エルマーの案件 エピソード2(全4回)
魔王の妻 ラセツ。
小顔で美しく、しなやかな筋肉がある。
かつては魔王とともに、異民族との
戦いに身を投じたこともあった。
回復魔法に長けており、
主に後方支援で活躍した。
ラセツの回復魔法なら、
魔王のお腹も完治させられる。
しかし、その回復魔法と魔王の結界術は、
非常に相性が悪かった。
治療を受ければ、魔王は約1年間、
結界術を使えなくなってしまうのだ。
困った。非常に困った。魔王は考えた。
自分には息子がいる。
600歳の息子だ。
仕方ない。息子に結界術を任せよう。
問題は…
おおいにある!
息子には戦から
遠いところで育って欲しいという、
魔王夫妻の教育方針である。
『争わない!』
『のびのび!』
『楽しく学ぼう!』
これを徹底してきた。
その結果、息子は自由に育った。
魔法まで自由に育った。
正直、魔法の精度がひどい。
「結界術がなくなると困る…かな?」
魔王はそれとなく、ドラゴンたちへ聞いた。
『『うん!!』』
ドラゴン全員が頷く。
「だよね〜。ボリスく〜ん、ちょっと
来てぇ〜」
ボリスと魔王だけになった瞬間、
「これこれ、こういう理由なんだけどぉ!
どうしよう!ボリスくん!?」
魔王、この星に来てから、
初めての泣き言。
するとボリスが言った。
「あ!すごい知恵とアイデアを持ってる人、
知ってる!」
「だれ!?」
「エルマーくんって言います」
「ぜひ、連れてきて
くださいませんかぁぁぁぁぁ!!?」
そして現在に至る。
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「なるほど」
エルマーは言った。
「最後の方がだいぶ軽いノリでしたけど、
だいたい把握しました」
そう言って、
ホットアップルティーをひと口飲む。
美味しい。
これも魔王が作ったのだろうか。
魔王は故郷の星で、科学と魔法を
組み合わせる研究者だった。
その豊富な知識と技術は、そらいろ高原の
暮らしを大きく変えたという。
エルマーには、仕組みさえ
理解できないものもある。
そんな魔王が、自分の知恵を
必要としている。
少し、緊張してきた。
「それでは」
ベッドに横たわったままの魔王が言った。
「今から息子を呼びますので、あの子の
魔法を見て、何かアイデアをください」
そして奥の部屋へ向かって叫ぶ。
「おーい、コマオー!」
エルマーは期待した。
魔法の精度が低いとはいえ、600歳。
人間の何倍も長く生きている。
それだけの経験があれば、
何かしらの可能性はあるはずだ。
「は、はい! お父さん!
今、行きます!」
奥の部屋から返事が聞こえた。
カポッ、カポッ、カポッ!
少し間の抜けた足音が近づいてくる。
そして、エルマーの目の前で止まった。
両肩には、大きく尖った肩パッド。
長いマントは、首元の事務用クリップで
留めている。
足元には、少し大きめのブーツ。
「はじめまして!」
コマオは胸を張った。
「コマオです!」
人間でいうなら…
六歳くらい。
完全なる魔王コスプレである。
「ちいさーーーーーい!!」
エルマー。
「いつ見ても、
かわいいーーーーー!!」
ボリス。
二つの叫び声が、
ログハウスいっぱいに響いた。




