37、 イブの続き
昨日、少しだけ近づいた距離。
触れた手のぬくもりも、まだ胸の奥に残っていて。
きらきらした街の中で、今日はどこまで近づけるんだろう。
昨日、朱海さんと思いがけず、クリスマスのプレゼント交換をしてしまった。
一緒に手袋を選んで、とっても喜んでくれた。
話してよかったな、心から思う。
それにしても、ふたりで同じことを考えていたなんて…
運命なんて、大げさな言い方だけど。
何もないはずのイブは、とても暖かい日になった。
そして、25日。
なんと今日も一緒に出かけることになった。
やったー!
バイト休んでおいてよかった。
せっかくなので、クリスマスらしいところに行こうと、クリスマスマーケットに行くことになった。
マンガやネットとかでしか見たことない。
あ~楽しみ。
ヘルメットは、とっても暖かで、ふわっと真新しい香りがした。
朱海さんはクラッチが切りやすくて、温かいって。
今日は、いい日になる予感。
会場に着くと、びっくりするほどの、人、人、人。
入場は3時間待ち。
「どうする?このまま待つ?」
待ってもいいけど、この人混みでは、ちょっとね。
「あきらめます?」
近くのベンチに座って、相談タイム。
どうしようか、ここはネットに頼ってみる。
「あれ、クリスマスマーケット、あちこちでやってるみたいですね。」
「ほんとだ、ここより規模は小さいけど、アクセスは悪くないな。
そんなに遠くないし、行ってみる?」
電車だったらすごく時間がかかるのに、バイクで30分もしないで着いた。
もちろん混んではいたけれど、ゆっくり歩けるくらいだし、何より素敵な出店がたくさんある。
「すごい!ぜーんぶクリスマスのお店だぁ」
まだ明るいけど、イルミネーションがキラキラ輝いてて、みんなとっても幸せそうで。
「さあ、どこから行く?」
「全部!はじから順番に、全部見たい!」
ちいさなツリーが沢山あるお店、かわいいマフラーや手袋のお店。
それに、美味しそうなピザ!
全部のお店を回った頃には、空が夕焼けに染まっていた。
「たかこちゃん、門限は?」
「今夜はパパとママ、デートなんだそうです。できれば、朱海さんと夕飯たべてきたらって」
「じゃぁ、まだ大丈夫だね。実は、ここの上に昇りたくてさ」
見上げると、星まで届きそうなタワーが光ってた。
「いいですね、空、上ってみたいです」
こっちは、もっと混んでいて、エレベーターもぎゅうぎゅう詰めだったけど、私を壁際に進ませて、朱海さんが守ってくれた。
大きなエレベーターで、どんどん人が入ってきて押される。
密着してる……体温がわかるくらい。
下から朱海さんを見上げる。
とっても綺麗。
まつげ長い。
「たかこちゃん…」
視線に気づいて、朱海さんがわたしを見おろす。
「朱海さん…」
扉が閉まって、エレベーターが動き出した。
手を変な位置に置いていたので、朱海さんの胸にしがみついてしまった。
もちろん、わざとではない。
朱海さんが何か言おうと、唇がうごいたのと同時に、
「ガラガラへーびがやってくる~♪
お腹をすかせてやってくる~♫」
今夜にはとても不似合いな曲がながれて、大爆笑になった。




