表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/55

37

 20しかないスキルスロットの中でも重要となるのは、クラススキルなんて呼ばれる、一つしか装備出来ないスキルカードだ。


 俺が装備しているのは知力(INT)に補正のかかる『魔法使い(ウィザード)』。

 他にも(STR)耐久力(VIT)に補正のかかる剣士(ソードマン)器用(DEX)俊敏(AGI)に補正のかかる盗賊(シーフ)など、RPG的なクラスロールに近いものだ。

 

 勇者(ブレイバー)は、そんなクラススキルの一つ。

 クラススキルは、一つのスキルの中にいくつかの内部スキル――モジュールスキルなんて呼ばれるものが設定されている。

 『勇者状態(ブレイブ・シフト)』は、勇者(ブレイバー)の持つモジュールスキルのうち一つだ。

 その効果は、パーティメンバー全員のステータスに莫大な補正を掛けるというもの。俺たちがファーストランクでありながらダンジョンボスに挑めたのは、このスキルの効果があったからだ。


「……あれ、パーティメンバーじゃなくても適用されんだな」

「らしいな」

「昔はそこまで調べなかったけど、まぁ、俺にも残ってるしなぁ……」

「知っている」

「…………話したっけ?」

「魔法の威力が高すぎるんだ。それだけで勘のいい者なら気付くんじゃないか」

「……それもそうか」


 射撃魔法は、不人気魔法だ。

 それは単純な話、魔法でありながら魔法属性を持たない、物理属性の魔法だから。

 お陰でだいぶ安く買えた。正直、ソロで雑魚モンスターしか狩らないなら魔法属性にこだわる必要なんてなかったから、安いもので良かったのだ。


 知力(INT)に特化していれば、誰でも俺のように使える――()()()()()()

 魔法属性を持たないということは、敵の弱点に応じて魔法属性を切り替える、『魔法使い(ウィザード)』としての基本の動きが出来なくなる。

 もちろん、『魔法使い(ウィザード)』にも一つの属性に特化している者は居る。一つの魔法属性で下級・中級・上級と全ランク揃え、他のスキルにも『火属性強化』みたいな強化スキルを重ねてカバーする、シングルウィザードなんて呼ばれるスキル構成(ビルド)だ。


 とはいえ、射撃魔法において、シングルウィザードと同じ強化は難しい。物理属性の魔法を強化する専用スキルなんてなく、『重複(オーバーラップ)』のようなスキルで魔力の消費量を増やすことで威力を強化することしか出来ないからだ。

 単純に特化効率が悪いため、精々属性魔法の通りが悪いモンスター対策に、魔法使い(ウィザード)がサブウェポンとして持つくらい。安くなるのも当然だった。


「荻窪で、一度狩りの実演をしてくれただろう。あの日に、分かった」

「……いや、数分だよな? 射撃魔法なんて前から知ってたのか?」

「全振りしたファーストランク魔法使い(ウィザード)知力(INT)は良いとこ2000だろう? 『射法(バレル)(レプカ)』の威力係数は72.215。短縮詠唱で最終倍率に0.7倍の補正を掛ければ威力は10万程度。九重奏(ノネット)2回で81分割され1248。フォルミナスの精神力(MND)は17だから最終ダメージは1035。上層のフォルミナスの体力(HP)は個体サイズによって変わるが総じて1900から2300程度だから、81分割された『射法(バレル)(レプカ)』一発でフォルミナスを倒すには、更に2倍程度の倍率を掛ける必要がある。無条件で2倍ものバフが乗るなんてありえない。そうなると勇者状態(ブレイブ・シフト)の可能性は非常に高くなる。違うか?」

「なんで戦闘に関するIQだけバカ高いんだよ!!!!!!!!」


 リンがここまで長尺で喋んの久しぶりに聞いたよ!! 別に頭が良いわけでもないのに頭の回転が速いってのは、つまりこういうことなのだ。興味があることにだけ異常な集中力を発揮してるんだ。馬鹿がよ。


「? ただの記憶と暗算だ。このくらい誰でも出来るだろう?」

「俺でも出来ねーって!!!!」

「…………そうか」


 哀れみの目で見られてるけど、そういうとこだぞ。

 リンは、本当に天才なのだ。ダンジョンに関するところだけだが。

っていうか威力係数とかダメージ計算式なんて俺でも覚えてないよ。頭攻略wikiとかに繋がってたりする?


