76、 夢の国で
特別な場所で過ごすクリスマス
雨が雪に変わる時
大切な人を思って選んだ贈り物は、どんな高価なものより温かいことを知る
初めて乗ったアトラクションは、とっても楽しかった。
風、香り、本当に空を飛んでるみたい。
「とっても素敵だった! まだ足が揺れてるよー」
わたしが笑うと、朱海さんもほっとしたように笑った。
「待ったかいがあったね」
アトラクションから出ると…雨。
冬だから、とっても冷たい。
「傘、買いに行こうか」
「ねえ、このカバン、ちょっと叩いてみない?」
「ん? なにそれ」
朱海さんが叩くと同時に、中から傘を取り出した。
「でた!四次元ポケット」
「ビスケットも入ってるよ」
朱海さんに傘をさしてあげる。
「背が高い人が持った方がいいよね」
濡れないように傘の中に入るから、いつもより距離が近い。
「少し……歩こうか」
「うん……いいよ」
歩いていると、
ぬいぐるみや耳のついたカチューシャをつけている人が目につく。
子供だけじゃなくて、大人も。
「あ…思い出した。」
上着のポケットから、大事そうに何かをとりだす。
「メリークリスマス」
頭に何か、首に何か、かけてくれた。
これは…
シェリーメイのポシェット!そしてカチューシャ!!
「ど、どうしたの?これ」
買ってる時間はなかったはず。
「実は母さんのなんだ。たかこちゃんにどうぞって。新品じゃなくてごめんね」
「ううん、そんな……ありがとう!嬉しい」
2つを並べてマジマジとながめる。
やさしい茶色のフワフワに、うっすらラメ。
とってもかわいい!大好き!
「実は、今日のチケットも母さんがくれたんだ」
「え、そうなの?」
「2枚あるから使えって」
朱海さんママにまで、プレゼントもらえて、嬉しい。
「似合う?」
「うん、いい感じ」
ゴキゲンで歩く。
雨なんか気にならない。
ダウンジャケットが暑いくらい。
それで、お腹に隠してるマフラーを思い出した。
朱海さんは少し寒そう。
……ちょっとだけ、意地悪しちゃおうかな。
「朱海さん、寒くないですか?」
「少しね。でも大丈夫だよ」
「……寒いですよね?」
「え?あぁ、うん、寒いよね」
よし。
私はまずホカロンを1つ渡した。
「朱海さん、クリスマスプレゼントです」
「ホカロン? ありがとう、あったかいね」
「じゃあ、少しだけかがんでもらえます?」
ちょうど手が届くくらいの高さ。
私はダウンの前を少し開けて、セーターをまくる。
「……え?」
お腹からパッとマフラーを出して、
驚く朱海さんの首に、そっと巻いた。
「メリークリスマス、朱海さん」
驚いた顔が、少しずつ笑顔に変わる。
少し照れた、やさしい目。
「相変わらずびっくり箱だね。ありがとう……あったかいな。手作り?」
「うん、初めて編んだの」
「そう…大事にするよ」
私達はまた歩き出す。
気が付くと、冷たい雨が雪に変わっていた。
「わぁ…」
「雪だね」
夢の国はお化粧を始めた。
真っ白くなるまでいよう。
寒くないね、二人なら。




