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『黒神龍の御子外伝』紅神龍の御子になった少女の帝王学 ~剣聖イェンリン様のお気に召すまま~  作者: KAZ
第1章 運命の子

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ゴンドゥルの夜話

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―――村長の家に案内され、中で話を始めるゴンドゥル達。


「改めて儂はこのゴルゴダ村の村長をしております―――コビック=ゴルゴダと申します」


「どうも♪ 私は『紅い魔術師』ことゴンドゥル♪ 此方は私の親友のブリュンヒルデだよ」


ゴンドゥルの紹介でブリュンヒルデが会釈する―――


「俺はこの村の自警団の団長をやっているダンク=ロッソという」


応接用の客間で村長と共にテーブルの席に着いているダンクがゴンドゥル達に挨拶すると、


「イェンリンちゃんの父上だね♪」


ゴンドゥルの言葉に彼女の噂で聞いた幼い少女好きという趣向が頭を過ぎる。


「あの子は本当に良い子だね……とても明るくて、正直な子だ。それにとても不思議な子だよ」


「不思議な子?……何かありましたか?」


ゴンドゥルの言葉の意味がよく理解出来ないダンクは、その言葉の真意を問い掛けるが―――


「まあ、そのことについてはまた改めて話しましょう♪……今はこの村の周囲に仕掛けられている結界魔術の衰弱について話そうか―――」


―――ゴンドゥルが話を紛らせるようにして結界魔術についての説明を始める。


「―――結論から言うと、この村の入口近くの結界魔術を調べたところ異常はなかった」


「異常がない!?……ですが……」


「ああ~!分かっているよ。これまで村に近づくこともなかった魔物共が寄ってきたり、只ならぬ事が起こるんじゃないのかって不安を感じたりしているんだろう?」


「……その通りです。この村は有難いことに、その結界魔術のおかげで人の移住も自然と進み、今の村人の数まで成長してきました。ですがその結界魔術に不安があるとなれば、一気に過疎化してもおかしくないくらいのです」


村長の話にゴンドゥルも静かに頷いて返す。


「結界魔術自体には問題がない……だが、その効果が薄れてきている。そこから導き出される答えは?」


そして同席しているコビックとダンク、それにメテロとロドスを見渡しながら、まるで教師のような質問を投げ掛けた。


「高名な魔術師様……どうか知識のない我等に御教え頂きたい」


コビックが代表してゴンドゥルに懇願すると、


「ダンク=ロッソ……アンタなら、分かるんじゃないのかい?」


深緑の瞳を流し目にしてダンクにそう問い掛けるゴンドゥルの妖しい視線は、まるでダンクの素性を知っているかのような問い方だった。


「……結界魔術に問題がないのに効果が薄れているということは……問題は結界を維持する魔力の方に問題があるのか?」


「正解だ♪―――私はメテロに案内してもらったあの林で結界魔術の状況を検分して確信したよ。あの魔術はこのフロンテ大陸を放浪している大賢者と呼ばれる人物の魔術式と酷似している」


「大賢者?……確か大陸の各地を巡って様々な奇跡を起こし、その地の問題を解決に導いているという……」


「私も本人に会ったことはないけどね。でも他の地で大賢者が施したという設置型魔術を見たことがある。彼の設置型魔術の特性として、地中の『地脈』に魔術の杭を打ち込むようにして、そこから魔力を補充することで魔術を永久的に持続させる」


