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『黒神龍の御子外伝』紅神龍の御子になった少女の帝王学 ~剣聖イェンリン様のお気に召すまま~  作者: KAZ
第1章 運命の子

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魔術師ゴンドゥル

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―――ゴンドゥルと名乗った美女がニヤリと笑みを浮かべて改めてイェンリン達を見渡す。


自らを『紅い魔術師』と名乗った美女ゴンドゥルは―――


「さあ♪ この変わり者の魔術師の元を訪れた理由を、御伺いしようか♪」


そう告げて何かを楽しむように不敵な笑みを浮かべた。


「……」


しかし先ほどまでこの世のものとは思えない『威圧』を受けて、身動き一つ出来なくなったメテロとロドスはすぐには答えられないでいた。


すると―――


「―――私の村を護ってくれていた魔術師さんの魔術が消えかけているの!」


―――そこにイェンリンが臆面もなくゴンドゥルに言い放った。


「うん?私の村?魔術師の魔術?……何のことだい?」


幼い少女の拙い説明ではゴンドゥルも何のことなのか読み解くことが出来ない。


そこでメテロがイェンリンに勇気を貰ってゴンドゥルに語り始める。


「私達はこのメイローズから西に向かったところにあるゴルゴダ村の者です」


「……ゴルゴダ村」


「はい。遅くなりましたが私はメテロと申します。此方の男はロドス、そして彼女の名はイェンリンと申します」


「―――そうかぁ~♪ イェンリンちゃんっていうのねぇ♪」


ゴンドゥルはメテロとロドスには一切興味を示さず、イェンリンに固執した視線を向ける。


しかしメテロは此処で話を終わらせる訳にはいかないと、その先を続ける。


「私達のゴルゴダ村には昔、村を訪れた魔術師が施してくださいました結界魔術が幾つもございました―――」


「―――ございましたってことは、効果が消えたか弱まっているってところかい?」


まるで見通しているかのようにメテロの言いたいことを言い当てたゴンドゥルに驚いたが、


「その通りです。我々の村は、村を取り囲むように施された結界魔術によって魔物から護られていました。しかし、その結界が弱まったことによって村人の生活圏にまで魔物が迫るようになったのです」


