58、 宿題
新年最初の大仕事。
今年も結局、一人では終わりそうになくて、私はいつもの先生の家を訪ねることになりました。
もちろん、宿題のためです。
たぶん。
新年をむかえて、街が静かになる頃、私はまた、宿題と葛藤することになった。
わかっちゃいるんだけどね。
そして今年も、朱海さんにお世話になる。
……はい、すみません。
毎年恒例になりそうな新年の訪問は、
ちょっと恥ずかしい。
でも、本当は嬉しい。
玄関のチャイムを鳴らすと、今年は朱海さんがドアを開けてくれた。
「いらっしゃい、待ってたよ」
たったそれだけの一言なのに、胸の奥がふんわりして、にやけてしまう自分が恥ずかしい。
「お、お邪魔しまーす」
「今ね、誰もいないんだ。母さんは仕事。お昼に帰ってくるよ」
その言葉が、妙に静かに響いた。
なんか悪い事してるみたいで、ちょっとドキドキする。
…いやいや。宿題。宿題だからね。
「じゃあ、今年もパっと片付けようか」
「はい!先生!」
宿題は好きじゃない。
だけど朱海さんと一緒だと、不思議なくらい楽しい。
なんでかな。
いい感じで進んできたところで、ノックの音。
「二人とも、お昼ごはんできたわよ~」
待ってました!
二人同時に立ち上がるから、思わず顔を見合わせて笑っちゃった。
「進んでる?」
「はい、先生がいいので、順調です」
「よかったわ。今日は、かつ丼よ」
わぁい!かつ丼!
朱海さんママが、ご飯をよそった丼に、
出来立てのカツ煮をふわっとのせてくれる。
湯気まで美味しそう。
「すごい!お店みたい!」
「母さん、とんかつ屋で働いてるんだよ」
「コックさん?すごいね!!」
こんなに美味しいご飯を作っちゃうなんて、本当にすごい。
でもおばさん、疲れてないかな。
「お仕事してきて、またご飯作ってもらって…なんだか、すみません」
「あら、嬉しいわ。たかこちゃんに労ってもらえて。
疲れるけどね、こうして一緒に食べられると、おばさんも楽しいのよ」
その言葉があたたかくて、丼ぶりより先に、胸がいっぱいになる。
こういうとこ、朱海さんにそっくりだ。
「いただきます!」
三人で笑いながら食べるかつ丼は、きっとどこのお店よりも、美味しかった。
「で?今日で終わりそうなの?」
「まぁ、3分の2くらいですかねぇ」
「じゃ、明日はキーマカレーね!」
「明日も来ます!!」
みんなで笑って、そのまま自然にお皿洗い。
「今日は絶対手伝ってくれると思ってたわぁーー痛っ!」
……また足踏まれてる。
毎年恒例になりそうなこのやり取りにも、思わず笑ってしまう。
見上げると、朱海さんがわざとらしく目をそらした。
その一瞬だけ、二人の秘密みたいになった。
明日は何か持ってこようかな。
そうだ。マシュマロがあった。
おやつ、作ってこよう。
ママにズルいって言われちゃうかな。
ううん、ママの分も作ってあげよう。
朱海さんの部屋からは、今日も富士山が綺麗に見えている。
「じゃあ、後半戦行きますか」
「はい。頑張ります」
こんな日が、ずっと続けばいいのに。
そう願ってしまうくらい、私は幸せなんだね。




