79、 いつも通り
お正月
毎年変わらない、もう一つの恒例行事
笑って、食べて、少しだけ照れて──そんな何気ない時間が、いちばん幸せ
毎年の恒例行事となりつつある、たかこちゃんの訪問。
今年は宿題がほとんど無いらしいけど、逆に僕はレポートがたまっている。
だから結局、いつも通りだ。
「いらっしゃい、たかこちゃん、待ってたわよ!」
「あけましておめでとうございます、今年もお世話になります」
たかこちゃんが来ると、母さんがやけに嬉しそうなんだよな。
そういうものなのかな。
面倒だから、さっさと部屋に上がる。
「えー、もう行っちゃうのー? お昼は一緒に食べようね」
息子よりはしゃぐ母親、さむい。
もう慣れたけど。
「おじゃまします……」
滅多に来ないから緊張するらしく、
今日はたかこちゃん、おとなしめ。
「宿題、もう終わったの?」
「っていうか、あんまりなくて。作文的なのはあるけど」
「じゃあ、今日は僕のレポートの調べもの、手伝ってくれる?」
「もちろん」
本とネットを駆使して、調べてもらう。
ほんと優秀。
このまま作成も頼みたいくらい。
「ねえ朱海さん」
「何?」
「今日1日で終わる量?」
「100%無理かな、学園祭の間からため込んでるから」
「そう? じゃあ、明日も来ていい?」
さりげなく、明日の約束。
「うん、助かるよ」
レポートは言い訳だけど、今回はマジでヤバイ。
慣れてくると、必要そうな所を抜き出して、うまくまとめてくれたり。
「ねえ、これどう思う?」
なんて、話し合ったり。
一つレポートができた頃、嬉しそうなノック。
「ごはんですよー」
褒める気はないけど、うちの飯は結構おいしい。
「今日はね、お餅とチョコレートパフェです!」
「ご飯じゃなくない?」
「チョコパ!家で食べられるの?」
母さんが昔、レストランでパフェなんかも作ってたらしい。
僕も数える程しか食べた事ないけど。
今日は特別な日なのか。
「お餅? お雑煮とかですか」
「違うわよー、焼くだけカンタン、ま、待っててねー」
絶対手抜きだな。
でも、その割りにはなかなか美味しくて、僕も大好きだ。
「はーい、お正油、足りなかったらたしてねー」
皿にはフライパンで焼いただけの餅。
正油をかけるだけの、シンプル飯。
心なしか、たかこちゃんは残念そう。
「いただきまーす。……あれ? 美味しい!すっごく美味しい! お餅だけだよね? なんで?」
「でしょー。簡単なのに、忘れられなくなる味なのよー」
どんどん焼いて皿にのせてくれるけど、
そんなに食べて大丈夫かな?
「もう食べられませんー。美味しかったぁ」
「よかった、パフェ作る? すぐできるけど」
「大盛りでお願いします!」
「お腹いっぱいなんじゃないの?」
「パフェは胸に入るんで大丈夫なんです」
「なるほど、いくらでも入りそうだね」
「……ん? どーいう意味?」
「はーい、お待たせー、チョコレートパフェよー」
そんな事を言ってる間にもうできた。早い。
「すっごーい、かわいい!」
「でしょ! 食べて食べて」
お餅は見た目以上にお腹にたまるらしい。
たかこちゃんは本当にお腹いっぱいみたいだった。
「じゃあ、今年もみんなで洗っちゃおっか!」
洗ってる最中に
「すみません……トイレ、お借りします」
たかこちゃん 一時リタイア。
「食べさせすぎちゃったかしら?」
なんて、呑気に皿洗ってる場合じゃないだろ。
「ね、朱海。お嫁さんにするならさ……たかこちゃんみたいな子がよくない?」
又、余計なことを。
「すみません、続きやりますー」
「あのねー、 たかこちゃん今ねー 痛っ!」
毎年、ふんでいる足。今年も踏んでやった。
「一つだけ、国語の宿題があるんだけどね」
たかこちゃんが上目遣いで言う。
「恋愛について原稿用紙2枚以上書く宿題なの。詩でも、ラブレターでも、 形は自由なんだけどねぇ」
原稿用紙を置いてため息をつく。
「恋ってどう書くの?」
「知らない」
「彼氏でしょ?」
「書いたことない」
少し考えてからたこちゃんが笑う。
「じゃあさ 今の会話書いていい?」
「やめて」
即答。
いつも通り。
そして…
明日も、たぶん、いつも通り。




