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碧い航海日誌   作者: 松本朱海|徒然なるままに
続きの話

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78/93

78、 初日の出

新しい一年の始まりは、思い通りじゃなくても大丈夫

ふたりなら笑い話になるから

今年最初の、優しくて温かい朝

今年も初詣。

また一緒に行けることが、心から嬉しい。


今回は新しい試み。

初日の出を眺める会を発足。


遠出も考えたけど、近所のデパートの屋上が開放される、というナイスな情報を仕入れて、そこへ行くことにした。

だから、カウントダウンは家で、家族と。


「めずらしいね。このタイミングでいるなんて」

「朝6時に待ち合わせだから、日付変わったら寝ようと思って」

「早いのねー、健康的」


クリスマスのあとは毎日バイトだったから、

お正月は久しぶりの休み。

疲れてるのかなぁ、すぐに眠れそう。


——そして。


5時半。

あひるの鳴き声の目覚ましが鳴った瞬間、ぱっと目が覚める。


朝だ、さあ行こう。

学校もこのくらいやる気が出るといいのに、なんて思いながら。


5分前に玄関を出ると、人影がこちらに向かって歩いてくる。


「あけ…」


違った。知らない人。


怪訝そうな顔をされて、軽く会釈をしてやり過ごす。

あれ?何か変な感じ。


そのまま坂をのぼり、いつものガードレールにもたれかかる。

メッセージを送って5分。


——返事がない。


どうしたんだろう。

急病…?


少し不安…。 家の前まで行ってみる。

その瞬間。


朱海さんの部屋の電気が、ぱっとついた。

…もしかして、寝坊?


病気とかじゃなければ、いいか。

坂で待つことにしよう。


それにしても、寒い。

ひとりだと寒さが身にしみる。


近くのコンビニに入って、あんまん買おうかな。

24時間営業って素晴らしいと思う。


コンビニのバイトは無理だなぁ。

夜は起きていられる自信がない。

あんまんを二口食べたところで——


「ごめん、寝坊した!!」


息を切らして、朱海さんがやってきた。

昨日、夜までバイトだったんだって。


「いいけどさ、あんまん美味しいし」


急いで来たのが丸わかりで、髪がいつもより少しボサボサ。

許してあげようかなぁ。

でも、もう少しだけ、いじめちゃおうかなぁ。


時計を見ると、日の出まであと5分。


「ごめん、本当」

「じゃあダッシュで、ミルクティー二つ、買ってきて」


ちょっとだけ、不機嫌そうに言ってみる。

本当は心配で家の前まで行ったんだよ。

あんまん片手じゃ、かっこつかないけどさ。


「もう、間に合わないよね…ごめん」

「大丈夫。急ごう、間に合うかも」


食べかけのあんまんと、ミルクティーを持って移動する。


誰も通らない坂の上の道。

ふたり並んで、空を見上げる。


やがて、雲の向こうからオレンジ色の光がにじんだ。


「ちょうどいい!よかったぁ。あけましておめでとう」

「…おめでとう。今年もよろしくね。」


あったかいミルクティーで、小さく乾杯する。


「ここになっちゃって、ごめん」


申し訳なさそうに何度も謝るから、

食べかけのあんまんを、そのまま口に入れてあげた。


「一等席で初日の出見られたよ。 朱海さんのおかげ」


ジャンパーの首元から、白い毛糸が少しのぞいてる。

……使ってくれてる。

それだけで、ぜーんぶ許しちゃう。


「このあとの初詣、行けそう?」

「たこやき、食べ放題にする」

「やったー!!」


この場所からの富士山、わたしは大好きなんだよ。

空気が澄んでいるんだね。

よく見える。


今年はここから始めよう。

私達らしくて、いいじゃない?


今年も、よろしくね

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