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猫屋敷に背後から近づき、頭部にチョップをかます。目の前の相手に意識が集中していて、俺の接近には全く気付いていなかったようだ。
不意のチョップを受け、猫屋敷の手から短剣が落ち、石畳でかつんと跳ねる。
「か、海里!? ど、どうして……」
慌てた様子のリンを見て、はぁ、と溜息を漏らす。
「……マジで墓あんだけど、これ誰が買ったんだ?」
猫屋敷が無言でリンを指差した。収める骨もないんだから墓なんて要らなくないか、と思ってしまったが、これは宗教上のアレかもしれないので黙っておく。
「お前ら仲悪いんだろうなーとは思ってたけど、墓場で武器出すほどかよ……」
二人にすっと目を逸らされた。やっぱ自覚あんじゃん。前から二人とも明らかに避けてる感じあったんだよなぁ。支部で会っても挨拶もしないし。
元から人当たりが悪いならともかく、リンが明確に避けている相手なんて猫屋敷ともう一人くらいしか知らない。なおどっちも女だ。猫屋敷なんて局長とか相手でもにゃーにゃー言ってるしなぁ。メンタルが強すぎる。
「海里くん、遅いにゃー。見なよこの一触即発の空気!」
「悪かったって。これでも急いだつもりだったんだよ。あと勝手に一触即発の空気にしたのはお前らだ」
「それはそうだけどにゃー……」
「え、あ、……し、知ってたのか!?」
まだ状況を掴めていない様子のリンが、俺と猫屋敷を交互に見ると、猫屋敷が溜息交じりに答えた。
「わたしが呼ばなかったら、この場に海里くん現れるわけなくないかにゃ?」
「…………殺せ!」
「リンちゃんがくっ殺になっちゃったにゃ……どうしよう海里くん……」
「『自動反射』入るから物理で殺すのは無理だろ……」
リンの方に向かって、頭に手を載せようとして――
そういえば頭触られるのって女は嫌がるんだったな、と思い出して手を止めると、リンが慌てて俺の手を掴んだ。感触を確かめるように、強く握って。
「悪い、待たせたな」
「……え、あ、か、海里だよな? 触れる? 生きてる? なんで?」
「そーれーはーねー」
リンの背後から近づいた、否、何もないところから現れたようにしか見えない黒ギャルメイドに反射的に槍が振るわれるが、ぱしっと止められる。え、腕力?腕力で止めた? まぁ止めれるか。人間じゃないし。
リンの方を止めるよう、クレイを反対から送り込んでたいた。適材適所というものだ。俺は今の槍食らったらたぶん三度目の死を迎えていたと思う。
「死んで生き返った。まぁ信じられないと思うが」
「……ひょっとして、海里は不死身だったのか?」
「んなわけねーだろ」
「じゃ、じゃあ……」
「帰ってきたら話すって約束したもんな。……遅くなったが、ちゃんと話すよ」
リンは、こくりと頷いた。




