5.新たなる出会い
再び、俺たちは最初と同じようだが、少し前よりは軽い衝撃を味わう。
二回目にこんな体験をしてようやく俺は理解した。
これが世界の移動を示すのならば、この衝撃は身体の変容を示すのではないか、と。
それならば、突然魔法を使えるようになったことにもある程度の説明をつけることができる。
そんなことを考えていると、視界がだんだんと広がっていき、ぼんやりとしか視認できなかった周りの景色がだんだんとはっきりとしてきた。
そこで目にしたのは・・・
壮健そうな身体つきの人物と荘厳な部屋だった。
「ようこそ、新たなる世界へ!歓迎しよう!若人たちよ!ようこそ!ラルメア王国へ!」
そういかにも嬉しく、喜んでいる顔でそこそこに筋肉がついたおっさん、いやおっさんというには若く見えるのだが、とにかくかなり変な人だということは間違いないし、そんな人が笑顔で近寄ってくるのはかなり辛いものがある。
そんな不快そうな顔が向こうにも伝わったのだろうか、男は少し距離を取って、
「ああ、すまないね。私としたことが少し興奮してしまったよ。まずは名乗らなくてはいけないね。私はロラン。ロラン・フォン・エルトリアだ。なぜ、アルン様じゃなくて私のような者がいるのか、と疑問に思う人もいるだろうけどまずは私の話を聞いてくれると嬉しい。」
しかし、まだはっきりとした思考に戻っていない人もいるようで、恵子なんかは完全に寝ているように見える。
そんな中で一番頭が目覚めていそうだったのは神崎だった。
だってこんな言葉を開口一番に言ったのだから。
「なあ、おっさん。それで俺たちが今いる場所はどこなんだ?」
「おっ、おっさんだって!?僕、そんなに年とってないよ?」
そんなことを言われるのは心外だ!とでもいいたそうな表情でこちらを向いてくる。
「さあ、どうしてくれるのかな?カイト・クルス君?君のことはアルン様から聞いているよ。」
俺はすかさずニヤついた男に対して言い返す。
「こちらにも非礼がありましたので、僕が出来ることなら一つだけお手伝いさせていただくということで手を打っていただけないでしょうか?」
思った通りの返答をしてくれたという表情でロランと名乗った男はニコニコしている。
「うん、その状況だとその答えは最適解だね。やはり、アルン様がおっしゃった天才という言葉に偽りはないようだね。ああ、さすがアルン様。」
そう言い切った男は恍惚とした表情を浮かべていた。
「試すようなことをして、申し訳ない。」
そう謝罪した男の顔がだんだんと歪んでいく。
そうして浮かび上がったのは髭の生えていない、日本で言えば高校生といっても通じそうな青年だ。
「一から説明しよう。先の疑問についてだけど、ここは僕の邸宅だよ。だから、安心して欲しいな。一応僕は神使だから今回こうして君たちと話しているし、受け入れ先にもなったと言うわけさ。」
みんなも神使という聞いたことのないワードに戸惑いをおぼえたようで、首を傾げている。
「ああ、そうだったね。君たちの世界にはそんなものはなかったんだったか。まずはそこから説明しないといけないね。」
そういうロランはどこか楽しそうであった。




