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3-2

「では、再確認しますね」


 仮眠から起こされたアルカは、眠気を完全に払えないままに身支度を行っていた。メンテは頼んでいたが、骸装具の最後のチェックは自分でやる他はない。もくもくと骸装具に視線を走らせるアルカに、セーリッシュが淡々と言葉を投げてくる。


「我々の目標はスタンピードを収めることでも、ゴブリン達を殲滅させることでもありません。あくまでも被害拡大を抑えるために、ダンジョンコアを壊し、ジェネラルを倒す事を目標とします」


 骸装具の呪縛蛇のナイフがキレイになっているのを確認して鞘に納めつつ、アルカはセーリッシュに首を振る事だけで肯定を伝えた。


「ゴブリンジェネラルを倒すことでゴブリン達の統率が失われ、軍隊としての強みを失うと考えています。また、ダンジョンコアを壊すことで、これ以上のゴブリンの増殖を防ぐことができます」

「ゴブリンの統率を取るために、ジェネラルがゴブリン達を率いて出てきているんですか?」

「恐らくそうはならないでしょう。軍隊とは言いましたが、まだ近くの人里を探っている程度ですからね。自分達の王国を作り上げるとかの領域まで行くならばともかく、現時点ではまだダンジョンコアと一緒にいる方が利があると考えるでしょう」

「ダンジョンコアと一緒にいると、ジェネラルに利があるんですか? 配下が生まれるだけじゃ?」

「ダンジョンコアから力を供給され、ジェネラル以上の存在に進化することを狙っている可能性があります。それだけは絶対に止めなければいけません」


 ダヤンからの疑問にもセーリッシュは静かに答えた。

 ゴブリン達妖魔は半霊生物であり、成長というよりも進化の域に達しているともいえる変化をする。そしてダンジョンコアからの力を供給されることにより、より強大な妖魔に進化するのではないか、というのが現代の有力な仮説となっている。証拠を十分に揃えられるものでもないので仮説の域を出ないとはされいてるが、ダンジョンコア型のダンジョンで生まれた場合の妖魔最上位個体は、あまりダンジョンコアの側から離れない習性があることは確認されていた。

 セーリッシュはその事を言い、ダンジョンコアの側にゴブリンジェネラルがいるであろうことはほぼ確実であると告げた。


「その上でですが、正確な事はわかりませんが、先刻我々が戦ったゴブリンコマンダーが率いた一団が、少なくとも4,5個以上はあると考えて間違いないでしょう。最低限ダンジョンの防御に残すとしても、溢れだしたゴブリン達はそれぐらいの数にはなると思います」

「で、そいつらがこの村を狙いにくる訳だ?」

「そうですね。彼らの習性から繁殖を求めて人里を探すでしょうし、何より我々が殲滅した一団の情報を彼らも知っている筈です。まず間違いなくここに来ることになると思いますよ」

「つまり――ここを囮に使えるという訳だ」


 ソルケ村に向かってくるのであれば、来させてしまおう。その隙に彼らをやり過ごしてしまおうというのだ。村人が避難していなくなった村を守る理由はない。いや、後々の事を考えれば村自体を守る事も重要になりえるだろうが、今はそれは言っていられる状況でもない。

(ソルケ村の住人には悪いが、利用させてもらう)


 それくらいは許してほしいというのがアルカ達の考えだった。

 ソルケ村を襲うゴブリン達の軍勢をやり過ごしてその奥あるダンジョンへ向かい、突入してダンジョンコアとゴブリンジェネラルを破壊するというのが作戦だった。ゴブリンジェネラルとそれの取り巻きくらいであれば、体力を回復しきれていないアルカとはいえ、セーリッシュとダヤンと一緒にいれば、倒しきれるだろうというのが想定だった。


「けど、ゴブリンがわんさかいるダンジョンに突入するんだ。そこからが本番なんだから、体力の温存が鍵だ。見つからない事は当然目指すが、もし斥候か何かに見つかっても、他に知らされる前に倒しておかなきゃいけない。それはあたしとセーリッシュでやる。ダヤン、お前は霊力温存を目指せよ」

「は、はい。わかりました」

「セーリッシュ。なんかあったらあたしよりもお前の銃の射撃の方が早いだろう。ゴブリン程度なんだから威力は小さくていい。静穏性の方を重視しろ。あと、お前も霊力温存の為に砲撃はするなよ」

「了解です」


 通常の<銃弾聖成>だけで無く、より魔力を込めた弾、銃弾ではなく砲弾とも言えるものを放つことがセーリッシュにはできたが、それは敵に見つかる事にも霊力の浪費にもつながるからやるなとアルカは釘をさしたのだ。冷静なままでのセーリッシュであればわざわざ言わないが、戦闘中に頭に血が上ってしまってやらかされてはたまったものではない。


「質問はあるか?」

「質問ではなく報告ですが、マルチナさんとギルドの方には連絡を入れておきました。ギルドの応援が駆けつけた時に、土地勘がある方との連携があった方がよいでしょうから」

「だな。他になければ、じゃあ出発するか」


 すっかり乾いたコートに手を通し、骸装具の眼鏡をかける。真空刃の帽子を手に取ったアルカは、少し血のシミが残っているのを気にしつつ目深にかぶった。


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