19.密談と窃盗事件
〜ある人たちの密談〜
「じゃあ、これでこの密談も終わりかしらね」
「ええ、そうですねーーっっ!!」
「どうされたんですか?」
「今、貴方鵜飼くんに何かしませんでしたか?」
「何か、とは一体なんのことでしょうか」「例えば、何か痛みを与えると言ったようなことです。今、僕にも思念が伝わってきたものでしたので」
「いえ、何も痛みを与えるといったようなことはしていませんが。私がここにいるのに、どうすれば、鵜飼くんにそんなことを出来るんでしょうか?」
「いえ、そうであれば大丈夫です。くれぐれも勝手な真似はしないようにお願いします。頼みましたよ」
「わかりました」
「それでは今日のお話はこれで終わりということで」
「ではまた。結果を楽しみにしています」
〜同日夜、遥香の部屋〜
さっき、遥香が俺の部屋に飛び込んできて、移動したところである。
「いやいや、流石にそんなことないだろ。洗濯してたとかじゃないのか?」
「どこ探してもなかったんだもん」
「じゃあ、他の女子たちを呼ぶか。俺が部屋の服を漁るのもどうかと思うしな」
「そうだねっ!」
数分後に愛蘭、彩音、恵子がやってきたので、俺は外に出て考えていた。
もし本当に、服がなくなっていたとしたらどうだろうか?
今日は遥香の部屋にグループ全員が集まっていたので、内部犯の可能性も十分にあり得るということだ。
もしかしたら、「転移」の物体に働くバージョンがあるのかもしれないしな。
なにせ、魔法に関してはわからないことが多すぎる。
『この魔法のせいだ!』と決め付けるのは早計というものだろう。
もしくは能力で、座標の考え方を用いたものとかならあり得るかもしれない。
この場合だと物体の位置座標を書き換えることで、物を一瞬で移動させることができるだろう。
この中で俺が一番可能性が高いと考えているのは、最初に挙げた、内部犯の可能性である。
仲間を疑うことはあまりしたくないが、今回ばかりはしないといけないだろう。
怪しいのは、神崎と鵜飼だ。
親睦会の時も、遥香に対することでえらく団結していたからな。
そんなことを考えていると、
「おーい、終わったよ。」
と恵子が言ったので、
「どうだった?」
とそう尋ねかえす。
「やっぱりなかったよ。」
それでも、こんな時間にみんなを呼び出すのは俺がみんなを疑っていると思われることに繋がる。
そうしたらグループの不和を生むことになる。
今、決闘を仕掛けられている状態なのに、そういうことになるのはよくないだろう。
だから、遥香には悪いが、今日だけは我慢してもらおう。
そうして、遥香にだけ聞こえる声で俺は囁く。
「遥香、こんなことを言うのは申し訳ないけど、今日は服を借りるとかしてやり過ごしてくれないか?」
「うん、わかったよ。かいくんがそんなことを言うってことは何か意味があるってことなんだよね?それならいいよ。今日はってことは明日には解決するんでしょ?」
「ああ、明日には必ず解決する。俺の予想だが、今回の件は皇グループが仕掛けてきた、離間の計だと思う」
「離間の計?」
「誰がやったかわからないことにして、不安を煽り、不和を導く、と言う作戦のことだな。俺はこのグループの誰かがやったと思ってる。でも、それはこの場で言えないから、遥香、今日は我慢してくれないか?」
「わかったよ」
遥香がそう言ったことによって、一応、犯人は保留ということになったのだった。




