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少し日が陰り、生い茂る草木から伸びる影が長くなり始めた中を、アルカ達三人は静かに、しかしできるだけ急いで進んでいた。
ソルケ村を出発したアルカ達は、通常の道を迂回してできうる限りゴブリン達と遭遇しないルートを選んで歩を進めていた。戦う相手はゴブリンジェネラルのみであり、それ以外の敵と遭遇することを失敗として。
アルカ達の有利な点は目指すダンジョンの位置を把握している事であり、そして同時に敵の目標がソルケ村であるという事がわかっているという事だった。それによりゴブリン達の進路がある程度読めるのだ。ダンジョンに近づけばゴブリン達と遭遇する事は避けられないが、それまではできうる限りエンカウントの確率は引き下げたい。それ故の迂回路だった。
事実として、三人はゴブリンコマンダーが率いているであろう一団を一つ、やり過ごす事に成功していた。アルカが体力の限界まで戦ったゴブリンの集団と同じ規模の群れである。一度戦いになれば、それだけで体力と霊力の消耗は避けられない。それを一度避けられただけでもかなりのアドバンテージであるとアルカは認識していた。
近くを通るゴブリン達は、完璧ではないにしろゴブリンコマンダーの指示通りに行軍していた。もしゴブリン達の本能が赴くままに無秩序に散らばっていれば、三人の誰かが見つかっていた可能性はある。しかし、安全と考えられるほどの距離を取ることができ、しかも敵の行動がそれなりに揃っていたため、やり過ごす事が出来た時にはアルカは安堵のため深い息をはいてしまったほどだ。
故にそれは油断でも何でもない。ただの偶発的な出来事だった。アルカの進路の方向に、一匹のゴブリンがひょっこりと現れたのだ。
あまりの予想外の出来事に、アルカも一瞬思考に空白が生まれてしまった。後から考えれば、ゴブリンコマンダーによる統率が完璧でなかったため、はぐれた個体だったのだろうという推測はできる。しかしこの時のアルカは、一団の斥候に見つかってしまった可能性を考え、体が固まってしまったのだ。
(しまった!)
一瞬後に気が付き、帽子に手をかける。叫ばれてしまえば一貫の終わりだ、と。しかしアルカが帽子の魔法を発動する前に、プシュッという軽い音と共に、その遭遇に驚いていて固まっていたゴブリンの額に穴が空いた。絶命しそのままひっくり返るゴブリンを見て後ろに視線を送ると、セーリッシュが銃をしまおうとしているところだった。
「……」
よくやった、という褒めるジェスチャーだけして、アルカは再度前を向いた。セーリッシュが素早く対応してみせた事に対して、自分が油断していた事を突きつけられたようで心に苦いものが広がる。
もう油断はしない、と心に誓いつつ、アルカは歩をまた前に進めた。