「そんな魔術式が……」


ダンクはシニストラ帝国の魔術師の大家―――ロッソ家の出自である。


それだけにこの村にいる誰より魔術について精通しており、今のゴンドゥルの説明に首を傾げているコビックやロドスとは違い、彼女の説明に理解が及んでいる。


メテロも辛うじてその説明を理解は出来るが、そのような魔術が可能なのかと疑問に苛まされていた。


「だが、それが事実なら魔力についても問題ないはずだろう?」


「そう!……本来なら永続的に維持出来るはずだった」


「はずだった?つまりその地脈の方に問題があると?」


ダンクは先を急ぐ様に原因に迫ったが、


「今分かっているのは、ここまでさ♪ 詳しくは村の周囲にある他の結界魔術の具合も見てみないと安易に結論は出せないねぇ」


ゴンドゥルは一箇所を調査しただけで結論は出せない旨を皆に告げた。


「そうですか……」


コビックは魔術師が来ればすぐに問題が解決すると思っていただけに、ガッカリと肩を落としていた。


「―――これから他の結界にも案内する必要があるとなれば夜になってしまいそうだから危険だ。本格的な調査は明日から始めよう」


村の周辺にあるすべての結界魔術を調査するには、今日はもう陽がゆっくり傾いてくる時間だ。


そうなれば調査途中で夜になり、結界が弱まっている今に夜の時間で外に出るのは危険だと判断したダンク。


皆にそう提案すると自警団団長の意見に反対する者はいなかった。


「―――だったら、今日は団長さんの家に泊めてもらいたいんだけどねぇ♪」


「えっ!?―――俺の家に?」


突然自宅訪問を申し出てきたゴンドゥルの意図が分からず、困惑した表情で固まるダンクに、


「折角イェンリンちゃんと仲良くなれたしねぇ♪ それにぃ~♪ イェンリンちゃんから妹ちゃんも可愛いって話を聞いているから会ってみたいんだよねぇ♪」


ゴンドゥルは追い打ちを掛けるように今度はエリシラのことを持ち出してきた。


「イェンリンちゃんは家族のことが大好きだって話を聞いているだけでも分かったよ♪それだけに……ね」


最後に言葉を溜めたゴンドゥルのことがダンクは妙に気になった。


「ハァ……分かりました。幸い空いている部屋もあるから、家で泊まってもらうことにしよう」


「ありがとう♪ それじゃあ移動するとしようか!」


そう言ってゴンドゥルは席から立ち上がるとブリュンヒルデと共にダンクの家へ向かうのだった―――






―――そして帰宅するダンクと、


「お邪魔するよ~♪」


彼に連れられて家に半ば押し掛けてきたゴンドゥルを見て、母カリオラと妹のエリシラと旅路の話をしていたイェンリンが笑顔で呼び掛ける。


「―――ゴンドゥルさん♪ ブリュンヒルデさんも♪ いらっしゃい!」


初めて見る魔術師ゴンドゥルとブリュンヒルデの姿に、カリオラは笑みを浮かべながら、


「貴女が魔術師様ですか♪ イェンリンをとても可愛がって頂いたそうで。御迷惑ではありませんでしたか?」


既にイェンリンからゴンドゥルが幼女に不埒な真似をする魔術師ではないことは聴いたカリオラが、母親として普通に接する。


「イェンリンちゃんはとても良い子でしたよ♪ はわぁ~♡ その子が妹のエリシラちゃんかなぁ~?」


イェンリンと並んで座っていたエリシラに視線を向けたゴンドゥルは、聞いていた通りの可愛らしい容姿に思わず上擦った声を上げる。


「は、はぃ……初めまして……/////」


内気な性格のエリシラは子供の目から見ても、キラキラと美しいゴンドゥルとブリュンヒルデの姿に思わず人見知りと恥ずかしさを拗らせてイェンリンの影に隠れてしまった。


「ん~ん!その仕草も可愛らしいねぇ~♡」


「……ゴンドゥル」


流石に引き気味になっているカリオラの表情を読み取って、ブリュンヒルデがこれ以上の暴走は抑えようと肩を掴む。


「おっとぉ♪ これは失礼。改めて『紅い魔術師』ことゴンドゥルさ♪ こっちは親友のブリュンヒルデだよ♪」


「……よろしく」


笑顔で自己紹介するゴンドゥルとボソリと一言挨拶を告げるブリュンヒルデ。


「今夜は家で泊まって頂くことになった。客間を用意してくれるか?」


「まあ!そうなの?それならベッドの準備もしておかないと」


そう言ってカリオラは慌てて客間の準備に向かっていく―――


―――それから六人で夕食の食卓を囲み、楽しい食事を済ませる。


「ゴンドゥルさん♪ 今日はエリシラも一緒に御話聞かせてくれる?」


「ああ~今夜はちょっとお父さんとお母さんに御話があるから、明日必ずしてあげるよ♪ だから今夜はエリシラちゃんとゆっくり話してあげな♪」


「そっか……それじゃあ仕方ないわね。それじゃあエリシラ!私がゴンドゥルさんから聞いた冒険話をしてあげるわ♪」


「うん♪ それじゃあ、お父さん、お母さん、ゴンドゥルさん、ブリュンヒルデさん……おやすみなさい」


「おやすみなさぁ~い♪」


「おやすみ」


手を振って寝室に向かう子供達を見送ってから、ゴンドゥルはテーブルでダンクとカリオラに向かい合う。


