超越者の道
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―――襲い掛かってきた一眼鬼王の大剣を、その細い身体で手にした真紅の槍で受け止めていた。
【UGOOOッ?!】
自慢の大剣を細い槍一本で受け止められて、一気に一眼鬼王が驚愕の顔に変わる―――
「貴様如き汚れた王に私の紅蓮槍=朱雷を見せてやる価値もないが……イェンリン!フレイアからの言伝だ」
「……フレイアから?」
ギリギリと大剣を押し込み、潰そうとする一眼鬼王をまったく意に介す様子のないゲイラホズが告げる。
「ああ……この度の一眼鬼討伐は無事に達成された。それ故に紅蓮剣=業炎を返す。そしてその剣で新たに試練として―――この一眼鬼王を倒せとのことだ」
ゲイラホズの口から告げられたフレイアからの新たな試練に、イェンリンはその手に戻った業炎を鞘からゆっくりと引き抜く……
そこには真紅の刀身が鏡の様に輝き、イェンリンの面影が映り込んでいた。
「―――グゥ!!」
するとイェンリンはその右目に突き刺さった木の枝を掴み、一気に引き抜いた。
「ヒィ!?」
その痛々しい行為に皇女であるシータが短い悲鳴を上げる。
だが、当のイェンリンは―――
「フフッ♪……お帰り……業炎」
―――その握りしめた業炎の帰還に歓喜して笑みを浮かべていた。
しかし人の心の機微など露とも思わない一眼鬼王が、雄叫びを上げて大剣を振り被る。
【GUOOOOO―――ッ!!!】
するとそれまでその大剣を支えていたゲイラホズが紅蓮槍=朱雷をブンッ!と回転させると、まるでイェンリンにその場を譲る様に歩み始めてシータの傍へ立つ。
だがイェンリンはその行動を自然に受け入れて、手にした業炎を両手に構えた。
【GYUGAAAAA―――ッ!!】
―――雄叫びと同時に大剣を振り下ろす一眼鬼王。
馬鹿らしいほど巨大な剣だが、それを正確にイェンリンの立つ位置へ振り下ろした一眼鬼王の斬撃が剣圧で周囲に暴風を巻き起こす―――
―――だが、
【―――GYUAッ?!】
その暴風を吹き飛ばすほど真紅の『龍気』を放ったイェンリンが、その爆風のような斬撃を繰り出した大剣を業炎で受け止めていた―――
―――『身体強化』
―――『身体加速』
―――『思考加速』
真紅の『龍気』が全身を駆け巡り、身体強化系の能力を完全解放してその大剣を平然と受け止めるイェンリンを見てシータは―――
「……イェンリン」
―――先ほど言っていた怪我を本当に負っているのかと疑問にさえ思えた。
ゲイラホズがやって見せたように今度は業炎で一眼鬼王の一撃を受け止めたイェンリンは、その位置から右拳を握りしめると次の瞬間―――
「―――『衝撃拳』」
―――残像を生じる腕から放たれた『衝撃拳』が、正確に巨体の一眼鬼王の顎を撃ち抜いた。
【―――GUBUUッ!!】
顎を撃ち抜かれた衝撃で一気に身体を仰け反らせて上を向いた一眼鬼王に、イェンリンは巨大な目玉の高さまで跳躍する―――
―――そこで再び『衝撃拳』を繰り出そうとしたその時、
【GUHOOOO―――ッ!!!】
目の前で開いた大きな口の前に、赤く輝く魔法陣が展開される―――
「あれは?!―――イェンリン!逃げて!!」
―――その魔法陣を目にしたシータが叫ぶ。
「―――ッ!」
次の瞬間―――
―――一眼鬼王の口元から爆炎がイェンリンに向けて襲い掛かってくる。
一瞬で炎の渦に巻き込まれたイェンリン―――
―――だが地上からそれを見上げるゲイラホズは何も反応を示さなかった。
一眼鬼王は炎に飲まれたイェンリンに殺したと確信を抱く―――
「アアァ……イェンリンが……消し炭に……」
目の前で起こったことを現実と思いたくないシータが、その衝撃に打ちのめされている時、
