地脈の探索
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―――ダンク達、村の自警団を引き連れて、ゴンドゥルは地中深く走る『地脈』の魔力を辿るために出発した。
村を出て東へ向かう一団の中で、ダンクは先頭を進むゴンドゥルの背中を見つめていた―――
「なんだい?団長さん―――私の身体に興味津々かい♪」
「ッ!?―――い、いや!そんな心算は……」
振り返りもせずに背中越しにそう告げたゴンドゥルに驚いたダンクだが、その周囲のメテロとロドスを始め、自警団の若い団員達は一斉にジト目をダンクに向ける。
「―――な、なんだ?お前達その目は」
「いえ……別に……」
「……奥さんが怖い」
「おい!ロドス!!―――カリオラに余計なことは言うなよ!?」
慌てるダンクの様子を見て自警団員は皆声を上げて笑っていた。
その様子をゴンドゥルとブリュンヒルデも微笑みながら、探知した『地脈』を辿って進んでいった―――
―――暫くして、
「―――団長さん」
立ち止まったゴンドゥルがダンクに呼び掛ける。
「どうした?何か分かったのか?」
「ああ……いや、まだ詳しいことは分からないんだけど、細くなって途切れ掛けていた『地脈』の流れはどうやらあの方向から来て、あっちに何か起こっているみたいなんだ」
そう言ってゴンドゥルがその先の方向に向かって指差した。
その示された方向を見たダンクが答える。
「あっちは岩場が広がって、岩山が連なる土地になっている。昔はドワーフ達が鉱石の採掘が出来るか調べていたみたいだけど、結局は思ったほど鉱石は出なかったみたいだ」
「へぇ……だったら、その時の坑道は埋めてしまったのかい?」
ゴンドゥルの問いにダンクは首を横に振った。
「いや、ドワーフ達はその地を去ったけど、坑道はそのまま残されている。流石はドワーフと言っていいのか、相当深くまで掘り進めて調査していたみたいだ」
「フ~ン……坑道はそのままなのかい……」
そこで少し考え込んだゴンドゥルは、
「そいつは気になるね。ちょっとその坑道まで案内してもらってもいいかい?」
ダンクの話に出てきた坑道が気になり、そこへ向かうことに決めた―――
―――ダンク達がドワーフの廃坑道を目指している頃
「なあイェンリン。あの二人のお姉さんは自警団と出掛けたのか?」
外で遊んでいたイェンリンにそう問い掛けたのはマルクだ。
「ゴンドゥルさんとブリュンヒルデさん?―――うん、そうだよ。この村を護っている魔術が弱くなってきているから、その原因を調べるって言っていたわ。今日はもしかしたらその理由が分かるかもって言っていたわよ」
「そうか……それが分かればまた木の実、獲りに行けるかな」
「うん♪ 行けるって言っていたわよ」
「ホントか!それじゃあ獲りに行っていいって言われたら、また三人で行こうぜ♪」
「いいわよ♪ エリシラも行くでしょ?」
「うん♪……でも……本当に大丈夫かな?」
そこで一人不安げな表情を浮かべるエリシラが心配しているのは、父とゴンドゥル達に自警団の皆のことだ。
「―――大丈夫よ♪ だって父さんは強いし!メテロさんもロドスさんも強いよ!それにゴンドゥルさんは凄い魔術師だし!ブリュンヒルデさんも実は剣士で物凄く強いんだって♪」
「スゲェな……ホントかよ?あんな綺麗な人達がそんなに強いなんて……」
するとマルクの呆けた顔をイェンリンがニシシ♪ と歯を噛みしめた笑みを浮かべて流し目で見つめる。
「な、なんだよ?」
その顔に訝しんだ視線を向けるマルクに向かって、
「ニシシッ♪ マルクもお年頃だねぇ♪ やっぱり綺麗なお姉さんのことは気になるの?」
イェンリンは多感な時期の男子に言ってはいけない言葉を投げ掛けた。
「なっ!?―――何言ってるんだよ!!!/////」
そしてマルクも例に漏れず、過剰な反応を示してしまう男子と化して顔を赤くしながら否定するが、
「……ハアァ~」
そんな二人の様子をエリシラは、少し大人びた顔で呆れた視線を向けながら溜め息を吐いていた……
―――そして廃坑道の入口に到着したダンク達は、
「―――此処がその廃坑道だ」
岩場の道を進みながら、断崖のような岩肌に沿って行くと暗い洞窟のような入口の前に立ったダンクはゴンドゥルに視線を向ける。
「フム……なるほど。確かにドワーフの手が入った坑道みたいだねぇ。中は見たことあるのかい?」
「二年ほど前に自警団で一度安全確認のために中を調査したことがあった。魔物の巣になっていないか、坑道が崩れたりしていないかを確かめるために」
「その時は異常なかったのかい?」
「ああ。蝙蝠くらいしかいなかったよ」
「中は広いのかい?」
立て続けに質問するゴンドゥルにダンクも答えていく。
「思った以上に広い。長さで言えば此処から一番奥まで全長では二kmほどある」
「ドワーフの坑道だからねぇ。ちょっとやそっとじゃあ崩れないように掘っているだろうけど、問題は……この先に強烈な『地脈』の魔力が溜まり込んでいるところなんだよねぇ」
「えっ!?―――この先に魔力が?」
ゴンドゥルの発言にダンクは驚きつつ、その廃坑道の奥を睨みつけた。
「う~ん……団長さん。この先に進むのは少人数に絞った方がいい。ドワーフが掘った頑丈な坑道だとは思うけど、この人数で入って何かあったら身動きが取れなくなっちまう」
