39、 止まらない夜
同じおみくじを引いて、同じお守りを選んで。
それだけで、もう十分だったのかもしれない。
言葉にしなくても、肩に残るぬくもりが、すべてを教えてくれる。
参拝を終えた境内は、さっきまでのざわめきが嘘みたいに静かだった。
冷たい空気が、どこかやさしい。
おみくじを引く。
結果は言わない。
でも、たかこちゃんがちらっとこちらを見て、小さくうなずいたから、たぶん、同じ。
「じゃあ、これにします」
選んだのは、縁結びのお守り。
同じ形で、色だけ違う。
並べると、ほんの少し照れくさい。
「色違いって、いいですね」
「うん……いいね」
言葉はそれだけで、十分だった。
駅に向かう道も、
ホームも、
電車の中も、
眠らない。
大晦日だけの、特別な電車。
空いている席に座ると、
たかこちゃんは、ほっとしたみたいに息をついた。
「今日は、いっぱい歩きましたね。楽しかったなぁ」
そう言って、窓の外を見たまま、目を閉じた。
まぶたが落ちる、その瞬間。
…あ、と思った時には、もう遅かった。
体が、ゆっくりと傾いてくる。
少しずつ、肩が重くなる。
起こしたほうがいい。
たぶん。
でも、
規則正しい呼吸と、マフラー越しの体温が、それを許してくれなかった。
下りる予定の駅名が、アナウンスで流れる。
動けなかった。
……まあ、いいか。
たかこちゃんは、完全に眠っている。
無防備で、安心しきった顔。
夜の音にまぎれて、小さな寝息が聞こえた。
動かないように、少しだけ姿勢を変える。
俺の肩によりかかる、無邪気な子を起こさないように。
電車は、年をまたいで走り続ける。
今は、このまま。
終点じゃないけど。
ゴールでもないけど。
肩に感じる重みが、選んだ答えだった。
終夜運転の電車は、まだ、止まらない。
この重みから、離れられそうに、ない。




