56、 愛してるを教えて
好き、は分かる。
でも、愛してる、はまだよく分からない。
だから今日は、少しだけ聞いてみることにした。
クリスマス。
付き合って最初の、ちゃんとしたクリスマス。
お互いに彼氏・彼女宣言をしたので、前よりもっと…
という事は特になく、私たちは、いつも通りだった。
でも、会う度に心の中はドキドキしてる。
そんな感じなのに、また新たな悩みというか、不安というか、宿題が増えたような気がする。
「愛してる」とは、なにか?
クリスマスって、なんとなく“その言葉”を言う日みたいで。
アニメも小説も、それなりに読んでいるし、恋愛の話も友達と普通にするし、色々な事も知ってる。
でも、ちゃんと「朱海さんを愛している」のかどうか。
自信がない。
大好きだし、一緒にいたいし、朱海さんの為に何かしてあげたい。
朱海さんにも好きでいて欲しいし。
友達のちえちゃんが、言うには
「やっぱ大人の関係になるとじゃないの?」
なんだけど、じゃあそれまでは、愛してない、になる。
恋人だから、愛してる…って訳でもないのかなぁ。
付き合ってる=恋人、これはそうだよね。
で、私と朱海さんは…
「おまたせ、待った?」
大好きな彼、登場。
今日も、かっこいい。
見るたびに思う私は…。
「ううん、全然」
今日は駅で待ち合わせ。
バイクも好きだけど、こうして一緒に電車の乗るの、好き。
何も言わないのに、一番前の車両に乗って、二人で景色を独り占めにする。
クリスマスがこんなに楽しみなのは、幸せ。
「クリスマスですね」
「クリスマスだね」
今日は、ちょっと照れて会話が続かない。
周りがラブラブカップルばかりだからね。
私たちも例によらず手をつないだりは、してる。
他の人たちは、腕をくんだり、肩を抱いたり、普段よりイチャイチャ度が高めかなぁ。
クリスマスに染まった街をしばらく散策して、ちょっと大人っぽい夜景を見に行く。
ベンチに座って、夕焼けの時間から、ゆっくり。
「ねえ、朱海さん。大好きと、愛してるは全然違う?」
「え?いつも突然だよね、たかこちゃんは」
「ん~、まぁ、そうだよね」
「僕のことを?好きか愛してるか、かな?」
朱海さん、絶対からかってるでしょぉ…。
ここで「そうです」とは、言いずらいなぁ。
「ん~友達がね、」
「友達?前にコンビニで会った?」
「そうそう、その子がね、彼氏のことを大好きで、とっても大切に思ってるんだけどね。
他の子が、彼氏を愛してるって言うのを聞いて、自分はどうなのかなって。
愛してるって、よくわからないみたいで」
「…愛してる、の方が、重たいかな」
朱海さんは少しだけ遠くを見る。
「自分のことより、相手を先に考える感じ?」
「その人の為なら、我慢とか、犠牲とか。
ただ、相手の事を想う。
好き…は幸せだけど、愛…は時に痛みを伴うような気がする」
「例えば?」
「大好きなキャラクター、これは好き。
ママがたかこちゃんの事を、好きだけど、愛してる、でしょ?」
「男女間の恋愛以外でも成り立つと」
「そう、だね。難しいな。
俺もあんまり考えた事がないかもね。
たかこちゃんは、どう思う?」
「う~ん、関係があったら…かな?」
「どんな関係?」
「肉体関係」
「…即答かよ……」
朱海さんは、その後しばらく何も言わなかった。
ツッコんでくれるかと思ったのに。
思い切って聞いてみたのに、何にも解決しなかったな。
また、リベンジしよう。
私はおとなしく朱海さんの隣に座ったまま、そっと手を握った。
1センチだけ、近づいて。
その距離が、今の私たち。




