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『黒神龍の御子外伝』紅神龍の御子になった少女の帝王学 ~剣聖イェンリン様のお気に召すまま~  作者: KAZ
第1章 運命の子

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首都メイローズ

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―――次の目的地であるコノ村に到着したイェンリン達は、村に三つあるという宿の一つを訪れた。


そしてアノ村の宿より大きな宿屋だが、此処でもメテロが慣れた様子で宿を取り、丁度夕食時だったこともあってそのまま食堂へ三人で向かう―――


「うわぁ~♪ アノ村の時よりも人が多いね!」


アノ村の時には他に見なかった宿泊客が数多くのテーブルを囲んで楽しそうに食事をしている姿を目にしてイェンリンは胸がワクワクしていた。


「イェンリン―――此処にはどんな人がいるか分からないんだから、騒いじゃダメだよ」


メテロにそれとなく大きな声を出すなと言われて、イェンリンは父と母に言われたメテロ達の言うことをしっかり聞くこと、という約束を思い出して、


「はぁ~い。ちゃんと静かにしておくわ♪」


聞き分けよく返事をして、三人でテーブルへ腰を下ろした。


「―――いらっしゃい♪ 何にします?」


そこにウェイトレスの若い女性がやってくると、メテロとロドスに注文を問い掛ける。


「そうだな……今日のオススメは何だ?」


そのウェイトレスにロドスが訊き返すと、


「今日はシチューと鶏肉の蒸し焼きがあるよ♪」


若いウェイトレスが笑顔で料理を紹介する。


「ではそれを三人分貰おうか。それとパンも一緒に頼むよ」


メテロがそう注文すると、


「―――シチューに鶏肉の蒸し焼き三人前ね♪少々お待ちを!」


注文を復唱してウェイトレスは厨房に向かっていった―――






―――ゴルゴダ村では見たことがないシチューを喜んで平らげたイェンリンは満足げな顔をしながらメテロへ問い掛ける。


「ねぇ?明日、魔術師さんのお家へ行くんでしょう?」


「うん、そうだね。でも俺も直接行ったことはない場所だから、詳しい場所を訊きながら向かうことになるけどね」


「メテロは魔術師さんに会ったことはないの?」


続けて問い掛けてくるイェンリンにメテロは頷いて、


「そうなんだ。俺は師匠からそんな魔術師がいると話を聞いて、大体の住んでいる場所について伺っているだけだから」


魔術師について自分の知っていることを話した。


「捜索だけで明日一日潰すなんてことに、ならなければいいけどな……」


メテロの話を聞いてロドスはボソッとそんなことを口にすると、


「きっと見つかるよ♪ どんな人かなぁ~♪ 楽しみ~♪」


イェンリンは無邪気に楽しそうな声を上げていた。


そして食事を終えてから、皆それぞれ休むことにして部屋に戻っていく。


イェンリンは昨日とは違う宿のベッドへ向かって、ボフンッ!と飛び込む。


「うわぁ♪ 昨日の宿屋よりもベッドがフカフカだなぁ♪」


そのシーツの冷たい感触を感じながら、枕に顔を埋めたイェンリンの考えることはやはり家族のことだ。


物心ついた時からずっと一緒のベッドで眠っていた妹のエリシラ―――


―――夕食には常に母のカリオラがいて、自警団の仕事でいない時もあったが父のダンクも共に食卓を囲んでいた日々。


「父さんと母さん……それにエリシラとも、こんなに長く離れたのって初めてだな……マルクは元気になったかな……」


旅立つ前日に悔しそうな顔をして飛び出していったマルクのことが気になるイェンリン。


「もしもマルクが旅に出ることになっていたら……私も同じ顔をしていたのかな?」


そんな疑問を浮かべながら、徐々に眠気に囚われていくイェンリン。


昼間に喋り過ぎたことで疲れが一気にドッと襲ってきたことで、すぐにその意識を手放したのだった―――






―――翌日の朝


「準備はいいか?―――イェンリン」


「―――うん♪大丈夫よ!」


運良くこの日も晴天に恵まれて、イェンリンはもう自分の指定席と化した馭者台に座る。


「此処からメイローズまではすぐだよ。大きな街だからね」


メテロの説明にイェンリンは益々期待が高まって、メテロとロドスに笑みを見せると、


「楽しみだね♪ どんなお店とかあるのかなぁ~♪」


当初の目的を忘れているのか?とメテロとロドスは思い浮かぶが、村を初めて出る女の子が首都の街に夢を見るのも仕方ないと微笑ましく見守っていた。


今日はメテロが馭者台に腰掛けて手綱を握る。