「そうだな……だったら、戦闘経験も豊富な人選を組む。俺とメテロ、ロドスにギューネとフロップス。この五人で行く」
「メテロとロドスは知っているけど、そっちの二人は?」
「この娘はギューネ。主に自警団では攻撃魔術で参戦してくれている魔術師だ」
「―――ギューネ=シュリンです。よろしくお願いします」
紫の髪を一つにゆるく編み込んで肩に掛け、魔術師の魔術杖を手にしたギューネがゴンドゥルとブリュンヒルデに頭を下げる。
「そして彼はフロップスだ。うちの自警団で『回復』の加護を持っている貴重な存在だよ」
「―――フロップス=ターンバックルです。後方支援を担当しています」
「へぇ~♪ メテロといいロドスといい、言い方は悪いけど辺境の村にこれほどの人材が揃っている自警団なんて、他の村や町を見てもそうはないよ?」
「―――確かにそうだな。メイローズの警備隊くらいの人材だぞ」
ゴンドゥルの言葉にブリュンヒルデが続くと、都会のメイローズから来た美女二人に褒められたことで自警団の空気も高揚する。
「俺もそう思うよ。この村には本当に才能や実力のあるヤツ等が増えてくれて助かっている」
訓練中にはそんな言葉など一言も聞いたことがなかった自警団員は全員が、
「―――えっ!?」
思わずダンクの言葉を疑うほどだった。
「なんだよ?―――俺だってなぁ!偶にはお前達を褒めることだってあるんだぞ!!」
鼻息荒く言い放つダンクに、全員で笑いが込み上げてきた。
「ハハハッ♪ まあ、これからはもっと褒めてやりなよ?」
「コイツ等はそうすると絶対つけ上がるからやらない……それより坑道に入る者以外は此処で周囲の警戒と休息を交代で取れるように場所も確保しておいてくれ」
「団長!あの昔のドワーフが使っていたらしい小屋を使っても?」
団員の一人が近くにある古びた小屋を指差す。
小屋と言っても壁は切り出した石で積み上げられた頑丈な造りをしていて、今でも使えそうなものだった。
「そうだな。あそこも以前確認したが何もなかったから、休憩に使って問題無いだろう」
団員に向かってダンクは許可を伝えると、
「それじゃあ、後方の配置が確保出来たところで、こっちは中に進もうか」
ゴンドゥルが廃坑道の中へ出発を進言した。
「よし―――出発だ」
ダンクが号令を掛けると自警団からは―――
―――ダンク=ロッソ
―――メテロ=メルシー
―――ロドス=クアルド
―――ギューネ=シュリン
―――フロップス=ターンバックル
そこに加えて―――
―――『紅い魔術師』ゴンドゥル
―――剣士ブリュンヒルデ
この場にいる者達の中では最高の人選で廃坑道を進んでいくのだった―――
―――入口からすぐ先に進めば暗闇が奥にずっと続く廃坑道で、
「ドワーフ達め!魔法石は回収して出ていったみたいだね」
坑道など人の手が入った洞窟などには魔法石が封じられたランプといった照明器具が備え付けられていることが多いのだが、どうやらこの坑道を掘ったドワーフ達は資源の節約のために次の坑道で使えるように回収していった様子だった。
そのことにゴンドゥルが愚痴りながら、右手を差し伸ばすと、
「―――《光灯》」
その掌に光属性魔術・下位の光の球を作り出し、空中にそれを浮かべた。
その輝きに周囲がしっかりと認識出来るまで明るくなり、かなり先まで照らし出してくれたことで目視範囲が一気に広がる。
(それにしても……なかなか良い配置だね)
ゴンドゥルが感心する配置は―――
―――前衛にロドスとブリュンヒルデ
―――中間にダンクとメテロ
―――その後ろにゴンドゥルとギューネ
―――最後尾にフロップス
それぞれの役割を考慮した配置だった―――
進んでいく坑道はドワーフが掘ったにしては高さもしっかりと確保されており、三m近く高さがある。
道幅も同じく三mほど確保されており、鉱石が採掘された際には速やかに運び出せるようにと確保された広さだとゴンドゥルは独り想像していた。
「―――この先をもう少し行くと、左右に分かれ道がある」
「分かれ道?それぞれどんな場所に通じているか知っているかい?」
説明してくれたダンクにゴンドゥルが問い掛ける。
「右は更に奥の鉱石採掘現場に通じている。左に進むと地下水が汲める井戸代わりの場所に辿り着く」
「ということは右に進むしかないね……『地脈』の跡もそっちに向かって伸びているみたいだから」
「鉱石の採掘現場はもっと広くなっている。どうやらそこに元々地下空洞があったみたいで、天井もかなり高くて広い空間に出る」
そうして暫く進んでいくと、ダンクの言った通り左右に別れた穴が見えてきた。
予定通り右の坑道へ進んでいく一行は、
「……奥から風が?」
微かに頬を撫でる空気の流れを感じていた。
「……以前に此処を訪れた時には、こんな空気の流れは感じなかったが」
以前に廃坑道へ潜ったことがあるダンクは、異様な状況に眼を細めた。
すると真っ直ぐ先にダンクの言った広い空間の採掘現場に通じる入口が見えてくる。
その手前まで来た時―――
「ッ―――気をつけて。何かいる……」
前衛を進んでいたブリュンヒルデが、その先にある広い空間に何かいることを『索敵』スキルで感知する。
「これは……先客がいるみたいだねぇ♪」
緊張するこの場面で、ゴンドゥルはニヤリと不敵な笑みを独り浮かべていた―――
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