78、 初日の出
新しい一年の始まりは、思い通りじゃなくても大丈夫
ふたりなら笑い話になるから
今年最初の、優しくて温かい朝
今年も初詣。
また一緒に行けることが、心から嬉しい。
今回は新しい試み。
初日の出を眺める会を発足。
遠出も考えたけど、近所のデパートの屋上が開放される、というナイスな情報を仕入れて、そこへ行くことにした。
だから、カウントダウンは家で、家族と。
「めずらしいね。このタイミングでいるなんて」
「朝6時に待ち合わせだから、日付変わったら寝ようと思って」
「早いのねー、健康的」
クリスマスのあとは毎日バイトだったから、
お正月は久しぶりの休み。
疲れてるのかなぁ、すぐに眠れそう。
——そして。
5時半。
あひるの鳴き声の目覚ましが鳴った瞬間、ぱっと目が覚める。
朝だ、さあ行こう。
学校もこのくらいやる気が出るといいのに、なんて思いながら。
5分前に玄関を出ると、人影がこちらに向かって歩いてくる。
「あけ…」
違った。知らない人。
怪訝そうな顔をされて、軽く会釈をしてやり過ごす。
あれ?何か変な感じ。
そのまま坂をのぼり、いつものガードレールにもたれかかる。
メッセージを送って5分。
——返事がない。
どうしたんだろう。
急病…?
少し不安…。 家の前まで行ってみる。
その瞬間。
朱海さんの部屋の電気が、ぱっとついた。
…もしかして、寝坊?
病気とかじゃなければ、いいか。
坂で待つことにしよう。
それにしても、寒い。
ひとりだと寒さが身にしみる。
近くのコンビニに入って、あんまん買おうかな。
24時間営業って素晴らしいと思う。
コンビニのバイトは無理だなぁ。
夜は起きていられる自信がない。
あんまんを二口食べたところで——
「ごめん、寝坊した!!」
息を切らして、朱海さんがやってきた。
昨日、夜までバイトだったんだって。
「いいけどさ、あんまん美味しいし」
急いで来たのが丸わかりで、髪がいつもより少しボサボサ。
許してあげようかなぁ。
でも、もう少しだけ、いじめちゃおうかなぁ。
時計を見ると、日の出まであと5分。
「ごめん、本当」
「じゃあダッシュで、ミルクティー二つ、買ってきて」
ちょっとだけ、不機嫌そうに言ってみる。
本当は心配で家の前まで行ったんだよ。
あんまん片手じゃ、かっこつかないけどさ。
「もう、間に合わないよね…ごめん」
「大丈夫。急ごう、間に合うかも」
食べかけのあんまんと、ミルクティーを持って移動する。
誰も通らない坂の上の道。
ふたり並んで、空を見上げる。
やがて、雲の向こうからオレンジ色の光がにじんだ。
「ちょうどいい!よかったぁ。あけましておめでとう」
「…おめでとう。今年もよろしくね。」
あったかいミルクティーで、小さく乾杯する。
「ここになっちゃって、ごめん」
申し訳なさそうに何度も謝るから、
食べかけのあんまんを、そのまま口に入れてあげた。
「一等席で初日の出見られたよ。 朱海さんのおかげ」
ジャンパーの首元から、白い毛糸が少しのぞいてる。
……使ってくれてる。
それだけで、ぜーんぶ許しちゃう。
「このあとの初詣、行けそう?」
「たこやき、食べ放題にする」
「やったー!!」
この場所からの富士山、わたしは大好きなんだよ。
空気が澄んでいるんだね。
よく見える。
今年はここから始めよう。
私達らしくて、いいじゃない?
今年も、よろしくね