コノ村を出発して半日も立たないうちに道の先に石壁が見えてきた。


「あれは何!?」


それを見て驚いたイェンリンが石壁を指差して問い掛けた。


「あれはメイローズを取り囲む防壁だよ。魔物や攻めてきた敵から街を護るためにあるんだ」


「そうなんだ……でも魔物は分かるけど、敵って?」


子供であるイェンリンには国同士の関係や戦争など知る由もないことだ。


「それは……どう説明したらいいかなぁ……」


メテロがそう悩んでいると、


「……敵は敵だ。この国を狙う他の国のことだと教えてやればいいだろう?」


ロドスは淡々とそのことをメテロに告げる。


「えっ!?―――他の国が攻めてくるってこと?……それって戦争っていうヤツ?」


ロドスの言葉にイェンリンが驚いて問い掛けると、


「そうだ。だけど別に今、他の国と揉めている訳じゃないんだぞ……そんな危機が襲ってきた時に領主様は民を護らないといけないだろう?そのための備えってヤツだよ」


「つまり……盗賊から家を護る……みたいな?」


「うん、規模は違うけど意味はそれで合っているよ」


メテロがその話に同意すると漸くイェンリンも街の石壁について理解した。


「それで!それで!!―――あの中に入るの?」


前方に見えだした大きな門を目にして、イェンリンの興奮は最高潮に近づく。


「ああ、そうだよ。中に入ったら街がある。そこがこの国の首都メイローズだよ」


「首都……メイローズ」


大人達が話す内容でしか聞いたことがないイェンリンは、まるで物語の舞台のような期待と想像をしていた首都の展望に感激で胸がいっぱいになっていった―――






―――石壁に築かれた大きな門で番兵に入場料を支払い、無事に首都の中へ進んだイェンリン達。


トンネルになった門を潜り抜けるとその先に広がる街並みに、


「うわぁ~♪ すごぉ~い!!」


馭者台で立ち上がり、馬車の上から辺りを見渡していく。


「―――危ない!コラッ!まったくお転婆だなぁ……」


思わず荷台側から身を乗り出してイェンリンの身体を抱きしめて支えるロドス。


「いや~ん♪ ロドスったら厭らしいわねん♡」


「何をバカ言っているんだ!……誰がお前にそんな真似するかよ」


「―――こんなことが団長の耳に入れば、一瞬で冥府へ行くことになるからな」


「ホントやめてくれ……お前の相棒が二度と会えないことになるぞ……」


メテロの容赦ない発言にロドスは青い顔に変わり、それを見たメテロは吹き出す。


そんな会話を弾ませながら、馬車は首都の西に向かって進む―――


「凄い……まるで別世界みたい……」


―――片田舎の村だけで過ごしてきたイェンリンにとって、道沿いに並び建つ多くの店を見渡しては感嘆の声を漏らしていく。


そしてメテロは、


「此方にあるのは間違いないんだけど……ちょっと近くの店の人に道を訊いてくるよ」


「―――私も一緒に行きたい!」


メテロが店に問い合わせに行くと聞いて、イェンリンもじっとしておくことは出来ない。


「いいけど、大人しくしていてくれよ?」


「―――失礼ね!私だって初めていくお店に迷惑なんて掛けないわよ」


憤慨するイェンリンに苦笑いを浮かべながら、メテロは場所を道の端に建つ店の一つを訪れる。


「―――ごめんください」


「……こんにちは~」


メテロに並び大人しく挨拶をするイェンリンを見て、カウンターにいた店主らしき婦人が答える。


「いらっしゃいませ♪ 今日はそのお嬢ちゃんの服を買いにきたのかしら?」


その店は服飾の店だったようで、店内には男から女、老人から子供まで着られそうな衣装が並んでいた。


「いや、申し訳ないけれど道を教えてもらいたいんです」


「道を?いいですよ♪ それで?どこへ行きたいのかしら?」


その中年の婦人は愛想よくメテロに答える。


「この辺りに高名な魔術師がお住まいだと伺ってきたのですが、御存知ありませんか?」


「魔術師?……ああ!ええ♪ ええ♪ 知っていますよ」


「本当ですか!それは此処からどう向かえばいいのでしょう?」


すると婦人はカウンターから出てきて、店の表に向かって歩き出す。


それをメテロとイェンリンも慌てて追いかけた。


店の扉から表通りに出た婦人は、


「このまま真っ直ぐに通りを行くと、道が二手に別れるわ。その道を右側に進んで暫く行くと赤いレンガの壁で造られたお家があるから」


「態々詳しく教えて頂いて、ありがとうございました」


メテロがペコリと頭を下げて婦人に礼を告げると、イェンリンも慌てて同じように頭を丁寧に下げる。


「いいのよ♪ 用事が済んで良かったら、またこの子のための服でも見に来て頂戴ね♪」


その一言にメテロは、


(なるほどな……情けは人のためではなく……ということだな)


