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「まぁ、分かったことを整理するぞ」
「うぃうぃー」
「現状の俺達で処理しきれるのはキャリバー――最後に出た盾持ちまでっぽい。つっても巣で狩るほどは無理だな」
「んだねー、おもっきし殴れば倒せるけど、数多いと無理だわ」
「俺も同じ。魔力込めれば倒すことは出来るけど、時間もかかるし群れは厳しい。ってことはクレイは大体ファーストランクがカンストしてるくらいの強さってことで良いのかな」
「かな? 知らんけど」
大阪人みたいだなぁ。大阪って概念どこまで通じるんだろ。太陽系ならギリ通じても驚けない。知らん間に宇宙進出したり宇宙人とコミュニケーション取ってたりするかも。
クレイは、思ったより強かった。普通にファーストランクとしては満点のタンクだろう。
何より、物怖じしないというのが良い。タンクが最初に覚えるべきことは、敵に殴られても怯まないこと――、人間が誰しもが持つ恐怖心を、自力で抑えなければならないのだ。
その点クレイは、初見であろうと全く怯まず行動出来た。
ナノマテリアルで作られた身体の耐久値の方は正直未知数だが、俺より脆いことはないと思う。耐久ステなんも振ってないからな。なんなら下位個体のフォルミナスにも攻撃されたら普通に殺されるぞ、俺は。
何十体ものキャリバーに囲まれても普通に行動出来ていたから、しばらくはクレイをタンクに置いて俺が後ろから攻撃する、というスタイルで良さそうだ。
「あ、ごしゅ、さっき拾えるもん拾ってきたんだけどさ」
「ん? あぁドロップか。……よくあんな状況で拾えたな」
「ほいほいー」と階段に並べられるカードを、一枚ずつチェックしていく。
普段の上層狩りでは出たところで最低レアのカードだからチェックするほどでもないのだが、中層からはそれなりに良いものがドロップすることもある。最初数体でハーロット・セブンのモジュールカードを入手出来たくらいだし、期待出来る――
と、チェックしていたが、残念ながらハーロット・セブンはもう1枚もなかった。それもそうだ。半年に1枚しか出ないものでも何万人も居たらいきなり出ることくらいあるもんな。
だが、不可解なカードが1枚。
「……これ、誰が落としたんだ?」
「ん? あー、なんか黄色いやつ?」
「黄色……? そんなの居たか?」
「あ、ごしゅには見えてなかったかな。生意気にも透過してたまま噛みつこうとしてきてさ、踏んじった」
「黄色……まさか『フォルミナス・ゴールドラッシュ』か!? え、俺も見たことねえよ!?」
「そうなん? ふつーの雑魚くらいの柔らかさだったよ?」
「……レベルは1とかだからな。弱くて当然だ」
『フォルミナス・ゴールドラッシュ』――それは金色の異常個体。
出現報告は非常に稀で、倒すと高レアのアイテムや魔石をドロップすることがある――らしい。なお大量に経験値をくれる『フォルミナス・シルバーバック』という異常個体も存在するが、こちらも発見報告は稀だ。
透過してた――ということは、俺には見えなかったということ。これまで目撃情報が少なかったのも頷ける。そんな能力あったのかよ。見つからないわけだよ。
「無地のスキルカードなんて見たことないんだよなぁ……」
ゴールドラッシュのドロップは、スキルカードを示すアイコンが書かれているが、イラストもカード名も、すべてが空白になっていた。
何かしらのスキルではあるだろうが、試してみようにも俺のスキルスロットは20/20で上限いっぱい。どんなスキルかも分からないのに前衛タイプのクレイに使ってもらうわけにもいかないし、自分で使うにしてももう少し詳細を知りたいところだ。
「検索……してみようにもカード名も分かんないじゃなあ」
スマホを取り出し、取引サイトの出品用スキャナーカメラを起動してカメラに写してみたが、残念ながら何も読み取られない。まぁ当然だ。文字とか絵柄で判断してるところで無地だもん。
もちろん無地のカードを検索することも出来ないし、ネットで『ダンジョン スキルカード 無地』なんて検索してみても何もヒットしない。当たり前だ。
「使ってみよっか?」
「……いや、それは無しだ」
「なんでー? あーしでも使えると思うよ?」
「それでも、だよ。マイナス効果のあるスキルなこともあるし、珍しいけど解除不可ってやつもある。いざって時に責任が取れない」
「責任……」
ぼそり、と呟いたクレイは、すっと俺の胸に指を這わせる。ゾクゾクするからやめてくんない!?