「複数の結界魔術で……」


ゴンドゥルは何かを思うように考え込んでいた。


「あのね!あのね!―――年中いつも木の実がいっぱいなる森にも、魔物が出たの!それでね、私と妹のエリシラと幼馴染のマルクが襲われたの……」


イェンリンも何かを伝えようと必死で自分が体験したことを話した。


「年中いつも……木の実がなる森……あっ!」


そこで何かに気がついたような声を上げたゴンドゥルが、その場にいる全員の視線を集めた。


そして暫く黙り込んでいたゴンドゥルだったが、


「つまり……君達の望みは、その結界を補強、若しくは新たに結界魔術を施して欲しいってことでいいのかな?」


メテロとロドスに向かって真意を問い掛けた。


「その通りです。このままでは……村に大きな災いが訪れそうだと自警団の団長が申していました」


「父さんが、そんなことを……」


「……」


イェンリンが自警団の団長と言われてダンクがそのような話をしていたことを、この場で初めて知ったのだが、その反応を白いブラウスの美女は沈黙したまま見つめている。


「……いいだろう。村に出向いてその結界を何とかすれば良いってことだろう?やってあげてもいいよ♪」


「―――本当ですか!?」


笑みを浮かべながら承諾してくれたゴンドゥルに、メテロは思わず喜びで声が大きくなった。


「但し!……イェンリンちゃんを一晩、この屋敷に泊まらせること」


「―――なっ!?なんだって!!」


突然メテロ達に突きつけられた条件に、今度は顔が強張る。


「それは……この子はその団長からお預かりしたお嬢さんです。それを勝手に見ず知らずの御屋敷に止めるなどと―――」


「―――この子を連れてきたってことは……私のことも色々と聞いてきたって訳だろう?でなきゃ女の子なんて此処まで態々連れてくることなんてない」


「―――うぐっ!」


確かにイェンリンをこの魔術師のところまで連れてきた理由は幼い女の子が好みだという趣向の噂を聞いてのことだけに、図星を指されてメテロは言葉が繋がらない。


「私は別にいいけど♪」


そこでそんなことを言い出したイェンリンに、メテロとロドスが驚く。


「イェンリン!!お前―――」


「―――だって、この魔術師さん良い人だよ♪ だって見ず知らずの村を助けにきてくれるって言ってくれているんだもの♪」


まるで猜疑心など持っていないイェンリンの言葉に、メテロとロドスも肩の力が抜けてしまった。


「アハハッ♪ この子の方がよっぽど人を見る目を持っているみたいじゃない♪ 二人とも心配しなさんなよ。別に獲って食おうなんて思っちゃいないよ♪ 只今晩、此処で私の話し相手になってくれたらそれでいいのさ」


笑い飛ばしたゴンドゥルの様子を見て、


「……アンタが凄い魔術師だってことは分かったよ……だけど、俺達もこの子の両親に必ず護ると誓ったんだ……はい、そうですかと差し出して此処から離れる訳にはいかない……」


ロドスがイェンリンを護る意志を示す。


「う~ん、だったら君達も屋敷に泊まることを許可しよう。食事くらいは出してあげるから」


するとゴンドゥルはあっさりとメテロとロドスの宿泊も許可する。


「よ、よろしいのですか?」


ゴンドゥルの気持ちが変わらないうちにと確認を取るメテロに頷いて返すと、


「いいってこと♪ さあ、それじゃあ部屋に案内させよう。それと夕食も用意させるよ」


そう告げて白いブラウスの美女に三人を部屋まで案内させるのだった―――






―――三人を部屋へ案内し終わった白いブラウスの美女がゴンドゥルのところへ戻ってくると、


「お疲れ様~♪―――ブリュンヒルデ」


戻ってきた白いブラウスを纏う美女に労いの言葉を掛けるゴンドゥル。


するとブリュンヒルデはプルプルと身体を震わせながら、


「―――何を考えている!!ゴンドゥル!」


先ほどまでの使用人然とした態度とは打って変わり、対等な口振りでゴンドゥルを怒鳴りつけた。


「おお~♪ 怖い!怖い!」


まったく恐れている気配もないくせに怯えたような態度を取るゴンドゥルを見て、ブリュンヒルデのこめかみの血管がブチッ!とキレる音がした。


「私とお前がこの国に滞在している理由をもう忘れたのか!!」


「―――分かっている!分かっているから!……余り大きな声を出すと、あの子達に聞かれるわよ?」


「クッ!……大体こんな仕事は本来ならヒルドの仕事のはずだろう」


そこで新たな人物の名を口にしたブリュンヒルデに、ゴンドゥルは右手をヒラヒラと空中に泳がせながら答える。


「そのヒルド自身が別の国に赴いているんだもの。あの子の身は一つしかないんだから仕方ないじゃない。あの子の配下の子達も彼方此方に散らばっているからねぇ……」


「今……ヴァーミリオン皇国を取り囲む国々の情勢は動きが激しい。油断したところで盟約を交わした国母アルタニアの国が滅ぼされるようなことがあってはならぬこと」


「そうさせないためにも、裏で私達が情勢を監視しているんだろう?それよりブリュンヒルデ……お前あの子供のことをどう思った?」


「あのイェンリンという子供のことか?そうだな……何故か不思議な感覚を覚えた……こんなことは初めてだな」


「私もだよ。あの子からは平民とは思えない何かを感じた。まるでどこぞの王族のような、そんな血の気配を感じた」


「お前は吸血鬼か何かだったのか?」


「何万年も生きてくれば、もう吸血鬼とそう変わらないだろう?」


「―――魔族と我等を一緒にするな!」


憤慨したブリュンヒルデに苦笑いを浮かべたゴンドゥルだったが、


「まあ、いいさ♪ 今夜その一端を知ることが出来れば、私の探求心も大人しくなるってものだよ♪」


そう告げてブリュンヒルデの前に立ち上がると、


「それじゃあ―――お休み中のお姫様の顔でも拝んでくるわ♪」


そう言って書斎を出ていくのだった―――






―――その頃、


イェンリンは案内された自分用の客室に興奮が治まらないでいた。


「すご~い!昨日まで泊まっていた宿屋とは大違いの部屋だわ♪」


天蓋付きのベッドに壁には価値の高そうな絵画や、部屋の隅には同じく高そうな花瓶や壺まで配置された部屋を夕食前から何度もキョロキョロ見渡しては、同じことを繰り返して口にしていた。


