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碧い航海日誌   作者: 松本朱海|徒然なるままに
最初の話

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16、 息抜き

受験の結果に悩む朱海くんとたかこちゃん。

そんな二人が、少しだけ遠回りをして歩いた冬の午後のお話。

名前も知らない花が咲く、小さなくぼ地。

温かいミルクティと、ちょっとした約束。

ほんの少しの息抜きが、また前に進む力になることもある。

……びっくりした。


朱海さん、急に笑い出すんだもの。


久しぶりの朱海さんとのお出かけ。

歩きだから行けるところは限られているけれど、

いくつか行ってみたいところがあった。

綺麗なお花が咲いている場所。

名前は知らない。


朱海さんに場所を説明するのは難しくて、

とにかく行ってみようということになった。


「農業用地…だったかな、確か。

隣の町の向こうまで、ずっと畑が続いていて、家や建物を建てちゃいけないんだよ、ここは。」


朱海さん、物知りー。

そういえば小さい時に芋ほりで来たことがある。

みんなで歩いて、すごく遠くて嫌になちゃったけれど、

今歩いてみるとたいしたことはない。

まぁ、どこまで行くかだけど。


20分くらい歩いただろうか。

小高い段差を上るとそこにあった。


桜ではない、梅なのか桃なのか、わからない。

でも、春の匂いがした。

看板も見当たらず、他には誰もいない。

ただ、そこで立派に咲いていた。


「すごいな、よく知ってたね。」

「ここはくぼ地なんで、道路からよく見えるんです。

見ると思い出すんですけど、いつも忘れてしまって。」


桜みたいな豪華さはないけど、綺麗。

ちょっとした公園くらいの広さはあると思う。


近くに自動販売機があったので、朱海さんがミルクティを買ってくれた。


「はい、熱いから気を付けてね」


いつもの朱海さんだ。

二人で乾杯をした、大人がやるみたいに。


「あらためて、合格おめでとう、たかこちゃん」

「ありがとうございます!」


朱海さんがうまくいってないみたいだから、

合格とか受験の話はやめようと思ってたんだけど、


「あのね、受験、まだ終わってないんだ。」

「え?」

「この間のテストで良い結果がでなくてね。

どうしようか迷ってたんだけど、この後の二次募集を受けようと思う。」


そっか、じゃあ、又しばらくは遊べないのね。


「うん、追い込みがしばらく続くけど、週末、図書館に行かない?

期末テスト、あるでしょ?」


あれ?家で猛勉強じゃないの?


「あぁ、そうでした。勉強するつもりなかったんですけど。」

「まあ、その日くらいは、いいじゃない。」


一緒に?…じゃあね、じゃあね、


「じゃあ、ご褒美にハッピーセット、ご馳走してくれます?」

「うん、もちろん、いいよ。たくさん笑わせてもらったからね。」


やった!

ハッピーセット!…じゃない、一緒に!

…勉強かぁ…、まぁ、いっか。


「あのね、朱海さん、私ね、」

「ん?なあに?」


あ…、近。

朱海さん、背が高いから、覗き込まれるとすごく近くなるんだ。


「なんだっけ、忘れちゃった。」

「なにそれ!」


朱海さん、今日は笑い上戸みたい。


「寒くなってきたな。そろそろ帰ろうか。」


もうそんな時間か。

冬の午後は短い。


「じゃあ、行こうか。」


朱海さんが手を出してくれた。


久しぶりだなぁ。

私よりも大きくて、温かい手。


帰り道、誰もいない道を、

私たちは手をつないで歩いた。



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