36、 すれ違う想い
プレゼントのはずだった想いは、思いがけない形でこぼれてしまう。
言葉にするつもりなんてなかったのに、ふとした一言で、心が揺れて。
同じことを考えていたはずなのに、ほんの少しだけ、すれ違う。
それでも――確かにそこにあったのは、同じ気持ち。
たかこちゃんが、話があるようなので、店内の休憩スペースで聞くことにした。
「ここでも大丈夫?」
あまり込み入った話なら、場所を変えたほうがいいかもしれない。
まさか、ヘルメットはいらない、とか。
せっかくプレゼントしようと思っていたのに。
それとも、バイクで送るのが嫌になったとか……。
……話を聞こうなんて、失敗だったかな。
「あのですね、実はですね…」
たかこちゃんは、いつもより少し早口で、つらつらと話し始めた。
ぼくに内緒で革手袋をプレゼントしたいと、四苦八苦していたこと。
どうしてそう思ったのか、ということも。
途中で、ひとつだけ、引っかかる言葉があった。
「大好きな朱海さんに、プレゼントしたくて、」
――その瞬間、思考が止まった。
正直、
そのあとの話は、ほとんど耳に入っていない。
大好きな朱海さん。
その言葉だけが、頭の中で、何度も繰り返される。
「朱海さん、聞いてます?」
心配そうに、目の前でのぞきこむたかこちゃん。
そこでようやく、我に返った。
……顔が、近い。
一瞬、別の世界に引き込まれそうになって。
もしかして――
いや、待て。
ぼくは、どうなんだ。
「……というわけなんですけど。大丈夫ですか?なんだか、顔、赤いですよ?」
今は、とにかく落ち着こう。
「えっとね、たかこちゃん。
実は、ヘルメットをクリスマスプレゼントにしようと思ってたんだ」
内緒で買うのは難しいから、せめて早く渡したくて――そう思って。
言いながら、また少し顔が熱くなる。
「じゃあ、ふたりで同じことを考えていたんですか…」
驚いたように、両手で口元を覆うたかこちゃん。
「うん。だから、ぼくも――」
思わず、その手を取ってしまう。
「好きなんだ」
指先が触れたまま、同じ想いを、そっと重ねる。
たかこちゃんも、ぎゅっと握り返してくる。
「よかった!革手袋好きですよね!早速一緒に選びましょう!」
……ずるっ。
肩にかけていたジャンパーが、
そのまま落ちた。




