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『黒神龍の御子外伝』紅神龍の御子になった少女の帝王学 ~剣聖イェンリン様のお気に召すまま~  作者: KAZ
第2章 真紅の誕生編

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紅神龍の御子として

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―――紅蓮の案内で紅龍城の長い廊下を進んでいたイェンリンの目の前に重厚な金属で出来た両開きの扉が見えてくる。


その扉の前に止まった紅蓮―――


するとブリュンヒルデとゴンドゥルが紅蓮の前に進み出ると、その重い扉を左右に開いていった。


「さあ―――お入りなさい」


そう告げた紅蓮に促されて、イェンリンは恐る恐る知らない部屋へと足を踏み入れた。


「……ふわぁ」




―――そこには見たこともない豪華な部屋が広がり、


大きなテラスに通じるガラス窓と扉が壁一面を埋め尽くしている―――


―――窓の外には夜空で存在を示す蒼白い月が輝き、


高い天井に豪華な魔法石を用いたシャンデリアがキラキラと室内を照らしていた―――




―――巨大な執務机と豪華な背凭れ付きの椅子が佇み、その部屋の中心にはテーブルとそれを挟む様に革のソファーが配置されていた。


「……こんなに綺麗で広い部屋……生まれて初めて入った」


独り小さな声になって呟くイェンリンに、クスッと笑みを浮かべた紅蓮は、


「さあ、立っていないでそこのソファーに腰掛けなさい。ブリュンヒルデ、悪いのだけどお茶の用意をしてもらえるかしら?」


「―――はい、承知致しました」


そう答えたブリュンヒルデは部屋の隅にある食器棚の中からティーカップを人数分用意して、隅に置かれた小さなテーブルに置かれたティーポットや紅茶の葉が入った器で用意を始める。


「―――今日は色々あって疲れたでしょう?イェンリン」


その間、徐に問い掛けてきた紅蓮にイェンリンは笑顔を浮かべると、


「大丈夫!……と言いたいところだけど、本当に色々あったわ……とびきりだったのは……ゴンドゥルが牢屋にいたこと……」


途中から有り得ないといった感情を浮かべる暗い顔でゴンドゥルに視線を向けた。


「ゴメンって!でも、これからはこの『杖を振るう者』ゴンドゥルが御子を御護りしますよ♪」


「―――『紅い魔術師』じゃなかったの?」


異名が変わっていることを疑問に思っていたイェンリンがそう問い掛けると、ゴンドゥルは笑いながら答える。


「アハハッ♪―――よく憶えていたねぇ♪ あれは街で活動する時に使っていたのよ。そう言っておけば自然に『コイツは魔術師だ』って伝えられるでしょう?」


「確かに……初めて聞いた時からゴンドゥルのこと魔術師だって思っていたものね」


そう話しているイェンリンとゴンドゥルだが、紅蓮の前にブリュンヒルデは紅茶を淹れたティーカップを配膳していくと次にイェンリン、そして自分とゴンドゥルの分を置いてソファーに腰掛けた。