「妹のエリシラちゃんは良い魔力を持っているねぇ♪ 両親の血をよく受け継いでいるようだ」


「そうですね……イェンリンは思ったより魔力が少なかったのですが……」


カリオラがイェンリンの保有する魔力量が、同年代の子供達よりも少ないことを気にしているように答える。


「―――それも血かな?」


「ッ……どういう意味だ?」


まるでイェンリンの出自について見透かしたような口振りのゴンドゥルに、ダンクの警戒心が一気に高まった。


恩人であるフーリンから預かり、これまで我が子として愛情を注いできたダンクとカリオラにとって、彼女の出生の秘密に迫る行いは敵対行為に等しいのだ。


しかしそれは事情が把握出来ていないブリュンヒルデにとっても、内心で困惑する状況だった。


だがゴンドゥルは食事で出されたワインのグラスを煽りながら、


「プハァ……今から話すことはすべて私の独り言だよ?そう思って聴いておいて」


ダンクとカリオラにそう断りを入れて語り始めた―――


「海の向こうのシニストラ帝国……そこに魔術師の大家と呼ばれる家がある。その家名は―――ロッソ家という」


「……」


ゴンドゥルの口から出たロッソの名に対して、ダンクとカリオラは無表情のままそれ以上の動揺を見せることはなかった。


「そのロッソ家にある時、特別な子が生まれた……その娘は後に特別な力により『不死の魔女』と呼ばれるまでに大成した」


「……」


このような事態が訪れることは以前からカリオラと話し合い、そして動揺する様子を見せないと誓い冷静に対処すると決めていたダンクもまるで顔色を変えず黙ってゴンドゥルの話を聞いていた。


むしろゴンドゥルの話が寝耳に水のブリュンヒルデの方が内心穏やかではなかった。


(ゴンドゥルのヤツ、突然何を話し始めたのかと思ったが……イェンリンやこの家の者達がそのロッソ家とやらの血縁者だと言いたいのか?)


「そうして『不死の魔女』は並みはずれた魔力と魔術により、時の皇帝に見初められて皇帝の召喚に従って後宮に入った……そして公爵夫人の爵位を得たという」


「それがどうしたというんだ?確かに俺達はロッソと名乗ってはいるが、その家とは関係ない」


「ああ、そうだろうね♪ だからこれは酔っ払いの夜話ってヤツだよ―――私が聞いたその『不死の魔女』は美しい銀髪に紅の髪が混ざる絶世の美女だとか」


「ッ―――紅い髪……あの子の」


ブリュンヒルデがそこまで口にした時、ゴンドゥルから鋭い視線が突き刺さる。


それはまるで―――


『事情を知らないのなら―――黙っていろ』


―――そう言っているような冷たい視線にブリュンヒルデは思わず息を飲む。


「フゥ……まあ、結論から言えば別に私はロッソ家とも関わりはないし、魔術師の大家ということで家名を知っていただけさ♪ それにこれは只の夜話……今のアンタ達が幸せなら、それでいい話だよ」


ゴンドゥルの最後の言葉は真実を伝えていると直感したダンクとカリオラは、そこで漸く肩の力を抜いた……


「此処からは明日の話をしよう!ダンクに訊きたいんだけど、あの結界魔術が設置されている場所は村の周りに幾つあるんだい?」


突然話を切り替えされて面食らうダンクだったが、


「そ、そうだな……入口の林を見てきたと言ったけど、あれを合わせて七カ所ある」


正直にゴンドゥルに答えた。


「やっぱり……思った通りだね……」


「どういう意味だ?」


考え込む素振りのゴンドゥルにダンクが問い掛ける。


「村長の家では余計な不安を煽りたくなかったから黙っていたんだけどね……結界魔術には異常はないって言っただろう?」


「ああ……そう話していたな」


「二人は魔術に精通していて魔法薬も作ったりしているそうだから、魔術について詳しく話しても問題ないだろうけど此処だけの話にしておいて欲しいんだ。あの結界に魔力を補充している魔術式は地中の『地脈』に繋がっていると言ったのを憶えているかい?」


「ああ……憶えている」


「その魔術式が繋がっている『地脈』が……意図的に移動されている痕跡を見つけた」


「えっ!?―――『地脈』を!そんなこと……出来るものなのか?」


「普通は出来ない……と言いたいところだけど、『地脈』は人で言えば血管と同じさ。大地の血管で血の代わりに魔力が流れていると考えたら分かりやすいだろう?その『地脈』の魔力にもちゃんと流れが存在する」


「まさか……その流れを……」


「―――意図的に流れを塞き止めているヤツがいる。そいつがどこの誰かまでは分からないけど、この村にそうする理由があるのかもね……」


告げられた真実にダンクとカリオラは背筋に恐ろしいものが走る思いだった。


「どちらにしても明日、すべての結界魔術の状況を確認してから、打開策を考えるとしようか」


ゴンドゥルの言葉にダンクとカリオラも黙って頷くことしか出来なかった―――



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