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「思ったより広いな……」
支部を出て一旦自宅に帰り、準備をした上で通用口モジュールを経由して商業モジュールへ移動した。
ダンジョンの外からでもハーロット・セブンに入れるのはだいぶ助かるが、まさか出来るなんて思ってなかったので試してすらいなかった。
それはそうとして、人間が急に消えることになるので監視カメラのある場所では厳しいだろう。結局ダンジョンとか自宅とか、人目のないところからの移動になると思われる。
商業モジュールは、なんとなくショッピングモールの1階とかに見える。
だが、テナントはどこも休業状態なのか、シャッターが閉まっている。試しに近づいて開こうとしてみたが、ぴくりとも動かない。
「…………とりゃっ」
シャッターに蹴りを入れる。がしゃん。蛇腹状に伸ばされたシャッターが異音を鳴らし――
ビー、ビー、ビー
警告音が、鳴り響く。天井照明(?)が真っ赤に染まり、ぴかぴかと点滅する。
「え、待って、マジ?」
まさか強盗かなんかってカウントされた!? いや、まぁ確かに中に何かあるかなとかワンチャン空いたりしねえかなとかそういうこと考えて蹴ったけどここはそのくらいすべきだろというか――
隠れる場所は――あるか!? 念のため戦闘準備もしてあるが、敵のレベルによってはまともに戦えまい。何せ俺はファーストランク――レベル50でカンストしている、実力自体は駆け出し探索者レベルだ。
荻窪ダンジョン上層階での狩りに特化しているため魔石のドロップ量では好成績を残せているが、まともに戦うにはスキル構成がピーキーすぎる。
どうすれば良いかも分からないまま赤く点滅するモジュールの中を走り回っていると、案内所のようなブースを発見する。あの市役所とかにありそうな、円形のアレだ。
「ヘルプっ!!」
扉もないので、ジャンプで中に飛び込んだ。
椅子もないが、腰より少し高いくらいのカウンターがぐるりと一周している、2m弱の空間。扉すらないが、どうやって出入りする想定なんだろう。
しゃがめば外の様子は見れなくなるくらいで、少なくともベンチの下とかよりは隠れやすそうだ。
そのまましばらく、息を殺し頭を抱えて待っていると――
「……ん?」
警告音が止まり、赤い光が消え、元の照明に戻る。
「…………なんもなかった?」
こっそり、カウンターから頭を出す。すぐ目の前に警備ロボが出てきてるとか、モンスターがヤッホーな展開はなさそうである。
「…………セーフ!」
ともかく、なんとかなったようだ。よかったよかった。シャッター蹴るのは二度とやめよう。あの音普通に心臓に悪いわ。
カウンターの中から、周囲を見回す。
異変はない。だが、何もない。
工具を使えばシャッターを無理矢理開けることも出来るかもしれないが、次はどうなるか分からない。警備システムっぽいのが生きていた以上、音と光以外の何が待ち受けているか分からないのだ。
ならば、危険な橋をあえて渡る必要はないだろう。じゃあここは何のためにあるんだよ。
「普通こういうの、アイテムゲットのチャンスなんだろうけどなぁ……」
そうボヤいたところで、返事は――
「え、まじ? 発想が強盗なんだけど」
「うっせ、ゲームだとそういうもんなんだよ。……えっ?」
「ん?」
明らかに返事があった。え、どこから?
くるり、と振り返ると――
「やほー」
メイドさんが、立っていた。