「今夜はイェンリンに―――『紅神龍の御子』について話しておこうと思ったの」


「……御子のこと?」


紅蓮の言葉を聞いてイェンリンに理由は分からずとも緊張が走る。


「そう……私はこれまで三人の御子を迎えたことがあるわ」


「これまでに……三人……」


何故か自分が初めての御子ではなく、先人がいたことに妙な感覚を覚えるが、イェンリンは黙って紅蓮の話に耳を傾ける。


「過去にいた『紅神龍の御子』達のことはまた話すとして、御子とは何か……まずはそこから話すことにしましょう」


自らに関わる話にイェンリンは無意識のまま背筋を伸ばしていた―――






―――ティーカップに手を伸ばして、包み込むようにそれを持つ紅蓮が一口だけ紅茶を口に含み飲み込む。


上品ながらもコクリと動く彼女の白い喉を見て、イェンリンはドキリと胸が鼓動を打った音を聞いた。


「そもそも私達―――神龍が四人いることはイェンリンも知っているわよね?」


「えっ?四大神龍のこと?それは勿論、フロンテ大陸に住んでいれば皆知っているわ」


「そうね。だったらイェンリンは……この世界のことを知っているかしら?」


「この世界のこと?……それは……」


自信無さげに呟くイェンリンへ紅蓮は手元に魔力を集中すると―――


「―――《投影プロジェクション》」


―――そこに光属性魔術の《投影》を用いてテーブルの上に何かを浮かび上がらせる。



挿絵(By みてみん)



「―――これがこの世界……フロンテ大陸を中心とした数多くの大陸がこの世界にあるの」


紅蓮は地図の大陸を指で示しながら説明していく―――


―――その指先で示したものは、




―――【フロンテ大陸】


―――【デストラ大陸】


―――【アンゴロ大陸】


―――【グラント大陸】




―――四つの大陸があり、それぞれに多数の国家が存在する。




また、その大陸とは別に大陸の周辺には単一国家である島国がある―――




―――【シニストラ帝国】


フロンテ大陸北部ノルドの西方、海を越えたところにある島国を単一国家で統一している国。


皇帝一族の絶対的な権力と強力な軍事力を誇る。


北部の寒冷な地域の為、農耕作物が育ちは悪く食料は海産物と輸入に頼っている傾向。


しかし希少金属鉱石が採掘されるため、貿易にて経済を回している。




―――【ソプラ諸島連合国】


古に列島の部族同士が盟約で繋がり、のちに現在のソプラ諸島連合国として成り立った。


海産物・漁業が主な生活基盤となっており、オーヴェストと海産物交易も行っている。


南方のゾット列島国とは漁業漁師同士の小競り合いが絶えない。




―――【ゾット列島国】


元々ソプラと同じ部族が統一していた列島国家。


ソプラ諸島連合国と同じく海産物・漁業が生活基盤であり、スッドと交易を行っている。


ソプラ諸島連合国とは漁業権の小競り合いが絶えず、一触即発の状況となっている。




―――といった強力な軍事力・経済力をもった国家が存在することを、紅蓮は丁寧にイェンリンへ説く。


「では、次に龍の縄張りについて―――」



挿絵(By みてみん)



