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隣の席の美人主任に資産形成を教えてもらう話  作者: 唯乃


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証券口座開設 1

梶原主任からNISAの説明を聞いた日の夜、僕はパソコンに向かいながら考え込んでいた。

帰宅してから株式投資についての色んなサイトやyoutubeを見続け、梶原主任が言っていたことが正しいことを改めて認識。


「何の取り柄もない僕でも億の可能性があるなら…よし、やってみよう」

心の中で小さく呟き、決意を固めた。


けれど、次の瞬間には早速つまずく。

証券会社、銀行、ネット証券……情報が溢れすぎていて、どれを選べばいいのか、調べれば調べるほど混乱してしまうのだ。


結局、調べているうちに寝落ちしてしまった…



昼休み、スマホと睨めっこしてると、梶原主任が声をかけてきた。


「林くん、目の下、すごい隈だけど、どうしたの?」


「あの、梶原主任。僕、株を始めようと決意したんです…でも証券会社とか銀行とか……調べれば知られるほどよく分からなくて」


主任はペンを置き、少し首を傾げて僕を見つめた。

「なるほど。確かに誰もが最初に躓くところね。…この分だと、証券会社を決めた後も、口座開設手続きで固まりそうだし、一緒にやってあげた方がいいのかも…」


しばし考え込んだあと、主任はふっと微笑んで言った。


「林くん、金曜の夜は空いてる?」


「も、もちろんです!」

声が食い気味に出てしまい、慌てて咳払いでごまかす。


主任は特に気にする様子もなく、落ち着いた口調で続けた。

「じゃあ、仕事が終わったら一緒に居酒屋に行きましょう」



金曜の夜。

定時で業務を切り上げた僕は、どこか浮き立つ気持ちで待ち合わせの駅前に向かった。

すぐに現れた梶原主任と軽く会釈を交わし、二人並んで歩き出す。


「この辺りに、よく行くお店があるの。落ち着いた雰囲気だから話もしやすいはず」


そう言って案内された先は、暖簾をくぐると木の香りがふわりと漂う、落ち着いた居酒屋だった。

カウンター席に腰を下ろし、店員が差し出したおしぼりで手を拭う。


運ばれてきたジョッキを軽く掲げ、二人で「お疲れさまです」と小さく乾杯した。

泡の立ったビールを一口飲む主任の横顔は、仕事中よりもずっと柔らかい雰囲気に見える。思わず視線を逸らし、慌てて自分のビールを口に運んだ。


「じゃあ、林くんが気になっている証券会社と銀行の違いからね」

主任は箸を取りながら、落ち着いた声で切り出した。


「まず銀行。銀行でも投資信託を買えるんだけど、手数料が高めなのよ。それに、取り扱っている商品が限られていることが多いから、選択肢が少ないの。窓口で担当者に相談に乗ってもらえるというメリットはあるんだけど、私たち公務員は窓口が開いている時間に相談に行けないからね」


「なるほど……じゃあ証券会社のほうがいいんですか?」


「そうね。証券会社には、大きく分けて『対面型の証券会社』と『ネット証券』があるの。

対面型の証券会社は、店舗に行けば担当者がついてくれて、資産があれば、IPO株を割り当ててもらえることもあるわ。IPOっていうのは新規上場株式のことね。ただし手数料はかなり高め。1億円以上持っていればメリットは大きいけど、普通のサラリーマンには正直、あまり必要ないと思う」


「じゃあ、僕みたいな人は……」


「ネット証券一択ね。S○I証券とか、楽○証券、マ○ックス証券とかが代表的よ。手数料が安いし、取り扱い商品も幅広い。NISAやiDeCoの口座もスムーズに開設できるわ」


「へぇ……そんなに違うんですね」

僕はメモアプリを立ち上げて、必死に指を動かす。


主任は続けた。

「初心者が最初に使うなら、S○I証券か楽○証券のどちらかが無難ね。使いやすさで言えば楽○証券。商品の購入手続きだったり、現在の資産状況、個別株のチャートなどが分かりやすいの。一方、商品ラインナップの広さで言えば、S○I証券。特に外国株が幅広いので、外国株に興味があるならおすすめ。」


「……どちらが良いか正直分かりません。主任はどこを使ってるんですか?」


「私は楽○証券ね。使いやすさを重視したの」


「じゃあ、僕も主任と同じ楽○証券にします!」


それを聞いた主任は苦笑いする。

「…まぁ、そういう決め方もありと言えばありね。実際に口座開設を始めましょうか」



僕はスマホを手に取り、居酒屋のざわめきの中でアプリを開いた。

「えっと……ここから新規口座開設、ですね」


隣の主任が、グラスを置いて軽くうなずく。

「そうそう。まずは基本情報を入力して……はい、そこまでは大丈夫ね」


スムーズに進んでいたが、画面に「特定口座を利用しますか?」の文字が出たところで、指が止まった。

「これって……どういう意味なんですか?」


「そこはね、ちょっと大事なところ。見せて」

主任が自然に身を乗り出し、林のスマホを覗き込む。肩先が少し触れるとともに、主任のいい匂いが漂ってきて、心臓が跳ねる。


主任は画面を指差しながら落ち着いた声で続ける。

「特定口座っていうのは、証券会社が年間の取引をまとめて計算してくれる口座のことなの。税金の計算を自分でやらなくていいから、初心者は『特定口座(源泉徴収あり)』を選べば間違いないわ…って、林くん聞いてる?」


「す、すみませんっ!もう一度お願いします」

主任の横顔をボーッと見つめていた僕は、慌てて頭を切り替える。


「もう…仕方ないわね。ちゃんと聞いてね」

少しむくれながらも、主任は説明を繰り返してくれる。むくれた顔も綺麗だ…おっと、話に集中しなければ…


「なるほど……つまり、税金の面倒を自動でやってくれるってことですね」

「そういうこと」

主任が小さく微笑むと、林は慌てて視線をスマホに戻した。


再び入力を進めると、次に「信用取引口座を開設しますか?」という項目が現れる。

「うーん……これもよく分かりません」


「それもね、今は選ばなくて大丈夫。というか、株式取引経験がないと開設できないから。信用取引っていうのは、証券会社からお金を借りて株を買う仕組みなの。今回はスルーして大丈夫」


再び主任が画面を覗き込み、指先でスクロールを手助けする。その距離の近さと漂ってくる主任のいい匂いに頭がクラクラする。


「うん、これで大きなところはクリアね。あとは本人確認書類をアップロードすれば完了」

主任はそう言ってグラスを手に取り、軽くビールを口にした。


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