表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碧い航海日誌   作者: 松本朱海|徒然なるままに
最初の話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/38

15、 朱海くんの受験

順調に見えていた進路が、思いがけず行き詰まってしまうことがある。

そんな時、ふとした出会いや、誰かのさりげない優しさが、

もう一歩だけ前に進む力をくれるのかもしれない。


八方塞がり、っていうのかな。

正直こうなるとは思っていなかった。


受けた大学は4つ。


一番行きたい所と、同レベルの所、

それよりランクが上の大学、

それよりランクを下げた学校、滑り止め。


結果、滑り止めは合格。

他の三つはからっきしだった、完敗。


ただ、第一志望の大学から手紙が来た。

二年間姉妹校に通えば、

三年から編入させてくれるという。

しかし、場所が飛行機で2時間…無理だろ。


滑り止めに行くか。

第一志望に三年から編入するか。

でも、一人暮らしはともかく…遠すぎる。

行きたくない。

いや、以前の俺だったら行ったかもしれない。

でも今は、ここを離れたくない。


もともと勉強は好きではなかった。

ただ、行きたい学校があるから、頑張れた。

浪人して受け直すか、滑り止めに行くか。


でも、滑り止めの大学も遠い。

片道電車とバスで2時間半、

毎日ではないとはいえ、十分迷う距離だ。

つまり、どこも行きたくない。

でも、もう1年勉強する気力も無い。

あー、困った。


「朱海ー!コンビニで食パン買ってきてくれないー?」


あー面倒くさい。

何もしたくない。


ついでに散歩でもしてきなさいと、

無理やり1000円渡された。

気を使ってくれてるんだろう。

とりあえず、コンビニに行くことにした。


少し歩いて、

眺めの良い坂を下りるとコンビニがある。

俺はこの坂が好きだ。

坂の頂上からは富士山が良く見える。

ビルや橋の上でもないのになかなか大きくて。


ガードレールに腰かけて青い富士を見る。


…きれいだな。

こんなにじっくり見るのは久しぶりだ。


知らない誰かとすれ違う。

知らない方がいい、誰とも話したくない。


雲ひとつない空を見上げて、

大きなため息をつく。


「…朱海さん?なんでここに?」


…知ってる声、

でも、今一番、聞きたいのに、

会いたくない声。


「たかこちゃん…!なんで?」


同じ町内とはいえ、

そうそう偶然に会えたことはない。

まさかここで会えるとは思わなかった。


「あのね、ここから富士山がきれいに見えるんだよ。」


たかこちゃんは少しだけ離れて並ぶ。


「本当だ、綺麗ですね。」


何もしゃべる気にならなくて、しばらく黙っていた。

さすがに悪いな…もう行こう。


「じゃあ…またね。」


行こうとすると、腕をつかまれた、両手で。


「あの…時間、ないですか?」


時間はあるけど、気力がね。


「実は、コンビニでお使いを頼まれててね。

そんなに急いでいる訳ではないんだけどさ。」


「じゃああの、これを」


白い紙袋?神社の袋。


「あの、ポストに入れに行くところだったんですけど!

まさかここで会えるとは思っていなくて…、それで…」


中を開けると、メモと、朱色の…お守り?

そのお守りには大きく

「縁結び守」

と書いてあった。


「これを?俺に…?」


「はい!さっき神社で頂いてきました!

受験、頑張ってください!応援してます!」


「合格祈願……!?ふっ、…あっはっはっははは…」


キョトンとするたかこちゃん。

これは、気づいていないな、絶対。

寒い中、あの神社まで行ってくれたんだよね、ひとりで。


「あのね、少し散歩しようかと思ってたんだ。

良かったら、どう?一緒に。」


「はい!是非!」


何だか、悩むのがバカらしくなってしまった。

そういえば、高校合格おめでとうを、まだ言っていない。

温かいミルクティを飲みながら乾杯しよう。


そして、二次募集を受けよう。

ダメなら三次でも。


このお守がきっと、

縁を結んでくれる気がする。


あきらめるのは、まだ、早い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