10.練習開始!!
あの後、すぐに部屋に戻り睡眠をとった俺は、いつもの起きる時間よりも少し遅い時間に目が覚めた。
「もう朝か……、なんかいつもより早かった気がするな」
「そうですか。意外と何かすることがしっかりと決まっている日はそんなこともありますよ」
「へぇ、そうなんですねー」
眠たいながらも俺はそう相槌を打ったが、そもそも返事があったという違和感に気付いた。なんで俺が一人で寝ていたはずの部屋から他の人の声がするのか、そう思った俺は声のした方を見ると、部屋の扉の近くにアリアさんがいた。
彼女は申し訳なさそうな顔で、
「すみませんっ!起こしてしまいましたか?」と言ってきたが、別に俺は彼女が入ってきたせいで起きたのではなかった。
「アリアさんのせいじゃないですよ。自然に目が覚めたなので」
「そうですか」
返ってきたのは、たった五文字の返答。その言葉を皮切りに静寂が部屋の中を支配した。
きっ、気まずい……。別に俺が何かをした訳でもないし、アリアさんが何かした訳でもない(なぜか部屋にはいた)のに。
きっ、気まずいです……。別にカイトさんが何かした訳でもないし、私はただ起こしに来ただけだったのに。変なイメージ持たれなかったらいいけど……。
そんなことを思いつつも、部屋の中の沈黙は保たれていた。
けれども、いくら気まずいからと言って、いつまでも黙っていられないのも事実だった。そして、その状況で先に行動したのはアリアさんだった。
「わっ、私はただ昨日出来るだけ多い練習時間を取るって昨日言ったので起きてるのかなと思って見に来ただけなので。起きていらっしゃるなら、朝食をお持ちしますね」
早口でそうまくし立てて、彼女は部屋から出ていった。
朝から何だったんだ、いったい……。
しばらくした後、彼女ではない別のメイドが朝食を運んできたが、お盆にアリアさんからの書き置きが添えられていた。
「朝食を食べ終えたら、すぐに庭の方に出てきてください」
朝食はトーストに目玉焼きと紅茶だったので、すぐに食べ終わり、俺は庭に向かった。
「さっきは色々ありましたが、今からはしっかりと訓練しましょうか」
この屋敷の庭に着いた時、一声目に言われた言葉だった。
そして、練習が始まった。
「じゃあまずは風に慣れることから始めましょう!」




