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5-1

短いエピソードと連続投稿します(2/2)

 メビアのトドロト事務所。医者に黙ってこっそりと病院を抜け出した四人は、事務所で最後の準備を整えていた。

 特にセーリッシュとダヤンについては、その身体にサポートの為にと包帯などを巻いていた。一応セーリッシュが魔法で回復させてはいたが、防御結界にしろ治療魔法にしろ、セーリッシュの得意分野ではない。治療効果を少しでも高める為に、魔法以外の治療すなわち包帯やら薬やらを用いているのだった。

 と、事務所の奥のドアからナナセが頭をかきながら現れた。


「一応連絡したが、ギルドは大して動けないらしい」

「え? だって町中にゴブリンが現れるんですよっ?!」


 ナナセの声にダヤンが驚きの声を上げた。そう、ナナセが突き止めたハーディの次の目的の場所。それはメビアの中心街にあるとある会社の倉庫だった。もしここでスタンピードが始まってしまえば、それはソルケ村など比較にならない程の代人数が犠牲になることは想像に難くない。

 それを知っていたダヤンは、ギルドがその危険性を認識していないのか、と驚愕したのだ。ナナセは「そういうな」とたしなめるようにダヤンに言った。


「まず、ギルドの主戦力はソルケ村の方に行ってしまっている。すぐに取って返せる場所でもない」

「それは……そうですが」

「あと、どうしたって証拠が無いからな。少なくなっているギルドのメンバーを集中させる、という訳にもいかないみたい」


 ナナセの操作能力に絶大な信頼を寄せているアルカ達と違って、ギルドを説得するにはそれなりの物的証拠というものが必要になる。それが現時点ではどうしても欠けていたのだ。


「でもまた大群が現れたら僕らだけじゃ――」

「慰めじゃないが、それは起きない可能性の方が高いと思っている」

「え?」

「ハーディは実験だと言ったんだろ? だったらスタンピードを起こして沢山のゴブリンに骸装具をばらまくってのはもう実験済みなんだよな。だから次やるとしたらまた別の事だと思う」

「別の事っていうと――もしかして」

「恐らくもっと強大なゴブリンに、強大な武器を持たせると思う。ゴブリンジェネラルよりも強力な奴だ」


 それは十分に考えられる事だった。聞いてたアルカも身が凍るような思いがする。自分の攻撃が全く通じなかったゴブリンジェネラルよりも、更に上位のゴブリンが出てくる可能性が高いというのだ。

 しかも実際には、それより先に対決しなければならない相手がいる――。


「――もう一度聞く。ハーディに勝てるんだな?」

「はい。さっきは色々あって混乱してました。が、次は勝てます。勝ちます」


 ナナセの問いにアルカは真摯に答えた。その声に虚勢も嘘もない事を感じ取ってくれたのだろう。ナナセは「分かったよ」と笑みを浮かべてくれた。


「今度は、僕達も一緒に戦いますよ」

「いや、それはいい。あたし一人で戦う」


 横から話にのってきたセーリッシュの言葉をアルカは否定した。反対されるとは思わなかったのかセーリッシュの顔が強張る。


「ですが相手は特級骸装士です。一度負けた相手なのですから危険です」

「大丈夫だと言った。それに……ハーディ兄との闘いじゃ、負傷を負ったお前らじゃ足手まといになる」

「それを言われると……弱いですね」


 セーリッシュはヘニョリと力ない笑みを浮かべた。いつものうさん臭い笑みとは違う珍しい顔だなと思いながらアルカは続けた。


「勿論、コンディションが良いなら話が別だ。が、今のお前らがどこまでできるかを探り探りしながら相手はできない。それに、その後も控えてるんだ。そいつらを相手にする人間は必要だ」


 ゴブリンジェネラル以上の存在が出てくるとしても、その周りにはノーマルゴブリンがいる筈で、それを倒す人員も必要だと言われればセーリッシュにもダヤンにも返す言葉は無かった。


「わかりました――勝てるんですよね?」

「さっきから言ってる。しつこいぞ」

「……了解です」


 セーリッシュが引き下がったのを見てダヤンも何かを言うのを辞めたようだった。

 そして全員の準備が終わったのを見て、ナナセが三人を見渡して言った。


「あたしにできる事はここまでだ。――あとは任せる」

「はいっ!」


 三人はそれぞれの決意を胸に頷いた。


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