上がるしかねぇだろなぁ。今日は太鼓のリズムに合わせて言霊、心の臓を震わすしかねぇよなぁ?」



 町の一区画がとても騒がしい。

 巨大な山車(だし)を担ぐヴァリアントギルドの力自慢達。その(やぐら)の上にはギルマスのリュウジャスが乗っている。


 太鼓が響き、ラップが流れていく。


「三大ギルド対抗覇戦の二週間前に行われる祭りだ。他の二つも同じように祭りをやってるぜ。」


 出店が立ち並んでいる。


「ねぇねぇ、チョコバナナ食べたいっ!」


 そう言うマユダに財布から小銭を渡す。

 すぐにこの子はチョコバナナを口に頬張った。


「私も何か買おうかな。」


 カステラを購入した。外はサクッとしていて、中はホロッとしている。噛めば噛むほどに優しい甘い味が口の中に広がっていく。


「みんなも食べる?」


「もちろんっす!」


 食べ物をシェアしながらこの祭りを堪能(たんのう)していく。



「まっ、当日はこんなもんじゃねぇけどな。」



 そんな一言に期待が増していく。と思いきや、もし覇戦に出るのなら、楽しめないんじゃ……という結論に至り、期待に(ふた)をした。


「ねぇねぇ、ちょっと食べるっ?」


 虹色のカラフルな綿あめを一口貰った。口の中で強い甘みが広がっていく。



「ヴァリアントギルドは"悪魔の力"を頂く野郎(やろう)共。悪魔に与えられし神具――回転鉄具(ブーメラン)(ごと)し、舞を見せてやる。だよなぁ。野郎共ぉ!」



 山車の方が騒がしい。

 突然、山車が勢いよく回転し始めた。


「何、あれ。」


「ありゃ祭りの花形のブーメランだな。下にいる担ぎ手が力合わせて山車を回転させるんだ。面白れぇだろ。」


 回る山車の上から放たれる紙吹雪。

 まるで色の着いた桜だとか雪だとかが勢いよく舞い散って美しい景色が広がる。


「綺麗――。」


 迫力と賑わい。同時に、可憐な景色。相対する二つの様子に心打たれそうだ。


「こんな祭りがあったんだ。もっと早くに知りたかった。」


「祭りはここだけじゃねぇ。カリッジギルドも同じようにやってる。こことは違う(おこ)し方だ。ついでに見に行ってこいよ。ちなみにアルカナギルドもやってはいるが、場所は都市じゃなくて、南側に進むとある土島(つちしま)の村でやってるから、そこを見に行くんなら一言声かけてくれよな。」


 ピューリと別れて出店の並ぶストリートを進んでいった。


 程よく賑わう祭りに心が浮かれそうになる。


「ってか、こんなのがあるなら早くから教えて欲しかったぁ~。そしたら浴衣(ゆかた)に着替えたのにぃ。」


 まぁ、そんなこと言っても仕方ない。

 いちご飴を食べながら進む。程よい酸味と濃厚な甘みが口の中で混ざっていく。


「サメ釣りしたいっ!」


 マユダもハイテンション。


「どっちが良い商品釣れるか勝負っすよ!」


 ハロミトも同じようにハイテンション。

 二人の楽しそうな姿を見てると、私まで楽しくなってくる。


「私もサメ釣りやろうかな。」



 ――――――。



 山車の上で行われる芝居。

 まるで演劇を見ているみたいだ。


 ヴァリアントギルドが激しくて華々しい祭りとすれば、カリッジギルドは穏やかで可憐な祭りと言った所だろうか。鹿苑寺金閣と慈照寺銀閣ぐらい大きな差がある。


 山車の上に立つ女性が斧を持っている。


「あなたが落としたのは金の斧ですか? 銀の斧ですか?」


 あれ……この展開のお話、聞いたことあるぞ。


「どちらの斧でもございません。落としたのはなーんの変哲もない普通の鉄の斧です。」


「正直なあなたにはこの三つの斧を上げましょう。」


「いえ、鉄の斧以外、貰えません。申し訳ないですから。」


 あ……オリジナリティが出始めた。


「分かりました。では、鉄の斧はわたくしが貰います。その対価として、あなたにはこの宝玉光の斧をお渡ししましょう。」


 斧を受け取る水色の髪の男の子。


「その斧は正直者でお優しい心を持つ方に託したいものでした。悪しき者を退ける力で――魔族を、賊に落ちき者を、ヴァリアントギルドを、浄化するのです!」


 魔族、賊……うんうん。

 そして、ヴァリアント!?


「ついでに、アルカナギルド、アンチギルドも浄化してください。」


 他二つはついでなんだ。どんだけヴァリアントギルドに恨み辛みあるんだ、このギルド……。



 撒き散らされる紙吹雪。

 拍手喝采(かっさい)に包まれた。


「じゃっ、戻ろっか。」


 (きびす)を返した。


 その時、見知った顔に出会った。


「あれ? フェルナじゃん!」


「あっ。」一瞬、どこか隠れるような素振りをしてからすぐに「お久しぶりです」と声をかけ返してきた。


 私達は二人で楽しく話し合った。

 暇になったハロミトとマユダは屋台の輪投げだとか射的だとかを遊びに出かけた。





 祭りも終わり、また日常の賑やかさが広がるヴァリアントギルド。


 そこに一人の来客。


 スッ――。一瞬、静まり返った。


 ザワザワザワ。みんながヒソヒソ声で話していく。


「おい。あの人って確か主忍じゃなかったか。」「今は主忍()めたらしいぞ。」「ってことはギルドに入れるじゃん。じゃあ、ギルドに入りにきたってことか?」


 みんなが恐れながら彼女のことを注視していく。


「あの人って、ギルマスさんよりも強いのかな。」「同じぐらいか少し強いぐらいだろうな。ひとまず言えるのは、相当強ぇ。仲間に入ったらトップ狙えるぞ!」


 ギルド嬢の元で「ギルドに入りたいのですが」と言う彼女。その一人の女性に対して、仲間に誘う人達が周りを囲んだ。

 しかし、全員断られる。


「やっぱり一からパーティーを作りたいのかな。」


 どこからか聞こえたその予想は外れていて、「どこに入るかは既に決めてて……」との声に、さらにざわつきが広がる。


「今、ギルマスパーティーって、ダイセナが抜けたもんな。ということは、その代わりに入るんじゃないか?」「ありえるな。そんなん、今でもギルマスっちゅー鬼がいるのに、さらに鬼を増やすなんて、どれだけ無敵にしたいんだよ。」「あのジュリネのパーティー終わったな。元主忍が相手じゃ手も足も出ないだろ。」


 なぜか諦めムードのザワザワが広がっていた。



 そんな彼女が私達の近くへときた。


 元主忍のフェルナ。実力は相当。もはやギルマスすら引けに取らない強者。


「とりあえず、よろしくお願いします。」


「よろしくね。」「よろしくっす。」「初めまして。お姉ちゃんっ! よろしくっ!」



 凄まじいどよめきがギルド内に広がっていった。

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