―――新たな地図がテーブルの上に浮かび上がる。


「これはフロンテ大陸を四つに分けた龍の縄張りを示したものよ―――」


紅蓮は新たな地図に示された四大神龍について語り始める―――




―――フロンテ大陸


【大陸東部エスト】

―――『蒼神龍』ブルースカイ・ドラゴン


【大陸西部オーヴェスト】

―――『黒神龍』ミッドナイト・ドラゴン


【大陸南部スッド】

―――『白神龍』スノーホワイト・ドラゴン


【大陸北部ノルド】

―――『紅神龍』クリムゾン・ドラゴン




―――以上の四大神龍の縄張りが決まっており、この大陸の東西南北は古から神龍同士で不可侵の盟約があり、侵略行為は禁止されていることをイェンリンに聴かせる。


「凄い!―――この北部ノルドが全部、紅蓮のものなんだ……」


「正確には私のものではないわ。イェンリン、これだけは憶えておいて。その大陸は、その大陸に生きとし生けるものすべてのものなの」


「……生きているもの……すべてのもの」


王族や貴族が支配してきた領地や国の規模でしか世界を認識していなかったイェンリンにとって、神龍の御心に触れるその言葉は衝撃を与えた。


「そうよ。そしてそれぞれの縄張りには国名に『皇国』とついた国が一つあるわ。皇国とは、それぞれの縄張りで神龍が初めて人類と盟約を行った地が皇国となっているのよ」


「人と盟約?……その盟約って?」


聞き慣れない難しい言葉の意味を問うイェンリンに、それまで黙って聴いていたゴンドゥルが答える。


「―――盟約とは、神や人々に対して『固く誓って約束すること』を指すのよ」


「そうすると……ヴァーミリオン皇国では紅蓮が人と盟約を結んだってことなの?」


「ええ、そうよ。私が盟約を交わした相手は―――アルタニア=ヴァン・ヴァーミリオン。当時のヴァーミリオンで有力だった豪族の娘だったわ」


「それってどのくらい昔の話なの?」


何気に問い掛けたイェンリンに紅蓮は微笑むと、


「―――凡そ三百年前のことよ」


平然と長い時の流れを答えた。


「三百年前!?―――そんな昔の人と……」


驚くイェンリンに紅蓮は話を続ける―――


「―――当時からこの首都レッドは北部では繁栄し始めた都市だったわ。それはヴァーミリオン王家の力がそれだけ強大だったことを示していた」


「そんな昔から此処には街があったのね……」


感慨深くそう呟くイェンリンをゴンドゥルとブリュンヒルデは複雑な顔で見つめていた。


「……ちょっと待って?それだと……紅蓮って、一体幾つなの?」


三百年前のことを語る紅蓮にイェンリンは当然の疑問を口にした。


「もう歳なんて憶えていないわ。他の神龍達も恐らく憶えていないでしょう」


「―――えっ!?」


「私達は四柱神によって生み出された存在……意識を持った時はまだ何者も存在していない世界だったわ。そこから数万年……いえ数十万年かしら?それほど永い、悠久の時を過ごしてきたの」


「そんな……それじゃあ、ゴンドゥルも……ブリュンヒルデも……」


「―――そう、私達も紅蓮様の牙から生み出されて、もう何万年もの間ずっとこの世界を見てきたんだよ」


困惑するイェンリンにゴンドゥルは優しい声色で語り掛けた。


「他の神龍達の元にも彼女達のように神龍の牙から生み出された『龍牙人』が数多く存在するわ。そして私の『紅の戦乙女クリムゾン・ヴァルキリー』のように組織化された集団が神龍を護り、そして命じられたことを遂行しているのよ」


「……神龍って、一体何なの?」


そこまで聴いてイェンリンは四大神龍の存在意義という、この世界の謎に踏み込んだ。


「神龍とは―――この四柱神が見守る世界で同じく人々を見守り、時に人類を脅かす脅威を排除する……この世界の安寧を守護するために四柱神より遣わされた存在といったところかしら」


「……む、難しいのね……でも!凄い存在だってことは分かるわ」


「フフッ♪ 今はそれでいいでしょう……それで、此処からがイェンリンを呼んだ理由なんだけど、自分の能力値を見て欲しいの」


「私の……能力値を?」


そう言われて自らの能力値を脳裏に映し出すイェンリン―――




Name:炎零イェンリン=ロッソ

年齢 17歳

Level 10

Class 紅神龍の御子


生命 20/20

魔力 8/8

体力 30/30

攻撃 12/12

防御 10/10

知力 13

器用 20

速度 10

物理耐性 10

魔法耐性 10




―――そこに表示された情報の中で、


「私にこれまでなかった『紅神龍の御子』の称号が……」


Classの欄に意識を向けると―――


見たことのない称号が追加されていることに気がついた。


「それは私と契約したことで与えられた称号よ。そして同時に『紅神龍の加護』を受け継ぐことが出来る」




―――『紅神龍の加護』


『位置把握』

自身の位置と紅神龍のいる位置が把握出来る。


『従属』

紅神龍の眷属を従える。


『伝心』

紅神龍とその眷属と念話が可能。


『収納』

空間を開閉して物質を保管する能力。


『共有』

紅神龍と同じ寿命を得る。




―――与えられた加護の中に『共有』という紅神龍と同じ寿命を得る加護にイェンリンはハッとして顔を上げた。


「見たようね―――そう、貴女はもう只の人族の領域を超越したのよ」


宣告した紅蓮の顔をイェンリンは驚いたまま見つめることしか出来なかった―――



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