フレイアの鍛錬
Xもよろしければフォローをお願いします!!
Xはじめました↓↓↓
https://x.com/KazBgd
pixivにて新規キャライメージ画像更新中!
※AI生成画像
https://www.pixiv.net/users/15342558
※モチベーションに繋がります!※
いいね・ブックマーク・評価☆☆☆☆☆採点いただけますと励みになります。よろしくお願いします。
―――紅龍城の広い中庭で、剣を手に取り向かい合った二人に静寂が流れていた。
フレイアとの訓練を開始したイェンリン―――
「……」
無言のまま佇むフレイアは右手にロングソードを握りながら、その切先は地面に向けて構えることもなくイェンリンを見つめる。
「……」
(さっきまでと全然空気が違う……まるで周りの時間が止まったみたいな……)
何も起こっていないはずなのに、イェンリンの身体は何故か重たい空気が纏わりついて身動きが取れない錯覚に陥っていた。
「ハァハァ……ハァハァ……」
フレイアに向けて剣を構えたままイェンリンの息が自然と上がってきて、短い呼吸を繰り返していく。
「……いつでも打ち込んできて構いませんよ。さあ、貴女がこれまで積み上げてきた研鑽のすべてを打ち込んでみてください」
静かな声で、それでも驕ることも上から見下すような言葉でもなく、訓練を進めようとする掛け声だった。
構えを取ることもなく、只立ち尽くしているフレイアに打ち込むことが躊躇されるところだが、相手は紅の戦乙女の第一位である。
(この人はきっとすごく強いんだ……私なんか足元にも及ばないくらい)
イェンリンが心配する必要などありはしない、雲の上の存在のような彼女が打ち込めと言っているのだ。
(懐かしい……まるで父さんに剣を教えてもらっていた時みたい……)
だったら、それは胸を借りる思いで飛び込んでいくしかないとイェンリンは決意した。
「……フゥ~」
改めて息を整えると、剣の柄をキュッと握り直す。
それと同時にイェンリンがフレイアに向けて前に出る―――
―――足を踏み出すと同時にロングソードを振り被り、
「―――ハァアアッ!!」
気迫を込めた斬撃をフレイアの肩口を狙って放つ―――
―――だが、その剣を右手に握った剣で軽々と受け止めるフレイア。
しかし続けて弾かれた剣を持ち直して初撃に続き二撃、三撃と撃ち出すイェンリン―――
―――放物線を描く様に右斜めに斬り掛かってきた二撃目も余裕で弾き返して、三撃目に来た左からの剣も片手で握りしめた剣で弾くフレイアの表情は無表情を貫いていた。
「ハア!ヤアァ!!―――タァアッ!!!」
始めこそ規則正しい弧を描いていたイェンリンの剣だが、まったく相手にもされていないフレイアの剣から感じる無機質な感触が焦燥感を掻き立てていく―――
(何?……この感覚は……まるで城壁に剣を打ちつけているみたいな―――)
「大体分かりました……基礎は出来ているようですね。では、ここからは此方もいきましょう―――」
「―――えっ?」
―――そうフレイアが告げた次の瞬間、
彼女の紅の瞳が一瞬輝いて見えた時―――
「アアァ……アガッ……」
―――イェンリンの目の前に赤い飛沫が飛び散っていく様子が、まるで時が止まっているかのようにゆっくりと広がって見えた。
(えっ……何?……綺麗……)
それはまるで―――
―――蒼い空に昼間から瞬く紅い星のようだった。
しかし、ブシュウッ!!!とその場に広がっていくそれは紛れもなく―――
―――イェンリンの紅い鮮血だった。
「ウウウッ!―――イギャアアアアアアッ!!!」
今も止めどなく溢れ出す鮮血を見て、イェンリンの絶叫が中庭に木霊して響く。
いつ斬られたのかも分からなかったほど、超高速のフレイアの斬撃はイェンリンの右肩から左脇腹までを切り裂き、その傷は内臓にまで達して腸が飛び出してきていた。
「い“、い”た“……い”た“い”ぃ“い”い“い”い“っ”!!!」
生まれて初めての致命的な傷を受けて、イェンリンは混乱と困惑と激痛と傷から錯覚で受ける熱で頭の中が混乱の渦中にある。
(ア“ア”ァ“……あ、熱いぃ!?痛いいぃ!!どっちなのぉ!!!)
