30、 視線
去年と同じ学園祭。
だけど、少しだけ違う景色の中で、
止まっていたはずの気持ちが、また揺れ始める。
「さあ、行くわよ!」
ママに強引に誘われて学園祭に来た。
去年も来た、同じ場所。
でも、今年はなんだか色あせて見える。
気持ちの違いなんだろうけどね。
たいして興味もない。
お笑いライブが見たいママと、家でだらだらしたい私。
あ~、めんどくさい…。
「そういえば、ダンス、また始めるんでしょ?」
そう、心の傷を癒す…為かどうか、
わからないけど、又レッスンに行くことにした。
ママは大賛成。
今まで遊びに忙しくてお休みしてたけど、
フラれた今は時間がたっぷりある。
また電車で通うかな。
あの景色をもう一度みるのもいいなぁ。
「あらぁ、朱海くんママじゃないのぉ♡」
あけ…みさん!?の…ママか……
「あらぁ、奇遇ねぇ、たかこちゃんもこんにちはぁ♡」
どうやら、朱海さんのママはしんちゃん先輩のママとお笑いライブを見に来たらしい。
この3人、知り合いだったのね。
まあ、いいけど。
「でもねぇ、朱海の手違いでチケットが手に入らなかったのよぉ。」
「だから、事前購入しろっていったでしょうが」
ん…聞き覚えのあるこの声
「朱海さん!」
「え…たかこちゃん?なんで?」
私たちの混乱をよそに、ママ達の弾丸トークはつづく。
「えー、チケットないのぉ?」
ママと目が合う。
じゃあ、別に私は行かなくてもいいし、ママもそう思ってるみたいなので。
「じゃあ、私のチケット、使って下さい。」
「えー!でも悪いわよ、ねぇ。」
「いいの?たかこ?」
…なんだか、嬉しそうなママ。
別にいいよってば。
「はい、ブラブラしたいなーって思ってたので、ちょうどいいです。」
「あらぁ、悪いわねぇ、おばさん助かるわ。じゃあさ、朱海に案内してもらいなさいよ!
ねっ!朱海もお昼休みでしょ!!」
みんなの視線が朱海さんに集まる。
「…まぁ、今から昼休憩行くんだけど…」
「ありがと、朱海くん!よく知らないとこでずっと一人ってのもね、気になるしね!
みーくんが一緒ならおばさん、安心だわぁ。ね!たかこ!」
今度は私に視線が集まる。
うっ、視線が…いたい…。
なんか話がどんどん進むなぁ。
朱海さんに迷惑かけちゃうのは申し訳ないからなぁ。
「あの~、私はひと」
言いかけたところで、
「みーくん」
誰だろ?
朱海さんの知り合い、大学生だよね。
同じジャンパーだから、委員会の人。
長くて真っ直ぐなロングヘア、意志の強そうな大きな瞳。
…なんか、すごーく見られてる?
でも、知らない人だよね。
何もしていないはずなんだけどな…。
私は思わず、朱海さんのうしろに一歩下がった。




