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碧い航海日誌   作者: 松本朱海|徒然なるままに
続きの話

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48/59

48、 ミニスカート

特別なことをしなくても、一緒にいるだけで楽しい日がある。

春の風と、桜と、たくさんの会話。

少しずつ近づいていく距離。

ふたりで過ごした、あたたかい一日。

「お花見……しない?」

「お花見、します?」


聞いたのは同時だった。


「いいですね」

「どこに行く?」


バイクから降りて、いつもの短い時間の会話。

途中に桜並木が見えたから、思いついた。


「じゃあ、日曜日、10時に」



日曜日、たかこちゃんを迎えに行くと、

珍しくミニスカートに、大きなリュック。


「お弁当作りました!シートもあるから、ゆっくりできます!」


いつものたかこちゃん。

胸元には、この間あげたガラスの靴がキラキラしてる。

そこだけが、少し大人っぽくみえる。


去年、花園を見に来たくぼ地のもっと先に、長い桜並木がある。

せっかくだから、歩いていこうと決めたんだけど、大丈夫かな?


最近は、毎週のダンスの送りと、月に何度か会うようになった。

一緒に勉強したり、出掛けたり。

ペンダント、嫌じゃなかったら付けてこないよな。

これは、もうーー。

期待して、いいのか。


「でね、…朱海さん?聞いてます?」

「あ…、ごめん、妄想してた」

「何それ!なにを考えてたんですかー?」


しまった、余計な事をまた…。


「いや、あの、お弁当、どこで食べようかなあとか。」

「あのね、ここを、まっすぐ行くと、ママの、働いてる病院が、あるんだけど、

そのそばに、広場が、あるんで…」


あちゃ、息切れしてる?


「荷物、貸しなさい。持ってあげるから」

「いえ、悪いので!」


息、荒いじゃないか。

後ろからそっとリュックを持ち上げて、肩から外してあげる。


「…ありがとう、ございます。すごく楽になりました。」


「帰りはバスでもいいけど、せっかくだから、桜の下、歩こうね」

「うん!」


お、復活したな。


それからお互い、学校やバイトの事、楽しい事や、そうじゃない事も話した。

1時間以上歩いただろうか。

病院のそばの広場に着いた。


「着いた!」

「さすがに遠かったね」

「じゃあ、お弁当にしましょう!」


お昼にはまだ早いけど。

一番大きな桜の下に、シートを広げて休憩することにした。


「はい、どうぞ」

「ありがとう、ミルクティ?」

「あたり!美味しいインスタントです!」


それから、ちょっと早いお昼ご飯を食べた。


「全部たかこちゃんが作ったの?」

「はい!早起きしました」


大きなお弁当箱の中には、かわいく盛り付けた唐揚げや、


「このオムレツ美味しいよ」

「…卵焼きです」


「あ~、おにぎり!俵型って、難しいよね!」

「…うさちゃん型のつもりです」


しばらく見つめ合ってから、大笑いした。

こんなやりとりが、たまらなく楽しい。


「あーお腹いっぱい。

…朱海さん!寝転がると、花びら、すごいよ!ほら!!」


腕をひっぱるたかこちゃん。

隣で横になると、空が、桜だらけだった。


「この角度で桜見るの、初めてかも」

「ね!大発見じゃない?すごくいいよね!」


まるで、違う世界。

青いキャンバスに、桜の花びらが散りばめられて。

隣ではたかこちゃんが、落ちてくる花びらを手でつかもうとし…て…。


俺はいそいで起き上がって、脱いだ上着をたかこちゃんのスカートにかけた。

スカート……無防備すぎるだろ!


「朱海さん?」

「寝転がるなら、かけておきなさい」


「大丈夫ですよぉ、中にスパッツ…」

「いいから!」


「…は~い」


俺はため息をついて、空を見上げた。

花びらが、目の前で踊っていた。



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