「リンが槍をぶん回してキャリバーの後ろ脚に当たった時のダメージは?」

「6327。関節部なら9962」

「そろばんとか習ってた?」

「習ってないが……」


 即答じゃん。怖いよ。だって別にダメージの数値って目で見えるわけじゃないんだよ? もっと言えば相手の体力(HP)だって専用のスキルなりアイテムなりを使わないと確認出来ないので、戦闘中は基本的に感覚だけで戦うことになる。

 上層でのフォルミナス狩りを安定させたのだって、机上で計算したんじゃなくてただ実践しただけだ。いくつまで分割しても一撃で倒せるか、細かくチェックして最適解を見つけただけである。

 戦闘スタイルはバーサーカーみたいなのに、実際は緻密な計算をした上で暴れてるってことなのかよ。


「私に勇者状態(ブレイブ・シフト)があり、それがまだ消えていない以上、海里も同じ状態だと判断したのは自然だと思うが」

「……まぁそうだな」


 『勇者状態(ブレイブ・シフト)』の効果は、単純なステータスアップ。――ただ、その倍率が異常なのだ。ステータスが2.5倍になるバフなんて、勇者状態(ブレイブ・シフト)の他に存在しない。それなのに、何のデメリットもなく永続効果。

 なお、クラススキルとして持つ勇者当人は7倍なのでもうこっちは無法通り越してる。チートだチート。


 ちなみに一般的なクラススキル――たとえば魔法使い(ウィザード)知力(INT)に2倍の補正がかかるので、2.5倍という倍率自体はクラススキルとして見ればありえない数値ではない。

 しかし勇者状態(ブレイブ・シフト)自体はただのバフなので、これにプラスして更にクラススキルを持てるというのだから、無法さは伝わるだろう

 まさかパーティに入ったことすらないリンにまで適用されるとは思ってなかったが、とうに勇者はいなくて、なんなら勇者を託された俺にもバフが残っているのだから、実の妹であるリンが持っててもおかしくはない。


「海里が私たちを庇う時に使ったのは、『勇者の盾(サクリファイス)』だな」

「……待て、ダメージ計算は計算式と倍率覚えてれば出来るのは分かる。でもそれが分かるのはおかしいだろ」


 だって、『勇者の盾(サクリファイス)』は別にバフなどではない。発動している間、仲間へのダメージを肩代わりするという勇者(ブレイバー)のモジュールスキルの一つでしかない。

 それに、存在を知っているのは俺や、あのパーティに居たメンバーだけのはず。過去に勇者が居たなんて知らないし、他の所有者だってたぶんいない。

 何故、それをリンが知っているのか――


「? 話していたぞ」

「誰が?」

「兄と、海里が。昔に」

「いやなんで普通に覚えてんだよ!!!!」

「知らん」

「知らんって…………」


 そりゃあなぁ。()()が居るとこでも、普通に話していたと思う。

 勇者(ブレイバー)のモジュールスキルは他のクラススキルに比べて多すぎたので、暇なときに一つずつ検証したことがあったのだ。


 だってあれだぞ、俺の魔法使い(ウィザード)ってモジュールスキル2つだぞ。

 知力(INT)の上がるパッシブスキルの『魔法適性(ウィズダム)』、威力が落ちる代わりに詠唱を短縮するアクティブスキルの『短縮詠唱(ショートワード)』だけだ。

 それなのに、勇者(ブレイバー)のモジュールスキルは30個くらいあった。馬鹿だろ。まぁ魔法使い(ウィザード)のスキルカードはレア2で、勇者(ブレイバー)はレア9なんだけどさ……。


「『勇者の盾(サクリファイス)』はパーティメンバー外でも有効なんだな」

「……あぁ、言われてみるとそうだな。まぁ勇者だしな」

「それを使えたということは、……やはり、そうか」


 リンは、ようやく確信したようだ。

 俺が誰にも話していなかった、このスキルのことを。


()()()()は、海里なんだな」


 ――そう。

 二度目の死を迎えた、あの日から。


 スキルを託されただけの俺は、勇者(ブレイバー)になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