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「りん……あぁ、リンか」
「ずっと気付かなかったのか?」
「いや、まぁ、……よくある名前だし、名字がさ、違うだろ」
「両親が離婚した。廣重は母方の旧姓だ」
「……そういうことね」
あぁ、ようやく理解出来た。
リンが、やけに俺に懐いていた理由――
――最初から、俺たちは知り合いだったのだ。
そんなこと、想像すらしていなかった。むしろヤマトの妹であるりんのことなんて、つい先程まで思い出すことすらなかった。
俺にとってりんは、ただの幼馴染の妹でしかなかったから。
「つーかリンの方だよ。なんで覚えてたんだ? 3歳とかだろ?」
「? 何故忘れる?」
「あれ、幼児期健忘って知ってる?」
「海里以外の顔も名前も覚えてないぞ。……なんとなく、女が一人居たような気はする」
「しっかり忘れてんじゃん! 逆になんで俺のことは覚えてんだよ」
「知らん」
リンは、じりじりとにじり寄ってくる。目がガンギマリでちょっと怖い。
「これが運命って、やつじゃないのか!?」
「いや普通に偶然だろ!」
「偶然であるものか!!」
リンは、俺の腕を強く握って叫ぶ。握力つえーな。逃げられる気がしないわ。
「答えてくれ。……海里は兄から、何を託されたんだ」
リンは、確信している。俺がヤマトから、託されたものを。
その問いに、ついに答える日が来たようだ。
俺は、このことを誰にも話していなかった。元パーティメンバーにも、だ。
だって、俺が何をしても、このスキルは機能しなかったから。ステータス補正も、スキル効果も、何一つとして発動しなかった。
きっと、足りなかったんだ。
でも、15年ぶりにボス部屋に足を踏み入れた、あの瞬間――
――使えると、確信した。
きっと、足りないのはそれだったのだ。
俺には、ヤマトを、このスキルを継ぐ、気持ちが足りていなかった。
「勇者を」
リンがヤマトの妹だってんなら、話す必要がある。
俺の目に映っていた勇者が、どんな奴だったのかを。
――そして、どうやって死んでいったのかを。




