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紅神龍の御子になった少女の帝王学 ~剣聖イェンリン様のお気に召すまま~  作者: KAZ
第3章 強者への道編

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一眼鬼との戦い

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―――ゴンドゥルと修行を行っていたシータ。


そのゴンドゥルの元にイェンリンを影から護衛するヒルドから『伝心』が届く―――


【―――ゴンドゥル】


「―――ッ!」


ヒルドからの『伝心』の声が頭に響く。


【どうしたんだい?ヒルド】


【今、イェンリンが一眼鬼サイクロプスの一匹と戦闘に入った】


【ッ―――そうかい……遂にそこまで行ったのかい】


ゴンドゥルはイェンリンが順調に成長していることに胸を撫で下ろす。


その報せを受けてゴンドゥルはシータを見て、


「ちょっと、イェンリンの応援に行ってみるかい?」


「―――えっ!?」


突然思いも寄らない提案をシータに告げるのだった―――






―――ゴンドゥルからの思いも寄らない提案に、シータの胸は高まった。


修行が別々になり、顔を合わせることも出来なくなったイェンリンのことは、ずっと気になっていたので今すぐにでも飛んで行きたい気持ちを抑える。


「丁度いい♪ 教えた《空中浮揚《レビテーション》》の練習も兼ねて様子を見に行くよ」


「―――はい!」


嬉しそうに笑みを浮かべるシータだったが、


「但し!イェンリンにはイェンリンの鍛錬がある。勝手に手を出したりしないこと。これだけは約束だよ?」


ゴンドゥルの釘を刺すような言葉にシータはグッと唇を噛みしめる。


「ッ!……はい、御約束します」


そう言い切ってゴンドゥルに決意の固い瞳を向けた。


「……いいだろう。では早速教えた《空中浮揚《レビテーション》》をやってごらん」


「―――はい!」


ゴンドゥルに促されてシータは全身に魔力を漲らせると、


「―――《空中浮揚《レビテーション》》」


詠唱すると同時に足元がフワリと浮かび上がり、徐々に空に向かって上昇していく。


「うん♪ やっぱり憶えの良い子は教え甲斐があるねぇ……」


シータの《空中浮揚《レビテーション》》を確かめたゴンドゥルは自分も空に浮かび上がり、ヒルドから教えられたイェンリンがいる森の方角に向かって方向転換すると、


「さあ!―――ついておいで!!」


その場を飛び立ち森の上空をシータと共に飛翔していくのだった―――






―――ゴンドゥルとシータが深い森の奥まで飛行を続けた先で、


「ッ!―――あれかい」


二人は視線の先に立ち昇る土煙を目にした。


「一体何が起こっていますの!?」


それをゴンドゥルと共に目にしたシータは、森の奥で巻き起こる土煙の中に巨大な体躯が立ち上がり、木々の先端から頭を飛び出させた光景に目を見開いた。


「あ……あれが、一眼鬼《サイクロプス》……」


生まれて初めて見る一つ目の巨人にシータは言葉が詰まった。


しかしその巻き起こる土煙の中から一眼鬼《サイクロプス》の肩の高さへ飛び出した人影がある―――


「ッ!―――イェンリン!?」


―――シータが叫んだ通り、飛び出してきた者は誰でもないイェンリンだった。


「オオオオオオォ―――ッ!!!」


空中に飛び上がったイェンリンが土煙に巻かれながら、その右腕を引き絞ると―――


「―――『衝撃拳《ダムド・インパクト》』!!!」


―――音速で繰り出された拳から放たれた衝撃波が、巨大な一眼鬼《サイクロプス》の眼球に激突する。


【UGAAAOOOOOO―――ッ!!!】


イェンリンの背丈ほどある一眼鬼《サイクロプス》の眼球に衝撃波が突き刺さると、そこから赤黒い鮮血が噴き出していく―――


―――瞳を巨大な手で抑え、辺りの木々にぶつかりながら暴れ回る一眼鬼《サイクロプス》を、地上に舞い降りたイェンリンが続けて右腕を振り翳す。


「―――『真空刃《ホロウ・ブレイド》』!!!」


右腕から放たれた『真空刃《ホロウ・ブレイド》』は、これまで研鑽された真空の刃が空中を斬り裂き、一眼鬼《サイクロプス》の巨体の胸に斬撃を刻みつけた―――


【GUOAッ!?UGAAAA―――ッ!!!】


―――眼を潰され、その上に斬撃を受けた一眼鬼《サイクロプス》は、両腕を振り回して暴れ回る。


「クッ!―――浅かった!!」


地上から一眼鬼《サイクロプス》の胸に刻んだ傷が致命傷に及ばなかったことを歯噛みするイェンリン―――


―――しかし、


(―――私の『真空刃《ホロウ・ブレイド》』が効いていない訳じゃない!)


その確証を得ただけでもイェンリンには一眼鬼《サイクロプス》とのこれからの戦いに重要な点だった―――


その確証を得たイェンリンだったが、当の一眼鬼《サイクロプス》は視界を奪われて動転し、手に当たった木を握りしめて根元から引き抜くと、それを棍棒のように振り回し始めた。


「―――これは厄介なことになったわね!」


暗闇の中で襲い掛かってきた斬撃に怒り狂った一眼鬼《サイクロプス》は、少しの気配を感じてもその先に向かって引き抜いた木を振り回していった。


その攻撃を回避しながらイェンリンは森の中を駆ける。


「―――ハァ!ハァ!」


―――『身体加速』


―――『身体強化』


―――『思考加速』


全身に強化系能力を張り巡らし、森の中を駆けるイェンリンだったが、


「―――ッ?!」


その疾走する先へ一眼鬼《サイクロプス》の棍棒と化した木が襲い掛かる。


「―――おかしいわ!」


(眼を潰したのにどうして私の位置が分かるの!?……耳がいい?いや、そんな風にも感じられない……)