確かに昨日までの安宿の個室に比べれば、この部屋は貴族が使うと言ってもおかしくはない高貴な気品と調度品による調和に満ちた部屋だ。


イェンリンのような年端もいかぬ少女と言っても、その高貴な部屋に興奮しない訳がなかった。


「エリシラが見たら驚くだろうな♪ 見せてあげたいな……」


―――その時、部屋の扉をノックする音が響く。


「―――は~い♪」


扉を叩いたゴンドゥルは、


(まだ起きていたのか……子供だからもう寝ているかと思ったのに)


てっきり疲れて眠っていると思っていただけに、元気な返事が返ってきて呆れ気味の表情を浮かべる。


(まあ、それならそれで―――)


そう思って扉を開くと、そこに現れたゴンドゥルの姿を見てイェンリンが益々興奮する。


「魔術師さん♪―――どうしたの?」


元気に笑顔を向けるイェンリンにゴンドゥルも笑顔で答える。


「こんばんは♪ イェンリンちゃん。夜遅くまで起きている悪い子がいないか、魔術師のお姉さんが見回りにきたよぉ~♪」


そう告げながらイェンリンの横になっているベッドに近づくゴンドゥルは、そっとベッドの縁に腰を下ろした。


「あら♪ 私の村だと、このくらいの時間にはまだ眠らないわ♪」


得意気に答えるイェンリンに対して、


「はぁ~♪ ホント可愛いねぇ♡ ところでイェンリンちゃんのお父さんは自警団の団長をしているのかい?」


「そうよ!父さんは魔術が得意でとっても強くて、皆に頼りにされているの♪」


「へぇ~♪ お母さんは何しているの?」


「お母さんもね、凄い魔術師なんだよ!村で魔法薬をいっぱい作って、怪我をした人とか病気の人をね!いっぱい治しているんだよ♪」


「そうなんだねぇ♪」


「それと妹のエリシラがいるんだぁ♪」


「―――イェンリンちゃんの妹!?可愛いのかい?」


「うん♪ 大人しいけど、とっても素直で可愛い子よ♪」


「そうなんだぁ♪ 早く会ってみたいわねぇ♪ ところで、まだちゃんとイェンリンちゃんの御名前を訊いていなかったと思ってね」


「私?―――私はイェンリン=ロッソだよ♪」


その名を聞いてゴンドゥルの深い緑の瞳が僅かに鋭くなった。


「……ロッソ」


その家名にゴンドゥルは心当たりがある―――


(―――確かシニストラ帝国の魔術の家系にそんな家名があったわね……その家で『ロッソの魔女』と呼ばれた不老不死の魔術師が皇帝の側室になって公爵夫人の地位を貰っていたはず。でも確か十年ほど前にその魔女は産んだ子と共に姿を消したってヒルドから聞いたことがある……)


「―――イェンリンちゃんは今幾つなの?」


「十歳になったわ♪」


その返事を聞いたゴンドゥルは、頭の中で何か大きなピースがカチリと填まった音が響いた。


「―――ねぇ♪ 魔術師さんはどんな魔術が使えるの?」


笑顔でゴンドゥルに問い掛けるイェンリンを見て、微笑みを浮かべながら一緒にベッドへ横になると、


「それじゃあ♪ 眠たくなるまでゴンドゥルお姉さんの魔術についてと、冒険話を聞かせてあげよう♪ まずは―――」


突然始まったゴンドゥルの話にイェンリンは瞳をキラキラと輝かせて聴き入る。


こうしてイェンリンが眠りに就くまでゴンドゥルは愉快で豪快な寝物語を語り聴かせていくのだった―――



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