ある意味で納得して微笑む。


「本日は時間があるか分かりませんが、この子は預かっている子なので両親に此方のお店のことを伝えておきます」


「あら、そうなのね♪ ええ、いつでもお待ちしていますわ♪」


そう言って婦人は自分の店に戻っていく時も、二人は頭を下げて見送った―――






―――再び馬車に乗り、出発すると婦人に教えてもらった道を進んでいく。


すると言われた分かれ道の先に、生垣に囲まれた立派な赤いレンガ造りの屋敷が見えてきた。


「大きなお家だねぇ……」


自分の村にはこんな立派な屋敷がないので、そのレンガの屋敷を見て流石にポカンと口を空けて見上げるイェンリン。


しかしメテロとロドスも同じく、これほどの屋敷の人物を訪ねる経験などなかったため、緊張感が漂っていた。


しかしすぐに意を決したメテロが、屋敷の玄関の扉を叩く。


間隔を置いて何度か扉のノックを続けていくと―――


「―――お待たせ致しました」


―――そこで扉が開かれて、その中から白い長袖のブラウスと黒いロングスカートを纏う金髪の女性が現れた。


「……/////」


メテロとロドスもその女性のあまりの美しさに言葉が出てこない。


これほどの美女を二人はこれまでの人生で見たことがなかった。


それはまるで御伽話の中に出てくる王女のような、そんな錯覚まで起こしていた。


「お姉さん……綺麗」


そこで二人の隣に並ぶイェンリンが女性に向かってそう呟くと、長い金髪の女性は視線をイェンリンへ向けてニコリと美しい微笑みを向けた。


そこでハッと我に返ったメテロは、


「し、失礼しました!―――私達はゴルゴダ村から此方に御住まいと聞いた魔術師様に御会いしたく訪ねて参りました」


此処へ来た理由を女性に伝えた。


「この屋敷の魔術師に……そうですか。どうぞ中へ御入りください」


「は、はい!」


美女は両扉を開き三人を屋敷のエントランスへ招き入れると、


「此方へどうぞ」


先導して客間に向かって案内を始める。


それに従って屋敷の中を進むイェンリン達。


客間に案内されて、


「―――暫く此方でお寛ぎください」


美女は屋敷の魔術師に話してくると部屋を出ていった。


「凄く綺麗な人だったね?」


美女が出ていくとイェンリンが素直な感想を二人に問い掛ける。


「ああ……あんな美人がこの世界にいるなんて、まるで御伽話から出てきた人みたいだ……」


メテロはまだ美女の余韻に浸っている様子だったが、


「……でも、あんな美人を使用人にしている、此処の魔術師って一体どんなヤツなんだ?」


ロドスはそんな美女の使用人を雇っている魔術師が気になっていた。


すると扉にノックが響き、


「―――お待たせ致しました。屋敷の主が御会いするそうです」


そう告げてから魔術師の部屋へ案内すると、再び先導する。


広い屋敷の中を進み、大きくて立派な木製の扉の前に立つと、


「お連れしました」


ノックをして中の人物に美女が断りを入れた。


「―――入っていいよ♪」


そのと扉の奥から軽快な女性の声が響き、メテロとロドスは緊張感が増し、イェンリンは遂に魔術師と対面出来ることに胸が高鳴っていた。


開かれた扉の先はどうやら書斎のようで数々の蔵書が収められた本棚が数多く壁際に立ち並び、その部屋の中央奥にある執務机には―――


―――エメラルドグリーンの髪を揺らし、


―――白い肌に深い緑の瞳をキラリと輝かせて、


―――赤いローブを纏った美女がイェンリン達をジロリと見つめる。


しかしその紅いローブの美女は真っ先にイェンリンへ視線を向けると、


「オホォ~♪ 何だ?何だぁ?その可愛らしい女の子は?どこの子なんだ?まあ、それはどうでもいいか♪……私の前に可愛い女の子を連れてくるとは……命知らずな奴等め」


そのセリフを聞いた瞬間―――


「―――ッ!」


―――メテロとロドスは真っ先にイェンリンを庇うように前に出る。


「ほう?……この最強クラスの魔術師とやり合う覚悟はあるって訳かい」


二人の行動を見て、魔術師は瞳を鋭く尖らせてメテロとロドスを睨みつけた。


その瞳から放たれた『威圧』によって全身が硬直したようになり、これまで感じたことのない恐怖に包まれたメテロとロドス。


「に、逃げろ……イェンリン!!」


―――異様なまでの力にメテロ達は恐怖に飲み込まれる。


何とか気を保ってイェンリンに逃げる様にメテロが叫んだ時―――


「いい加減にしないか!!」


「―――あ痛いぃ!!何するんだい!」


―――突然、白いブラウスの美女がエメラルドグリーンの髪をした魔術師の頭を叩いて、放っていた『威圧』を強制的に消し去った。


「客人にいきなりなんて真似をしている!まずは名乗るところからだろう!!」


白いブラウスの美女に促されて、顔を顰めていた魔術師だったが、


「ハイハイ……すみませんね……確かに礼儀知らずな真似だったねぇ……改めて名乗っておこうか♪ 私はこの屋敷の主にして『紅い魔術師』―――ゴンドゥルだよ」


自らを『紅い魔術師』と名乗った美女―――


―――ゴンドゥルと名乗った美女がニヤリと笑みを浮かべて改めてイェンリン達を見渡す。


「さあ♪ この変わり者の魔術師の元を訪れた理由を、御伺いしようか♪」


そう告げて何かを楽しむようにゴンドゥルは不敵な笑みを浮かべるのだった―――



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