森の中を駆け抜けながら、自分の動きに反応する一眼鬼《サイクロプス》に不気味な気配を感じるイェンリン―――


―――そのイェンリンの動きに、突然木が頭上から襲い掛かる。


「―――なにぃ!?」


『身体加速』と『思考加速』の能力で、一眼鬼《サイクロプス》を圧倒する速度で移動していたはずのイェンリンを正確に捉えた一撃が大地にメリ込み土煙を上げた―――






―――その一撃を目にしたシータは、


「……あっ……ああ……」


余りの激戦に絶句していた。


しかし傍で浮遊するゴンドゥルはイェンリンと一眼鬼《サイクロプス》の状況を見下ろしながらも冷静な表情を向けていた。


「……来るよ―――」


そう口走ったゴンドゥルの声がシータの耳に届いた次の瞬間―――


【―――UGUAッ!?】


―――大地に叩きつけた棍棒代わりの木が、


「―――『真空刃《ホロウ・ブレイド》』!!!」


大地に突き刺さった先端から細切れのようになって崩れ落ちていく―――


―――手にした木がバラバラに粉砕されていく感触を覚えて、思わず前のめりに倒れ込みそうになる一眼鬼《サイクロプス》だったが、


「オォオオオ―――ッ!!!

『衝撃拳《ダムド・インパクト》』ォオオオ―――ッ!!!」


更に地上に倒れ込む一眼鬼《サイクロプス》の胸板に向けて、イェンリンの『衝撃拳《ダムド・インパクト》』が放たれる―――


―――その衝撃波が一眼鬼《サイクロプス》の胸に激突した次の瞬間、


「―――オォオオオオッ!!!」


雄叫びと共に次々とそこから放たれる無限の『衝撃拳《ダムド・インパクト》』の衝撃が一眼鬼《サイクロプス》へ撃ち出されていく―――


―――数十発、数百発と繰り出される『衝撃拳《ダムド・インパクト》』


「オアアアアアッ!!!

―――砕ぁけぇろぉおおおおおお!!!」


放たれる『衝撃拳《ダムド・インパクト》』はいつの間にか両腕の拳から繰り出されて、イェンリンの目の前を覆う程の拳の残像が衝撃波を生じさせていく―――


―――巨体の一眼鬼はそれらの拳をすべて正面で受け止め、全身にイェンリンの衝撃波が突き刺さっていく。


【GYOAッ!?―――GUBAAッ!!GOBOOッ!!】


その衝撃波の一つが前屈みになっていた一眼鬼の額の角を圧し折る―――


【―――GUBOAッ!?】


―――その瞬間、


まるで一眼鬼が方向感覚を失ったかの如く、明後日の方向へ向かって逃げようとするが、先ほどまでの鋭敏な動きを明らかに欠いていた―――


「―――あの角が眼の代わりをしていたのか!!」


―――その挙動から角が眼の代わりをしていたと推察したイェンリンは、更に追撃を巨体に撃ち込んでいく。


そして―――


―――既に全身が血塗れになった一眼鬼《サイクロプス》が、最後に放たれた一撃を受けてそれが胸部から大きな身体を貫通する。


【GOHA……GUBO……】


巨大な牙の生えた口元から大量の吐血を大地に零した一眼鬼《サイクロプス》は、やがてゆっくりと背後に倒れ込んでいった―――






―――巨体が地面に倒れ込むと土煙が上がり、やがてそれも収まっていく。


その様子を最後まで空から見ていたシータは、一眼鬼《サイクロプス》を倒したイェンリンの力に息を飲んだ。


「……さあ、戻るよ」


そこで囁くようにゴンドゥルがシータへ告げる。


「……は、はい」


その言葉にシータは何故か救われたような思いだった。


これ以上イェンリンの姿を見ていると、今抱いている恐怖が本物の恐怖に変わってしまいそうだったのをゴンドゥルの言葉に救われたのだ。


(……イェンリン……わたくしは……)


胸に抱くのは不安と恐ろしさと僅かな高揚―――


―――あの戦いを見てシータの中にある僅かな闘争心に小さな火種を着けていった。


『紅神龍の御子』の友になる―――


―――そう宣言したシータにとって、更に力をつけたイェンリンはまた前に進んでしまった。


隣に並び立ちたい―――


―――そう願っていたシータを置いていくイェンリンの背中が眩しくも寂しそうに思えた。


そうして《空中浮揚《レビテーション》》で森を飛び越えてきた二人は、屋敷の正面玄関の前に舞い降りる。


「―――それで、どうだった?今のイェンリンを見て」


地上に下りた途端、ゴンドゥルがシータに問い掛ける。


「……とても……強かったです……また前を行かれてしまいました」


その表現はシータの中にあるものだったが、言葉の意味はゴンドゥルにも察することが出来た。


「そうだねぇ……シータはイェンリンの隣を並んで歩みたいんだろう?」


ゴンドゥルが言葉の意味を理解してくれていることに、シータは驚くこともなく、


「はい―――ですので、またわたくしが追い掛ける側になりました」


その返事を聞いた時、ゴンドゥルは少し驚いていた。


本来であれば、あれほどの力の差を見せつけられると人は諦めの念を抱く。


しかし今目の前の皇女殿下は、圧倒的な力の差を見ても『紅神龍の御子』の友になることを諦めないと告げたのだ。


(これは若さなのかねぇ……それとも、この子の生まれ持つ強さなのか……)


どちらにしても、ゴンドゥルは目の前の若き弟子のことを嬉しく思って心からの微笑みを贈るのだった―――



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