第3話 決意する朝、なんかすごい道具
小鳥のさえずりで気持ちよく目覚めたラークは簡単に身支度を整えて、帝都魔法学園への入学を決意したことをグリューナクに報告しに行った。
「あ、おはようございますグリューナクさん。朝早くにすみません。すぐに伝えたいことがありまして…」
ラークの姿を見たグリューナクはさわやかな笑顔でラークのもとに駆け寄ってきた。
「おはよう!ラーク!今日もいい天気だね。素晴らしい祭り日和になりそうだ。朝早くから私に伝えたいこと…もしかして、帝都魔法学園への入学を決心したのかな?」
ラークは気合のこもった目で頷く。
「おじさんもおばさんも俺が入学することを勧めてくれて、俺自身もやりたいことのために魔法学園に入学することが一番良いと思いました。ですのでグリューナクさん。俺、帝都魔法学園に入学します!」
グリューナクはその言葉を聞いてより一層明るい笑顔になった。
「おお!入学を決断してくれたのかラーク!ならこのことは帝都魔法学園に連絡しておくよ。ああ、あと、次の候補者のもとに行く予定だった第四航空部隊には一報を入れておかないとな」
そういうとグリューナクは部下に命じて台形の土台に水晶玉が固定されているような形の謎の道具を持ってこさせた。
「あの~、グリューナクさん。その水晶玉みたいなやつって何ですか?」
(あれ?そういえば、その水晶玉みたいなやつの土台についている紋章、どっかで見たような…)
ラークはそれがなんであるのか気になるようでしきりに覗きつつ、何かを思い出しそうで思い出せないもどかしさでもやもやしているとグリューナクが水晶玉について説明してくれた。
「ああ、これが気になるのかい?これは『遠方通信水晶』という名前の古代遺物だ。これがあればどんなに遠くにいる人にも顔と顔とを合わせて話すことができるんだ。我々の帝国にも似たような魔道具はあるが、あれとは違って魔力消費ゼロで動かすことができるうえに、映像の鮮明さも格段に上の優れものさ。しかも、どんなに乱暴に扱っても傷一つつかないすごいものなんだ。ただ、古代遺物はダンジョンなどから手に入れるしか方法がないから貴重品であることに間違いはないけどね」
そう言うとグリューナクは古代遺物を起動させ、手をかざすとけだるそうな顔をした鎧を着た女性の姿が空中に浮きあがるようにして映し出された。
「第一部隊隊長グリューナク・ベルムント。第四航空部隊隊長ファリス・ガランドールに伝令。成人抽選の当選者が入学を決断した。ゆえに伝令の任務は完了。第四航空部隊への出動指令は撤回された」
グリューナクが端的に伝えると映像の向こうの女性は大あくびをしながら返答した。
「ふぁーい、第四航空部隊隊長ファリス・ガランドール了解~…あ、お前ら出動無くなったから酒もってこーい。あ、ヤベ、通信まだ切れてなかったブツッ」
なんだかとんでもなくルーズな部隊長もいるなあと思っていたラークだったが、グリューナクは特に顔色を変えることもなく操作を続け、別の人が映し出された。
「こちら帝国騎士第一部隊隊長グリューナク・ベルムントです。突然の通信申し訳ございません。成人抽選に当選した方が入学を希望されたことをここに報告いたします」
その報告に反応したのは丸眼鏡をかけ、銀髪で短く整えられた髪を持ち、内からあふれ出る気品の良さを隠すことのできない初老の女性であった。
「はい、帝都魔法学園学園長のミラ・トロパゴスです。報告ご苦労様でした。成人抽選で入学される方の入学を心待ちにしております。…おや?グリューナク殿、貴殿の隣にいるそちらの青年の方はどなたかしら?」
ミラ学園長はラークの存在に気が付いたようだ。その言葉を聞いたグリューナクはラークを水晶の前に進みださせた。
「ミラ学園長。この青年が今回の入学者です!町のみんなから愛される好青年ですよ」
ラークは少し照れながら頭を掻いて自己紹介をし始める。
「あ、どうも。初めまして。ラークと言います。ラムアの町に住むごく普通の…いや、[魔力量]は9で[魔力質]は13しかない落ちこぼれです。ついでに言うと魔法関係のスキルは初級魔法の『ファイアボール』しか覚えていません。ですが、せっかく帝都魔法学園に入学するチャンスを手したので全力で、死に物狂いで食らいついて頑張ります!よろしくお願いします!」
その力強い言葉を聞いていたミラ学園長は優しく微笑み歓迎の意を見せた。
「はい、ラークさんですね。私はミラ・トロパゴス。この学園で学園長をしています。君のような熱心な生徒さんは大歓迎ですよ。授業や実習について行くのは大変かもしれませんが、あなたが諦めない限り私たち教職員もあなたのことを見捨てないことをここに誓います。ですので、安心して食らいついてきてくださいね。学園で会えることを楽しみに待っています。では、ごきげんよう」
ミラ学園長がそう言うと映像はスッと消え、普通の水晶玉に戻った。それを確認したグリューナクは部下に遠方通信水晶を運ばせ、自身はラークの方をポンポンと叩いた。
「ミラ学園長があれほど興味を示されるなんて。君は恵まれているな。さて、改めて言わせてもらうよ。ラーク、帝都魔法学園への入学おめでとう!心から君の活躍を期待しているよ。帝都に移動するのは芽吹きの祭りが終わってからだ。だから、あと2日ある祭りを存分に楽しもうじゃないか!」
グリューナクはその言葉と表情からわかるくらい芽吹きの祭りを楽しみにしているようだ。そんな様子を見たラークは自分も祭りを楽しもうと心に決め、祭りの2日目を全力で楽しんだ。
「シュリィン…!シュリィン…!」とまるで何かを研ぐような金属音が茂みの中から夜風に紛れてかすかに響く。町の人どころか第一部隊の精鋭たちすらも気が付かないほど小さな音だった。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
続きが気になると思ってくださったら、下部のブックマークに追加や評価で応援していただけると、執筆の励みになります!