「―――いけない!!」
―――その場に跪き、天を仰ぐ様に顔を上げて涙を流すイェンリンに駆け寄るのはレギンレイヴだった。
「―――『回復』を!!!」
すぐに『回復』の加護を発動し、イェンリンの全身を包み込むと見る間に斬り裂かれた傷が塞がっていき、まるで何もなかったかのように元へ戻っていく―――
「ア“……ア”ァ“……」
―――レギンレイヴの『回復』の加護はイェンリンをすぐに元の傷一つない身体に戻していくが、放心状態のイェンリンは変わらない。
「―――もう大丈夫ですよ。イェンリン?」
『回復』の効果を見極めてからレギンレイヴがイェンリンに話し掛けるがまるで反応がない……
するとチャキッと金属音を鳴らして、赤い血に塗れたロングソードの刃をイェンリンの前に差し出したのはフレイアだ。
「……ヒイッ?!」
―――それを見て正気に戻ったイェンリンだったが、つい先ほど受けた傷と死の恐怖が十七の少女に心の傷を刻みつけた。
しかしフレイアはしゃがみ込んだままのイェンリンの前で膝をつくと―――
「……怖いですか?」
―――静かにイェンリンへ問い掛ける。
「ハァハァ!……ハァハァ……」
荒い息使いを吐きながら、イェンリンは震えたままゆっくりと頷いて返した。
「今のが……死というものです。イェンリン……これから貴女は様々な戦いに巻き込まれることもあるでしょう―――」
静かな紅い瞳でジッと見つめながら語るフレイアのことを、恐怖に慄きながらも視線を外すことが出来ないイェンリン。
「―――その時、貴女の剣が相手を斬りつけたなら、今の貴女のような痛みを、熱さを、苦しみと恐怖を覚えることになります。私はそれをまず知っておいて欲しかったのです」
「ハァハァ……」
混乱した精神の中で語られたフレイアの想いは何故かイェンリンの脳裏に焼きついていった。
「ハァハァ……フ、フレイア……フレイアは……斬られたことが、あるの?」
「……はい。あります」
震えながら問い掛けるイェンリンに、フレイアは静かに答えた。
「フ、フレイアに傷をつけるなんて……そんな強い人がいたの?……もしかして、紅蓮?」
少しずつ会話をする舌が回り始めたイェンリンは、これほど強いフレイアに傷をつけた相手のことが気になった。
「紅蓮様ではございません……紅蓮様と同じく四大神龍の一柱であらせられます黒神龍ミッドナイト・ドラゴン様の元におります眷属の一人」
「黒神龍!?……その眷属ってことは……」
「―――我等と同じ『龍牙人』……黒神龍様の下には『龍の牙』と呼ばれる者達がおります」
「……『龍の牙』……何だか強そう」
イェンリンがそう告げると、フレイアは少しだけ口角を上げて微笑んだ。
「ええ……とっても強い者達です。その者達を率いる最強の序列01位……名をアリエスと申します」
「アリエス……その人と……闘ったの?」
訊いていいものなのか、一瞬躊躇ったイェンリンの問いにフレイアは、
「殺し合った訳ではございません……互いの技を磨き合う中で、本気の立ち合いを行ったのです。その際に大きな傷を負いました」
少し目を伏せて答えていった。
「その時も……レギンレイヴが治してくれたの?」
「―――はい♪ あの時は本気でフレイアが死ぬかと思って冷や冷やしましたよ……」
「―――そんなに!?……そのアリエスっていう人、凄く強いんだね……」
「いつか貴女も会える時がくるかも知れません」
「えっ!?―――ホントに?」
フレイアの言葉にイェンリンは期待と恐怖が入り混じった妙な感覚に囚われてしまう。
「神龍様同士は交流がありますから、黒神龍様が紅蓮様をお訪ねになってきた際にはアリエスが護衛してくるでしょう」
そこまで話したところで―――
「―――いきなり、やり過ぎじゃなかったのかい?フレイア」
