直視
しばらく、こんな関係が続いた。奏人は、いつの間にか成績優秀になってきた。今まで何の興味もない勉強だったけど、座って聞いていればなんてことはない。お母さんは喜んで、「もう、精神科はやめましょうか。」と、明るく言った。
美有は、「奏人、すごいね。」と言った。
「何で?」
「成績。」
「美有のおかげ。」
「えっ?」
「美有と一緒にいれば大丈夫!!」
「…。これからも続けるの?」
「えっ?」
「これを…。」
奏人は、焦って聞き返した。
「マッサージのこと?」
「そう…」
「美有は、やめたいの…?」
「……。」
「えっ、やめたいの!?何で!?」
「こんなこと続けられない…」
奏人は、ベッドから飛び出して、「美有…」と、顔をじっと見つめた。やめるなんで嘘だよね、と目で訴えた。しかし、美有は、目を伏せた。
「何で?何でよ!?いいじゃん!!」
「だって、私たち…とのかく、おかしいじゃん!」
下を向く美有に、奏人は、頭に血が上りながら言った。
「赤ちゃんのことだろ?赤ちゃんができないか、心配なんでしょ!?臆病者!!」
美有は、布団にくるまって何も言わない。
「美有!!ずるいぞ!!」
奏人は、美有の布団を掴んで投げ捨てると、抱き着いて、
「お願い…美有…続けよう…。美有…お願い…」
と言ってくる。
「じゃあ、分かったよ。」
美有は、ようやく口を開いて、そう言った。
「……。」
「奏人が好きな人できるまで、やってあげる。」
「…。好きな人?」
「そう。」
「何で?」
「好きな人とするんだよ、本当は…」
「ぼ、僕…美有が…」
「やめよう。決まったことだから、ちゃんとする。」




