71、 試験
夢が動き出す
試験、緊張。
大切な人が「頑張って」と言ってくれるだけで、勇気が湧く
試験当日朝、会えて、良かった。
「…試験の日、送ってもらえませんか?」
別れ際、たかこちゃんが遠慮がちに言った。
「いいよ。何時?」
ふたつ返事。
「ほんと? そのあたりは学園祭準備で忙しいかと」
行くでしょ、絶対。
「頼まれなくても送るつもりだったよ。でも、バイクだからどうしようかなって」
「ううん、バイクがいいの! ありがと、朱海さん」
学園祭の二週間前、十月二十三日。
たかこちゃんの試験当日。
ここ一カ月、毎日のように担当職員に呼び出されている。
授業もお構いなしで、最低でも二時間は拘束される。
もちろん委員会で振り分けるけど、何かあれば、報告は委員長からが原則。
歴代の委員長が、学園祭前に発狂していた理由が良く分かる。
それくらい大変だ。
でも、たかこちゃんも大事。
会えることは、一番の栄養剤。
「ありがとうございます。本当に」
「セーラー服、初めて見たかも」
「へへ、学校、私服なんで。こんなときだけですけどね」
いつもの散歩道。
今日はバイクで走る。
自然につかまる腕が心地いい。
少しだけ、力が強い気がした。
歩いたら一時間以上かかるけど、あっという間。
「風、大丈夫だった?」
「全然、大丈夫!」
バイクから降りて、真っすぐ向き合う。
「ありがと」
「緊張してる?」
「ちょっと。でも朱海さんに会えたから……大丈夫」
「そう? じゃあ、あがらないようにおまじない」
右手を手に取って、お守りを握らせる。
そのまま、お守りに想いを落とす。
僕の代わりに、守ってあげて下さい。
「不安になったら、持つといいよ」
「あ…ありがと。ほんとに…」
「うん、いってらっしゃい」
「じゃあ、行ってくるね!」
名残惜しそうに、手を振りながら歩く。
姿が見えなくなるまで見送った。
今日も間違いなく忙しい。
でも今朝は、元気をもらえたから頑張れそうだ。
さあ、次は、僕の番。