「―――心配しなくてもいい」
傍に立ち護衛するゲイラホズが無表情な中でシータに告げた。
炎が燃え盛る中、次の獲物を物色し始めた一眼鬼王だったが、
「―――イェンリン!!!」
シータの目に一眼鬼王の更に頭上高くから舞い降りてくる姿が目に映る。
『魔物憑きの森』が一望出来る高さまで舞い上がったイェンリン―――
―――上空でその紅髪の混じる長い金髪を舞い踊らせて、
その耳に風切り音が響きながら一眼鬼王の直上から急降下していく―――
―――広大な空の上から降下しつつ、その真紅の瞳を鋭く尖らせて地上の一眼鬼王を捉えていた。
その手の業炎を構えると、一眼鬼王目掛けて振り下ろす―――
―――しかし一眼鬼王は上空から降下するイェンリンに大剣の切先を向けると、その周囲に今度は水色に輝く魔法陣で円を描く様に幾つも展開した。
そしてそこから放たれたものは―――
―――鋭利な先端をした氷柱のような塊が次々と撃ち出されていった。
「あれは!―――《氷槍》!!どうして魔物が『上位』魔術を!?」
一眼鬼王の魔術を目にしたシータが叫ぶと、傍に立つゲイラホズが答える。
「魔物であろうと『上位』魔術を扱えるヤツはいる。超上位種の一眼鬼王であれば造作もないことだ」
上空へ向かってくる無数の《氷槍》を、真紅の瞳で睨みつけたイェンリンは、業炎を構えると―――
「ハァアアッ!!―――『真空刃』!!!」
―――その気迫と共に《氷槍》に劣らぬ無数の残像を繰り出す業炎から真紅の斬撃を放っていく。
ボンッ!バキッ!ドンッ!バンッ!と次々に衝突する魔術と剣術―――
―――その空中で激突する水色の《氷槍》と真紅の『真空刃』が次々に激突していった。
そして空中で砕け散った《氷槍》が地上に降り注いでいく―――
―――地上から見上げていたシータの目に、空中で砕かれた氷の破片が陽の光を反射して、広大な空でキラキラと輝きを放っていた。
「……綺麗」
今イェンリンが激闘を繰り広げているにも関わらず、シータはそう呟かずにいられないほど、その戦場は美しい輝きに満ちていた―――
―――舞い降りるイェンリンは一眼鬼王が放つ《氷槍》に足を掛けながら、次々に飛び移って地上の一眼鬼王を目指す。
目の前に迫る《氷槍》を振り抜いた業炎で真二つに斬り裂くと、その勢いで一眼鬼王に振り被った業炎を一気に振り抜く―――
―――宙を斬り裂く真空の斬撃だが、一眼鬼王は手にした巨大な大剣を地上から振り翳して迫りくる真空の刃を粉砕した。
「ッ!―――面白い!!」
その剣技を目にしたイェンリンの中で、何かが激しく全身を駆け巡るのを感じる。
それはこれまでの戦いの中で培い、積み上げてきた確かな経験の脈動だった。
頭上まで降下してきたイェンリンを狙い、一眼鬼王の大剣が豪快な軌跡を描く―――
―――大剣とは思えない高速で確実にイェンリンを捉えたその一撃が届こうとした瞬間、
【GUHOOッ!?】
その斬撃で確かにイェンリンの胴体が真二つとなる―――
「イヤァ!!!―――イェンリン!!!」
―――その光景を目の当りにしたシータが絶叫を上げる。
しかし真二つにされたイェンリンがその場で姿を消していく―――
―――更には周囲に幾人ものイェンリンが現れる。
「あれは!―――『幻影攻撃』!!」
今度は幾人ものイェンリンを目にしたゲイラホズが叫んだ―――
―――それは『紅の戦乙女』が戦闘に用いる『戦乙女の闘技』の一つだ。
だがこれまでイェンリンにはまだそれを伝授してはいない―――
「まさか……自力で修得したのか……」
―――普段冷静な態度を貫くゲイラホズの顔に、驚愕と歓喜の感情が迸る。
『幻影攻撃』により無数のイェンリンがそれぞれ地上で業炎を構えると―――
「これで最後だぁああ!!!
