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碧い航海日誌   作者: 松本朱海|徒然なるままに
続きの話

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23、 友達の頼み

知らないことを知るのは、楽しい。

でも――

知らなくてもよかったことも、あるのかもしれない。

友達に頼まれた、ちょっとしたおつかい。

その先にあるものを、この時の私はまだ知らない。

バイトは楽しかった。

先輩は厳しいし、仕事は忙しかったけど、働いたらお給料がもらえるなんて、夢のようだった。


バイトを始めてよくわかったことは、私は何も知らないという事。


「山椒くれる?」

と、お客さんに言われても、何のことかわからない。

ビールに瓶と生があることも初めて知った。

知らないことを知るのはとても楽しかった。


でも、やっぱり私は人見知りであまりしゃべらず黙々と働いているタイプだった。

楽しくおしゃべりしている人がうらやましい…とはすごく思った。


いつものようにひたすら働いていると、

「まつやん?」

小学校の時のあだ名で呼ばれて、びっくりした。


振り向くと

「え?寺田?」

なんと、小学校の時同じクラスだったお友達。


「え~、なんでいるの~?」

「こっちのセリフだって!!」


すごい偶然。

まあ、地元だしって言えばその通りなんだけど。

知らない人だらけの中で、この味方はものすごく頼りになった。


寺田は私より背も高くて、大人っぽくて、仕事もできるし話も面白い。

私が憧れちゃう同級生だった。


バイトの後、お茶に誘われた。

夜遅いから、ママは(っていうか多分本当はパパが)

いい顔しなかったけれど、この時間はすごく楽しかった。


色んな話をして、知らないことを聞くのがとても楽しかった。

でも、授業中に居眠りすることが増えた。

トップに近い成績で入学した私だったけど、重力に引かれるように成績はどんどん落ちていった。


夏休み前、寺田に手紙を頼まれた。

調理場の彼氏に渡してほしいって。

ラブレター?ってやつ?


なにかあるのか、ないのか。

彼氏というものを全く知らない私は、なにも気にならず、文通かー、仲がいいんだなー。

と思って届けた。


何度目かの時、初めて

「返事が欲しいって伝えて」

と、寺田に頼まれた。


「寺田からですー、返事くださいだそうです。」

もう慣れたもので、彼氏さんも私を認識してくれている。


「はいよ、そこ置いといて。コーラんとこ、それ飲んでいいから、気にしないで。」

「ありがとうございまーす。」


7月も下旬で、調理場はとくに暑い。

ホールでのバイトの後で喉もカラカラ。

遠慮なくいただいた。


「あ~、おいしー!ごちそうさまでーす!おさきでーす!」

用事がすんだので早く帰ってお風呂にはいろうと、

自転車にまたがって、気がついた。


ん?

気にしないで?

あれ?飲んじゃまずかったの?

なにを?賞味期限?


お腹は痛くないし、少しくらい古いものを食べても大丈夫。

多分。

ま、いっかー。


遅くなるとママに怒られる。

面倒くさいから早く帰ろー。


調理場は暑かったけれど、夜道でうける風は、涼しくて気持ちよかった。



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