「ごしゅ、責任取ってくれんの?」
「えーっと……慣用句の方かな、隠語の方かな」
「隠語の方で」
そこまで分かんのかよ。どうなってんだよ宇宙人の言語パック。
「……い、今は無理っ!! 頼まれたこともあるしな!」
「あー、ハーロット・セブンを太陽系にって話? まぁ無理しない程度でいーよ?」
「俺にとっても、あそこを失うのは避けたいんだよ。折角入れるようになったしな」
「ふーん……ごしゅにとってはあーしとの関係育むより船のが大事なんだー?」
「そういうのはは卑怯だからやめてくれ」
くすくす笑って返される。
駄目だ、好きになっちまうよ。巨乳だし、金髪だし、ギャルだし。メカクレと黒ギャルとメイドって部分は別に性癖ど真ん中ってほどでもなかったけど、良いなコレ。すごく良い。
武器がモップってもオツだよね。男子は皆メガ盛りが好きだからな。カレーに野菜も卵も肉も揚げ物もなんでもかんでも載せたいもんなんだ。もう食えないが。
「いちお、確認なんだけどさ」
「ん?」
「このカード、ごしゅにはどう見えてんの?」
「…………え、待って、俺と違うもの見えてる? 無地のなんも書いてないカードだよ。あ、ここのマークでスキルカードってことは分かるんだけど」
「…………ふーん……」
あれ、この反応、ネタじゃなくてガチっぽいな? クレイにはなんか見えてんだな? 俺には見えないものが見えてんだな!?
「な、なんて書いてあるんだ?」
「|グロウスラックフレィティシアティブロスティア《注:翻訳不能概念です》」
「すまん、俺馬鹿だから分かるように言ってくれねえかなぁ……」
「やー、だからそのまんまよ。地球人類に理解出来る言葉で説明出来んのよこれ」
「……良いもの? 悪いもの?」
「良いもの寄り? ただデメリットもあるっちゃある?」
「デメリットとは」
「|サイリストアブラックティアシアン《注:翻訳不能概念です》がストライディアにフォフィルトされる感じ?」
「ピーピーうるせえ!!!!!!!!」
すげえ! 翻訳不能って謎音声って重なることあるんだ! マジでうるせえ! 頭に直接響く!!!!
「でしょー、これはマジで説明出来んわ」
「……そっかぁ、使った方が良いかな」
「使っても使わなくても?」
「…………よし、なら売る。売れるなら売る。売れないなら使うで」
「おけおけー。あーしも無理に使いたいほどでもないし、そこはごしゅに任せるよー」
「んーじゃ、……いったん帰るか」
「りょっ!」
びしっ、と敬礼をされた。そういえば言語は翻訳されてるから地球人が理解されない言葉はそのままあっちの言葉になるっぽいんだけど、こういう服とか風習みたいな要素はどうして分かるんだろうな。宇宙文明ってすごい。
「ここで通用口モジュール使ったらどうなるんだ?」
「通用口に出んじゃね? んでそっから出たらここには戻れずにダンジョンの外に出るとおも?」
「おー……便利だ……。いやセーブは出来ないってことだよな……。一応聞くけどクレイ、普通に外出れるんだよな? 出たら消えたりしないよな?」
「消えるわけないじゃんウケる。むしろなんで消えると思うん」
「だ、だよな!」
宇宙空間で作られた身体が、地球環境に適応出来ずに自壊する――みたいなSFを読んだ記憶があるだけだ。
ドロップの整理を終え、立ち上がって通用口モジュールを取り出す。
「『iubeo』」
帰還アイテム無しで外出れるようになったの、マジで楽だなぁ……。あれ安くないからさ。