―――会話に混ざってきたのは、ここまで鍛錬の様子を見守っていたゴンドゥルだった。
「これまでの御子も通ってきた道です……しかし、この鍛錬の際に貴女が庇うような真似をするのは初めてですね?ゴンドゥル」
「当然だろう?本来ならLevelがもっと上がってからが、アンタの出番のはずなのにイェンリンにはもう手を出してきた。その魂胆を確かめたくもなるさ」
「えっ?そうだったの?」
知らなかった話にイェンリンは問い掛けるが、フレイアは表情を変えずに、
「元々Levelが上がってからというのは語弊がありますね……私はその御子の可能性を見て鍛錬に参加しています」
ゴンドゥル達の思っていることを誤解だと訂正する言葉で答えた。
「ほう?するとイェンリンにちょっかいを出してきたのは、この子にそれだけの可能性を見出したってことなのかい?」
「それはイェンリン次第です」
「……」
フレイアの答えにゴンドゥルが閉口すると、再びイェンリンに視線を向けて、
「イェンリン―――貴女は僅かな期間で加護を二つも増やした。これは且つての御子達には無かった出来事です」
昨日の紅蓮の話を掻い摘んだフレイアの話をイェンリンはジッと聴き入る。
「早い段階から私と鍛錬すれば、貴女は強くなります……その『剣技』の加護を成長させることで、きっと誰よりも強く」
「誰よりも……それって、妹達を連れ去ったヤツ等よりも?」
「ええ。人族の領域を超える力を貴女は身につけることが出来ると断言しましょう。イェンリン……貴女は……強くなりたいですか?」
静かな声で問い掛けるフレイアの言葉に、イェンリンはグッと顔を上げて答える―――
「……強く……なりたい……大切な人達を奪うヤツ等を倒せるくらい!強く!!―――もっと強くなりたい!!!」
―――それは紅の戦乙女達を前にして、紅龍城の中庭に響き渡ったイェンリンの誓約だった。
「いいでしょう。では我等『紅の戦乙女』は必ず貴女を強くすることを誓いしょう。ですが、これからは先ほどのような痛みを伴う実戦を繰り返すことになります……覚悟は宜しいですか?」
その言葉に先ほどの内臓を飛び出させた自分の姿を振り返るイェンリンは、再び先ほど感じた恐怖が甦ってくる。
だが、そこでグッと奥歯を噛みしめて―――
「私は……皆を……私を強くすると誓ってくれた皆を信じるわ。それに……怪我をしてもレギンレイヴが治してくれるんでしょう?」
―――そう言って最後にレギンレイヴに視線を送った。
「流石に首を落とされたりして絶命したら救えませんよ?それだけは肝に銘じておいてくださいね?」
「それは嫌だね……分かった。気をつけます」
「では続きを始めましょう。此処からは様々な相手と対峙したことを想定して行います。ブリュンヒルデ、ゴンドゥル―――」
二人の名を呼びフレイアが語り続ける。
「―――これからゴンドゥルには魔術師相手の戦闘について、そしてブリュンヒルデは私と同じく剣士を相手にした時の鍛錬を行っていきます」
「確かにその鍛錬だと一気に学べて効率はいいね」
ゴンドゥルがそう納得すると、
「私とフレイアでは剣の使い方も違ってくる。その違いを学び取ってすぐさま対応出来るように」
ブリュンヒルデは早速この鍛錬で剣士として学ぶことを教えた。
「分かったわ!―――これからよろしくお願いします!!」
こうしてイェンリンの新たな鍛錬の方法が決まったのだった―――
いいね・ブックマーク・評価☆☆☆☆☆採点いただけますと励みになります。よろしくお願いします。
レビューも記入して頂けますと励みになりますので、宜しくお願い申し上げます。
感想頂いてとても励みになります!
誤字報告も本当にありがとうございます!
これからも宜しくお願い申し上げます!