―――『真空刃』ォオオッ!!!」
―――無数のイェンリンから同時に放たれる『真空刃』が、大剣で護りに入ろうとする一眼鬼王へ襲い掛かる。
【GUGYAAAAAAAAA―――ッ!!!】
如何に大剣でその身を護ろうとしても、四方を取り囲んだイェンリンの一斉攻撃を防ぎ切ることは出来ない―――
―――まず巨大な右腕が肩から斬り裂かれて地上に落ち、
左脇腹を捉えた斬撃がそこを大きく斬り裂く―――
―――右太腿の半分を斬り裂き大量の鮮血を上げると、
首筋に届いた一撃はパクリッと切り裂き、そこから空を覆わんばかりの鮮血が宙を舞った―――
―――そして一眼鬼王の巨大な目玉が上向きで半白目に変わると、
「―――『衝撃拳』!!!」
幻影が消え、最後に残った本物のイェンリンの『衝撃拳』が一眼鬼王の巨大な眼球を撃ち抜いた―――
―――その場に倒れ込んだ一眼鬼王の姿を、業炎を手にしたイェンリンが見つめている。
すると―――
―――イェンリンの脳裏にはガラァーン♪ ガラァーン♪ とまるで教会の荘厳な鐘の音のような音が鳴り響き、
そして―――
―――意識もしていないのにステータス表示が勝手にイェンリンの脳裏に浮かび上がり、そこに表示されている自身の能力を見つめる。
「……Level……100……本当に……Level.100になったのね」
不可能だと思っていたLevelへ到達したことを告げる鐘の音―――
Name:炎零=ロッソ
年齢 17歳
Level 100
Class 紅神龍の御子 超越者
超越者:Level.100以上になった者
生命 1820/1820
魔力 728/728
体力 5430/5430
攻撃 2172/2172
防御 910/910
知力 100
器用 100
速度 100
物理耐性 100
魔法耐性 100
―――『紅神龍の加護』
『位置把握』
自身の位置と紅神龍のいる位置が把握出来る
『従属』
紅神龍の眷属を従える
『伝心』
紅神龍とその眷属と念話が可能
『収納』
空間を開閉して物質を保管する能力
『共有』
紅神龍と同じ寿命を得る
『剣技』
体力・攻撃・速度を増加し剣技を成長させる
『不屈』
弛まぬ研鑽により能力の成長を促す
―――『戦乙女の闘技』
『真空刃』
真空波の斬撃であらゆるものを斬り裂く
『衝撃拳』
音速を超える拳の衝撃波が対象を穿つ
『幻影攻撃』
残像を繰り出しながら分身攻撃を仕掛ける技
―――《取得魔法》
『身体強化』
魔力量に応じて体力・攻撃力・防御力上昇
『対魔法防御』
魔力量に応じて対魔法攻撃防御能力上昇
『火属性魔術』中位/中位
『水属性魔術』中位/中位
『土属性魔術』中位/中位
『風属性魔術』中位/中位
『光属性魔術』中位/中位
『闇属性魔術』中位/中位
『無属性魔術』中位/中位
―――《取得スキル》
『鑑定眼』
物質の理を視る
『精神耐性』
あらゆる精神攻撃に対する耐性
『身体加速』
速度を瞬発的に上昇させる
『思考加速』
任意で思考を加速させる
『索敵』
周囲の索敵能力
索敵対象:生物・物質
『視覚強化』
『夜目』『顕微視』の能力
遠くを見る能力と極小物質を見る能力
『危機検知』
危機接近を感知する能力
『隠蔽』
対象の看破能力と比較し高い能力が有効となる
『看破』
対象の隠蔽能力と比較し高い能力が有効となる
『見切』
戦闘時の行動予測 武器軌道推測能力
『遠見』
『索敵』から派生した遠方を見る能力
『威圧』
『殺気』により恐慌状態へ堕す
Levelの低い対象では死に繋がる
『挑発』
ヘイト集中能力
魔物に有効
『寒暑耐性』
極寒・灼熱エリアで体温調整し適温を維持する
『即死耐性』
即死攻撃・即死状態の一時回避
「―――Classが増えている……『超越者』……」
イェンリンは自分自身の能力の、その変化を見つめていく。
「―――『戦乙女の闘技』に……『幻影攻撃』?……これって、最後に一眼鬼王に放った……」
『戦乙女の闘技』へ新たに刻まれた技に見覚えがなかったイェンリンだが、先ほどの戦いで一眼鬼王に繰り出した技を思い出していた。
「それに魔術が『中位』に上がっている!?……ゴンドゥルは喜んでくれるかしら♪」
そこでゴンドゥルの顔が浮かび、思わず顔が綻ぶイェンリン。
そのイェンリンの背後から―――
「―――イェンリィイイイン!!!」
―――手を振って駆け寄るシータと、微笑みながら此方に歩み出すゲイラホズ。
振り返るとイェンリンも二人に大きく手を振るのだった―――
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