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 かつての仲間が言っていた言葉を、思い出す。


「こういう装備とかってさ、なんで手放すんだろうな」

「さぁ?」

「後で来たやつに拾ってもらうためとか?」

「でもそれ、死ぬ時に考えることかなー」

「俺は絶対この装備と一緒に死ぬから! お前ら絶対拾うなよ!?」

「んじゃ私はヤマトが死ぬ寸前に無理矢理装備全部引っぺがすわね」

「めっちゃ心残りになるやつじゃん! 絶対やめろよ!?」


 明らかに、つい先程までそこに人がいた痕跡があった。

 武器、カードホルダー、そしてスマホ。なんとか最後の力で遠くに放り投げたであろうそれらが散乱しているのを集めながら、仲間たちとそんな話をしていた、遠い昔のこと。


 装備を拾い集める仲間を横目に、海里は持ち主のいないスマホを拾った。

 ダンジョンで拾ったJDPジャパン・ダンジョン・プラクティクス製のスマホは遺失物として届けるとわずかながら報奨金が貰えるし、死体の残らない探索者の死を遺族に伝えるサービスもしているので、見つけた時はちゃんと届けるようにしている。


 壁にぶつかって画面が割れたスマホは、破損しているのか画面すら点灯しなかった。

 まぁ、この状態でも誰が買ったかくらいの情報は残っているはずなので、バックパックに捻じ込む。


 どうして、死の間際に何かを遺そうとするのか。

 その時の海里も、仲間と一緒で全く分かっていなかった。



(そういう、ことか)


 もう、喉すら動かない。

 ようやく、海里はあの時の答えを見つけた。ほとんど思考力の落ちた状態で、ほぼ無意識で、唯一遺せるカードホルダーを、放り投げようとしたことの意味。


(自分の生きた証を、残したかったんだ)


 探索者は、ダンジョンで死んでしまえば死体すら残らない。

 そのせいで、ダンジョンが生まれてから行方不明者は爆発的に増加した。

 故に、探索者はダンジョンに入る前に自主的に『どこのダンジョンのどこに入るか』『大体どのくらいで戻るか』を探索者協会の個人ページに入力する風習が生まれ、それは後に正式なシステムとして採用され、帰還報告が一定期間されない場合、ダンジョン内で死んだと判断出来るよう法改正がされた。


 大抵の探索者は、何も残せず死ぬ。


 ――だから、だ。


 誰が拾うかも分からない。

 誰にも拾われず、自然とダンジョンに飲まれるかもしれない。


 ――そんなの、どうだっていい。


 理屈じゃない。

 ただ、嫌だから。


 何も残せずに死にたくないから、人は最後の力を振り絞って、装備だけでも世に残そうとするのだ。

 誰かに拾ってもらえるよう、生きた証を最期に託すのだ。


(……ははっ)


 もう表情すら動かせない海里は、手に触れてるカードホルダーを見て、苦笑を漏らす。

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