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投身  作者: 梅子


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6/10

春寒

 美有は、その言葉を聞くなり、奏人に背を向けて、

「もう嫌…」

と言った。奏人は、その背中から、美有を抱いて、

「美有、僕、好きな人なんかできそうにない。美有しか、見えない。」

と言う。

 美有が無視するので、奏人はやめた。でも、その日以降、マッサージがひどく物足りなく思える。ネットで調べたことや、先輩から聞くいろんなことをやってみたい、もっと気持ち良くなりたい、と思っている。けれど、美有は、マッサージ自体も嫌がるようになって、「今日、生理だから…」とか、「体調悪いから…」とか、拒絶してくる。奏人は、「美有…」と手を引いたり、抱き着いたりするが、最後は不機嫌になって、「もういいよっ!」と部屋を出て行く。

 奏人は、美有をあえて無視したり、お母さんの前で、美有に意地悪したり、すごく陰険になった。美有は、部屋に引きこもりがちになった。しかし、それに耐えきれないのは、奏人の方だった。

 奏人は、真夜中に、部屋に忍び込んできて、

「ごめん、美有…ごめん…こんなことしたくないんだ…本当にごめん」

と、大泣きしてくる。

「美有…もう、僕、関わらないから…許して…嫌いにならないで…」

美有は、

「もう、マッサージは、しない…」

と言った。「自分でしな。」

奏人は、泣きながら、

「いつか、僕が大人になったら、許してくれる?」

と聞いた。美有は、

「大人になっても…大人になったら、余計…だめだよ」

と、背を向けた。

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