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「かーり! かーり!」
「だからカイリだって! か・い・り!」
「かーりー!」
「あぁもう!!」
ヤマトの家に集合して作戦会議をすることは、よくあった。
別に豪邸というわけでもない、普通の一軒家だ。
俺たちの通う高校から一番近くにあったのがヤマトの家だったし、ダンジョンにも近かったので、いつの間にか部室を使わない時は、ヤマトの家に自然に集まるようになった。
ヤマトには、小さい妹がいる。それも、双子だ。
名は、『りん』と『こう』。
妹の名前を知ったばかりの頃、メンバーで唯一成績のいい寺内が「なんで長男が日本神話なのに妹が礼記なんだよ……」とボヤいていた。
愚痴を言うくらいなら黙るタイプの男なので、よく覚えている。細かいことを気にするなぁなんて思ったものだ。
妹――『こう』はあまり活発ではなく、あまり身体も強くなかったようでよく病院に行っていた。ダンジョンの話にも興味ないようで、俺たちが何か話していても近づいてくることはなかった。
それと反対に、姉――『りん』は元気で、15歳くらい離れた俺達にも物怖じしずに絡んできたし、作戦会議中には俺や神林の膝の上に座り話を聞いていることも多かった。まぁ何を話していたかまでは分かってないだろうが。
寺内とか久米とか赤野にはあまり懐いてなかったけど、俺と神林はよく座椅子にされていた。
本人に理由を聞いても、しょせん幼児に納得いく答えが返されることはなかったが、ヤマト曰く「お前ら二人が弱そうだからだと思う」とのことだった。
神林は高校3年生にして身長150cmくらいしかなかったし、俺は平均身長くらいはあったが、誰よりも痩せていた。まぁ外見から弱そうな二人を選べば、俺と神林になるだろう。幼児に馬鹿にされてるみたいでちょっと悔しかった。
「かーり? いいことあった?」
「おー、あったあった。昨日はヤマトがさ――」
神林も懐かれてはいたが、妹も弟もいて年下の相手は慣れてるのか、りんとそこまで遊ぶことはなかった。だが俺は一人っ子だったので、りんと遊ぶのも話すのも、新鮮で楽しかったのだ。
幼児にどれだけ説明したところで、1割も理解されればいい方だ。けれどりんは人と話すのが大好きで、人の話を聞くのも好きで。
よく分からない話でもずっとニコニコして聞いていたし、分かる単語にはちゃんと反応していた。あれは本当によく出来た幼児だったと思う。ちょっと活発すぎて何度か俺たちに着いてこようともしたが、そのたびヤマトが必死に抑えていた。
――けれど、ヤマトが死んだ、あの日。
俺は二人に、兄の死を伝える勇気がもてなかった。
結局、俺達から報告を受けた顧問の先生が代わりにヤマトの家に行ってくれて。
5人全員の覚悟が決まって、ようやく東谷家に行った時。
俺たちは、謝罪の一言も伝えられなかった。門前で、インターホン越しに拒絶されてしまったから。
あの日以来、俺はりんには会えていない。




