51、 目が合わない理由
楽しいはずの時間なのに、少しだけ、いつもと違う距離を感じる。
気づいてしまったら、もう元には戻れないような、そんな感覚。
夏の日に少しだけ大人に近づいた、二人がいた。
去年買った、少し大人っぽい黒い水着。
買い直そうかと思ったけど、けっこう高かったんだよなぁ。
自分に言い訳をして、同じ水着を着た。
今日は朱海さんとプール。
水着のままで遊園地も行けるって、一日で二度おいしいプール。
ちえちゃんが、付き合ってるとか言うから、ちょっとだけ意識しちゃうけど。
朱海さんに会うと、いつもの自分でいられる。
だから、楽しい。
初めての場所だから、更衣室とかよくわからなくて、少し不安になる。
こういう時、女友達と一緒だといいのにな。
ロッカーをでて階段を上ると、そこには。
常夏の海…のようなプール。
波のプールをバックに、ただ立っているだけなのに。
…素敵、絵になってる。
思わず隠し撮りをしてしまった。
「お待たせしました。」
「…とりあえず、場所とろうか」
レジャーシートを敷ける場所を探す。
できればトイレが近い方がいいな。
朱海さんが良さそうな所を決めてくれたので、荷物を置いて、泳ぐ準備!
とはいえ、水着はもう着てるから、すぐに泳げる。
「どこから行く?」
「波のプールもいいけど、あの滑り台、気になるんだけど」
ここは色んな滑り台があって、
二人で滑れるものも多い。
高さも半端じゃない、高い。
「じゃぁ、端から順番に行こうか」
初めは、ただ落下するだけかと思いきや、上から見るとほぼ垂直、お尻のあたりがざわっとする。
「…っっ!」ゴールにたどり着いたものの、すぐには立てない。
…水着がくいこんで。
立ち上がるのに、一瞬ためらう。
…ん…しょっと。
隣で一緒に滑った朱海さんも、
もぞもぞしてる、やっぱ皆なるんだ。
少し安心。
他にも、浮き輪を使ったり、色んな滑り台があって笑いながら楽しく滑った。
でも、何か違和感。
なんだろう?
お昼ごはんは、例のごとく手作り弁当。
「おいしいね」
って、食べてくれるんだけど。
…わかった。
あんまりこっちを見ないんだ。
いつもなら、もっと目が合うのに。
何かあったっけ?
流れるプールでまったり回っていると、
大きなジェットコースターが見えた。
「あれ、乗りません?」
「いいね、行こうか」
ビーチサンダルを履いて乗り場へ向かうと、
腕をつかまれた。
「待って、そのまま行くつもり?」
「はい、すぐそこですよ?」
「ダメ、一回戻ろう」
なんだろう、忘れ物かな。
「はい、これ着て」
渡されたのは、朱海さんの白いTシャツ。
なんで?
「目のやり場に困るから、お願い。朝から、まともに見られないんだけど…」
朱海さん、顔真っ赤。
やっとわかった、今日の違和感。
「たいした凹凸のない体形ですけど?」
「そういう問題じゃないの。いつもより、かなり大人っぽいでしょ」
そんなものなのかな。
でもまぁ、違和感の正体が分かってほっとしたかな。
白い大きなTシャツは、お日さまの匂いがした。




